【英語】「as such」≒「therefore」?
「as such」という表現を私の電子辞書にあるジーニアス英和大辞典で引くと
(1)そういうものとして、それなりに
(2)それ自体で(は)【主に否定文】
(3)厳密な意味での;というような御大層な代物【主に否定文】
という意味が並びます。
例えば、
というように、「such」は前に出てきた名詞を受ける形で使われます(この場合は「practical nurse」)。
これが学校英語で学ぶ範囲ですし、実際オックスフォード英英やケンブリッジ英英、コリンズ英英などを見ても、大体同じような意味が並びます。
しかし、ネイティブはこの表現を「therefore」(従って)という意味でも使うようです。
例えば、
これを字義通りに捉えて、
「今日は長い一日だった。それ自体として、今日は早く寝ることにする」
と考えても意味が通じません。
これはどう考えても「だから」という意味と理解するしかありません。
どうしてこの混同が起こったのかは、容易に想像ができます。
少し例文が古いかもしれませんが、次の例文を見てください。
上の文では、「such」が文の前半の「president」を受けていることが分かりやすいと思います。
しかし、この「as such」は文末だけでなく、語中や語頭にも持って来ることができます。上の文では2つの文がコンマで繋がっていましたが、ピリオドで分けてみましょう。
これも、構造的には「as such」は「as president」の言い換えであることに変わりはないのですが、意味的には下と同じように捉えることも不可能であはありません。
ここから、「as such」と「therefore」は置き換えが可能だ、という推論が成り立つわけです。
ただ、これはあくまで今回たまたま置き換えが可能だったケースなだけで、いつもこれが成立するわけではありません。
が、どうもネイティブの間では、「such」の受ける名詞がない場合でも、「as such」が「従って」という意味で使われるようです。
それもどうやら最近の現象ではなく、長きにわたって使われているのに、(恐らくその意味の曖昧さから)正しい用法として認められていないもののようです。
上記で引用したサイトによると、権威あるオックスフォード英語辞典では「Accordingly, consequently, thereupon(いずれも「従って」)」の意味で「as such」が使われる場合があるとしつつも、これは「colloq. or vulgar.(口語的あるいは低俗な表現)」と記述されているようです。
ただ、ネイティブの間では「『as such』を『therefore』の意味で使うのはフォーマルな表現だ」と捉える向きもあるようです。
もしかすると、アメリカ英語によりその傾向があるかもしれません。
アメリカ英語ネイティブにとっては硬い印象を与える表現で、間違っても「vulgar」な表現ではないそうです。
一体、どちらを信じれば良いのか。
これは「言葉の乱れ」VS「自然な言葉の発展」の対立の話なのか(規範文法VS記述文法)、ネイティブの個人個人の語感の違いなのか。
ノンネイティブの私には判断ができませんし、あまりこの争いにも深入りはしたくないものです。
いくらノンネイティブが「それは誤用ですよ」と言ったところで、ネイティブの「いや、正しい用法だ」の一言の前には虚しいからです。
にしても、それだけネイティブに受け入れられるようになっているのなら、ちゃんと辞書にも定義を載せるべきではないかと思うのです。
取りあえずは、自分で使うのは避け、他人が使うときは「従って」の意味で言っている可能性も考慮に入れる、というスタンスが無難そうです。
母語話者・非母語話者ひっくるめ、世界で一番多くの人に話されている言語・英語なので、語感も千差万別のようです。
学習者泣かせですね。
その他参考にしたサイト:The Grammarphobia Blog: When “as such” isn’t such a good idea