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【英語】「as such」≒「therefore」?

「as such」という表現を私の電子辞書にあるジーニアス英和大辞典で引くと

(1)そういうものとして、それなりに
(2)それ自体で(は)【主に否定文】
(3)厳密な意味での;というような御大層な代物【主に否定文】

という意味が並びます。
例えば、

She is a practical nurse and should be treated as such.
彼女は准看護師だからそのように取り扱われるべきである。

ジーニアス英和大辞典

というように、「such」は前に出てきた名詞を受ける形で使われます(この場合は「practical nurse」)。

これが学校英語で学ぶ範囲ですし、実際オックスフォード英英やケンブリッジ英英、コリンズ英英などを見ても、大体同じような意味が並びます。

しかし、ネイティブはこの表現を「therefore」(従って)という意味でも使うようです。

例えば、

I’ve had a long day. As such, I’m getting an early night.

Can You Use “As Such” to Mean “Therefore”? (linkedin.com)

これを字義通りに捉えて、

「今日は長い一日だった。それ自体として、今日は早く寝ることにする」

と考えても意味が通じません。

これはどう考えても「だから」という意味と理解するしかありません。

どうしてこの混同が起こったのかは、容易に想像ができます。

少し例文が古いかもしれませんが、次の例文を見てください。

Donald Trump is president, and he wields a lot of power as such.
(ドナルド・トランプは大統領である。大統領として、彼は多くの権力を行使する)

Test your mastery of ‘therefore’ and ‘as such’ - Columbia Journalism Review (cjr.org)

上の文では、「such」が文の前半の「president」を受けていることが分かりやすいと思います。

しかし、この「as such」は文末だけでなく、語中や語頭にも持って来ることができます。上の文では2つの文がコンマで繋がっていましたが、ピリオドで分けてみましょう。

Donald Trump is president. As such, he wields a lot of power.
(ドナルド・トランプは大統領である。大統領として、彼は多くの権力を行使する)

同上

これも、構造的には「as such」は「as president」の言い換えであることに変わりはないのですが、意味的には下と同じように捉えることも不可能であはありません

Donald Trump is president. Therefore, he wields a lot of power. 
(ドナルド・トランプは大統領である。従って、彼は多くの権力を行使する)

同上

ここから、「as such」と「therefore」は置き換えが可能だ、という推論が成り立つわけです。

ただ、これはあくまで今回たまたま置き換えが可能だったケースなだけで、いつもこれが成立するわけではありません。

が、どうもネイティブの間では、「such」の受ける名詞がない場合でも、「as such」が「従って」という意味で使われるようです

それもどうやら最近の現象ではなく、長きにわたって使われているのに、(恐らくその意味の曖昧さから)正しい用法として認められていないもののようです。

上記で引用したサイトによると、権威あるオックスフォード英語辞典では「Accordingly, consequently, thereupon(いずれも「従って」)」の意味で「as such」が使われる場合があるとしつつも、これは「colloq. or vulgar.(口語的あるいは低俗な表現)」と記述されているようです。

ただ、ネイティブの間では「『as such』を『therefore』の意味で使うのはフォーマルな表現だ」と捉える向きもあるようです。

もしかすると、アメリカ英語によりその傾向があるかもしれません。
アメリカ英語ネイティブにとっては硬い印象を与える表現で、間違っても「vulgar」な表現ではないそうです。

一体、どちらを信じれば良いのか。

これは「言葉の乱れ」VS「自然な言葉の発展」の対立の話なのか(規範文法VS記述文法)、ネイティブの個人個人の語感の違いなのか。

ノンネイティブの私には判断ができませんし、あまりこの争いにも深入りはしたくないものです。

いくらノンネイティブが「それは誤用ですよ」と言ったところで、ネイティブの「いや、正しい用法だ」の一言の前には虚しいからです。

にしても、それだけネイティブに受け入れられるようになっているのなら、ちゃんと辞書にも定義を載せるべきではないかと思うのです。

取りあえずは、自分で使うのは避け、他人が使うときは「従って」の意味で言っている可能性も考慮に入れる、というスタンスが無難そうです。

母語話者・非母語話者ひっくるめ、世界で一番多くの人に話されている言語・英語なので、語感も千差万別のようです。

学習者泣かせですね。

その他参考にしたサイト:The Grammarphobia Blog: When “as such” isn’t such a good idea