自動詞と他動詞
こんにちは。
今回は、英語の自動詞と他動詞の不思議、について話していこうと思います。
まず、自動詞と他動詞の違いについてざっくり言うと、
自動詞は、
「自分独りで文が作れる」動詞、
他動詞は、
「他人(=目的語)の力を借りないと文が作れない」動詞
です。
なるほどなるほど、同じ「行く/訪れる」であっても、
I go. はこれだけで文が成り立ちますが、
(I go to schoolの「to school」の部分は文法上は目的語と見なされません)
I visit. だけでは何かが足りない。
I visit Tokyo. など、目的語が欲しくなります。
(visitについては自動詞としての使い方もありますが、それは後述…)
ここで言う「目的語」というのは「直接目的語」のことで、
他動詞はこれがないと不完全な文しか作れません。
逆に言えば、
受動態は他動詞しか作れません。
受動態は、目的語を主語に変える形のことですから、
目的語がない自動詞はそもそも受動態を作れないのです。
(というのが建前ですが、実際英語には例外があります……)
これを聞くと、「ふむふむなるほど」と思うのですが、
英語のややこしい点は、
同じ形をしているのに、場合によって自動詞になったり他動詞になったりすることです。
それもまあ、
I speak. (私は話す(=発話する))⇒自動詞
と
I speak Japanese.(私は日本語を話す)⇒他動詞
という区別なら、まあまだついていけるのですが、
中には、動詞自体が目的語を含んでしまっているときがあり、
これがすこぶるややこしい。
ん? 「動詞自体が目的語を含んでしまっている?」と首を傾げた貴方。
例えば次の例を見てみましょう。
I study English.
I study.
上の文は、「私は英語を勉強します」
これに対して、下の文は
「私は勉強をします」という意味になります。
この二つの文の何が違うのでしょうか?
日本語の訳文を見ると、どちらの訳にも目的語があるのです。
上の文の目的語は「英語を」
下の文の目的語は「勉強を」です。
なのに、上の英文ではstudyは他動詞、
下の英文では自動詞扱いになります。
これは何故なのでしょう?
次の例を見てみるとより違いが分かるかもしれません。
I read a book. (私は1冊の本を読みます。)
I read. (私は読書します。)
readは何となく目的語が常に必要な気がしませんか?
何を読んでいるか、気になりますよね。
でも、実はreadは自動詞としても使えるのです。
この場合は、「読書(を)する」という意味になります。
この「読書」という熟語を見ればわかる通り、
この動詞にはもともと目的語(「書」)が含まれています。
このように、自動詞の中には、自分の中に目的語を飲み込んでしまった動詞がいくつもあるのです。
でら、どうして自分の中に目的語を飲み込んでしまったような自動詞があるのでしょうか?
私の勝手な想像ですが、
人間は分かり切ったことは、いちいち口に出さず、なるべく端折りたいものです。
特に私たち日本語母語話者はそうですよね。文脈の力に任せて省エネできるところはしまくります。
この省エネ力が英語にもないわけではなく、話し手と聞き手との間で「あ、この目的語を省略しているのね」という了解が得られていれば、目的語を省略してしまうのです(もちろん、日本語ほど柔軟ではありませんが)。
readの例で言えば、
read a bookは、「どんな本を読んでいるか、何冊読んでいるか」などに興味関心が向けられていますが、
readは「読書する」ということだけが言いたいことです。
特に何かの本に言及することなく、ただ「読書する」と言いたいときもありますよね。
こんなとき、目的語を飲み込んだ自動詞が使えるんです。
この「目的語を飲み込んだ自動詞」は思いのほか多く、
Did you call? 電話かけた?
(誰に、は文脈的に分かっている)
We've almost finished. 殆ど終わったよ
(何が、は、話し手の間では言わずともわかる)
I am visiting in Kyoto now. 京都に滞在中です
(どこを訪問しているか、より「ビジットしてる」ことを言いたい)
The search results display on the screen. 検索結果が画面に表示される。
(コンピュータ用語では「display 」は他動詞(be displayed) でも自動詞でも使われます)
などなど、「あれ、貴方って他動詞でしたよね?」という例が探せば色々と見つかります。
僕はこれが英語の柔軟さであり、かつ難しいところだと思います。
単語を覚えるときに、「~を●●する」と言う風に、「てにをは」を合わせて覚えるのは一つの手ですが、
そうすると知らず知らずのうちに、英語の持つこのような柔軟性(というか、良い加減さ?)を見失ってしまうかもしれないからです。
だからこそ、単語帳のみで覚えようとするのではなく、
さまざまな文脈で見せるその単語の顔になるべく多く触れる、
インプットを可能な限り増やすことが
重要だと思います。
目的語を飲み込んでしまった自動詞。
他動詞だと思っていたら、自動詞としても使える。使い方が自在に変わる。
英語は奥が深いです。
🍀ここまでお読みくださいましてありがとうございました!🍀
【画像】Thought Catalog (Pixabay)