【歌詞和訳:解説(1)】World's Smallest Violin (AJR)
こんにちは!
今回は、AJRの英語曲「World's Smallest Violin」を、1文1文解説を加えながら訳していきたいと思います!
1フレーズ目
まず1つ目のフレーズから。
ここのフレーズは、最後の子音は異なるものの、全て語尾が「ウー」という音が残るように韻を踏んでます。(和訳もそれっぽいことしてます。)
1つずつ見ていきましょう。
直訳は「俺のおじいちゃんは第二次世界大戦で戦った」
日本語とは違い「『を』戦った」にはならないんですね。
ここから特に変える必要はないと思いますが、
和訳は「ウ」で揃えたかったので、無理やり「祖父」に。
話はズレますが、第二次大戦を戦った、は日本であればもっと悲壮感が漂いそうですが、そこは流石戦勝国アメリカ、という感じですね。
直訳は「彼はとても立派なヤツだった」
「dude」は「野郎」「漢」のような意味のぞんざいな表現。
「noble」は「気高い」とも訳せます。
「such a」で、「とても~な」という強調表現になります。
この「he」はもちろん前文の「my grandpa」で、
この後に出て来る「his」と同じ人物です。
さて、3行目からは主人公の身の上話に。
個人的にこの「finish school」は「中退」なのか「1日の授業を終える」なのか悩んだのですが、調べる限り前者しかなかったので、途中で前者に訳を変えました。
現在形なのは、「卒業できなかった」という過去の事実ではなく、
「俺は学校すら卒業できないヤツなんだ」という人柄を示しているからでしょうか。
「中退」と分かるヒントが4文目。
主語の「I」とleftの目的語「school」がが抜けていますが、
直訳は「ママが恋しくて、学校を去るのが早すぎた」となります。
米国の事情はよく分からないのですが、寄宿舎生活ということですかね。
お祖父さんは、生きて帰れるかも分からない祖国に家族を残して
戦地に赴いたにもかかわらず、
「俺」は母が恋しくて学校を飛び出し、戻らなかったわけです。
それでは次へ行きましょう。
2フレーズ目
次のフレーズも、立派なご先祖の話と冴えない自分の話が続きます。
このフレーズでは、3行目以外は語尾が「n」で終わっています。
直訳は「彼の父さんは消防士だった」
前文までに出てきた「彼」は「My grandpa」だけなので、
これは「祖父の父=俺の曽祖父」のこととなります。
2行目は関係詞「who」から始まり、
1行目の「a fireman」を説明しています。
1行目と合わせて、
「彼の父さんは、とても激しい炎と闘った消防士だった」
という意味になります。
本来の語順であれば「so violent fires」となりますが、
4行目の「violin」と調子を揃えるために倒置をしていますね。
直訳は「俺は、俺のセラピストを退屈させたと思う」
また主人公の話が始まります。
ここでは、「俺」が精神科に通うほど病んでいることが分かります、
同時に、1行目の職業「fireman」と合わせて
「therapist」という職業名で揃えているのにも目が留まります。
直訳は「セラピストのためにバイオリンを弾いてあげながら」
「while playing」と動詞がない形になっているのは、
主語が「I bored my therapist」と同じ「I」だからです。
長く書けば、
「I think I bored my therapist while I was playing him my violin」
となります。
上記のとおり、「violin」を音の近い2行目の「violent」と揃えています。
では、次です。2メロですね。
3フレーズ目
このフレーズでは、主に「エ」の音で語尾が揃っていますが、
厳密には、最初の2行が「エィ」という二重母音、
残りの3行が「アェ(ae)」という短母音になっています。
直訳は「それは正気の沙汰じゃない」
「That」はこれまでの2つのフレーズの内容を指しています。
祖父と曽祖父はこんなに立派なのに、自分と来たら…
掛け合いとして「Oh my god!」が聞こえますね。
直訳は「それはとても恥だ」
この「such a」も上記の通り、「とても~な」という強調表現です。
言いたいことは「That's so insane」と同じですね。
直訳は「彼らの隣だと、私の便もそれほど立派に感じられない」
言い方!(笑)って感じですが、言わんとすることは良く分かりますよね。
「grand」は「壮大な、雄大な、立派な」という意味で、
1フレーズ目の「noble」を思い出しますね。
「彼ら」は、ここでは祖父や曽祖父のことを指します。
何も自分には「立派だ(grand)」と誇れるものがない。
強いて言うならshitだけ……。でも、それさえも
彼らの隣に並ぶと立派には感じられない、と表現しています。
すごい強調表現ですね。
この行での学びは、「shit」は集合名詞として使えるんだ、
ということです(笑)。
直訳は「しかし、私は嫌に感じることをやめることができない」
「from」は「prevent A from」や「refrain from」のように、動詞が「やめる、控える」という意味の時にお目にかかりますよね。
「That's insane」, 「That's such a shame」と、嫌な気分になることをやめることができない、という意味です。
直訳は「私は悲しいことは2つありうると少し感じる」
一体どういうことでしょうか?
「2つある=1つだけではない」と考えて訳しました。
「1つだけある悲しみ」とは?
恐らく、、、死、、ですかね?
この文では明示されていませんが、
「Dying is only one thing to be sad over」
(悲しいのは死ぬことただひとつ)
という言葉があるそうで、
これをAJRが念頭に置いて歌詞を書いたはともかく、
「1つだけの悲しみ」は「死」である可能性はあります。
その場合は、
「死ぬこと以外にもこんな悲しいことってあんのかよ」
が、文意となります。
原文に「死」という言葉がないのに訳すのはヤボかなと思い、
含みを持たせる感じで訳すことにしました。
なお、「sad」は、英英辞典では「unhappy」と説明されています。
「不幸は1つじゃないんだな」でも良いかもしれませんね。
それでは、サビです!
4フレーズ目
サビは、強いて言えばコードが変わる「soon」以外は「イ」あるいはそれに近い音を伸ばすように歌われています
(最後の行の終わりを「violin」と捉えた場合)。
逆に言えば、「soon」の和音変更が母音の違いでも際立っていますね。
直訳は「世界一小さなバイオリン」
2フレーズ目で出てきた「バイオリン」、再登場です。
訳自体は特に説明は不要だと思います。
なお、「the world's smallest violin」については、
「自分の不遇を話をする人に対して皮肉っぽい返しをすること」
という意味があります。
弾く人は、不幸話をしている人ではないことが注意点。
これについては別の記事で長々と書いたので割愛しますが、
この歌についてはこの成句は関係ないというのが僕の持論です。
主語「the world's smallest violin」の続きの文です。
直訳は「本当に1人の聴き手を求めている」です。
「1人の聴き手」としたのは、「audience」に「an」があるためです。
「audience」は普通、集合名詞で、
「聴衆」という聴き手の集まりを表し、不定冠詞はつけませんが、
「聴衆1人1人」を表すときもあり、
その場合は複数形が「audiences」となります。
「really」という副詞とあいまって、
「an」から「1人でも良いから聴いてくれ」という
主人公の必死感が伝わってきますね。
直訳は「だから、もしすぐにだれかを見つけなければ」
この後に続く文の条件となります。
この文自体はこれ以上説明は不要かなと思います。
直訳は「俺は爆発して木っ端みじんになってしまうだろう」
「blow up」は自動詞・他動詞どちらもありますが、
ここでは「自動詞」です。爆発するのは「俺」です。
厳密には、「俺=バイオリン」ですね。
「into」は「turn into」のように、
変化が起きたあとの結果の状態(というか、形)を表すときに
よく見かけますね。
直訳は「そして(私は)私の小さなシンフォニーを吐き出すだろう」
前文の「I'll」から始まる文の続きです。
「spew」は「吐く」という意味ですが、
「spit」が唾をペッ、とするのに対して、
こちらはオエーッと戻すほうの「吐く」です。
……汚い話ですみません。
「symphony」は「交響曲」のことですから、
オーケストラ全体で演奏する壮大なイメージがあるのに、
世界最小のバイオリン1台が演奏するから
それ自体も小さいと言うことですね。
サビの最後の行です。
命令形の前にくる「just」は、命令の強調ですが、
「良いから」「つべこべ言わないで」「頼むから」のような
意味があります。
「let me play」は「私に演奏させて」。
「させる」を表す英単語は色々ありますが、
この「let」は「望みどおりにさせる」という意味があります。
***
いかがでしたでしょうか?
この「世界最小のバイオリン」が「自分の不遇の恨み節」と解釈することはできると思いますが、
僕は本当のバイオリンのことでも、比喩でも、どちらでも良いと思います。
「バイオリン」はもっと多くの意味を含んでいるかもしれません。
軍人と消防士という、男らしい、というか「漢らしい」先祖とは真逆に、
自分はすごくちっぽけなバイオリンを弾く、取るに足らない人間。
バイオリンは、単に「愚痴をこぼす人」ではなく、そういう「卑小な存在」そのものをバイオリンを表しているとも言えるかもしれません。
そして、「あなた」にだけはこんな自分の存在を認めてほしい。
この様に、「バイオリン」をどう捉えるかは、人それぞれあると思います。
そのため、僕は和訳では敢えて「バイオリン」をそのまま残しました。
受け手の方それぞれで「世界最小のバイオリン」の意味に思いを巡らせていただきたいからです。
次は、続きの歌詞を書いていこうと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
【(画像)Ylanite Koppensさま(Pixabay)】