WBC日本代表・山川穂高の一件で考えたトップアスリートの「かっこいい」とは?
う〜ん。
残念ではある。
WBC日本代表選手で、西武ライオンズの山川穂高選手の一件。無理矢理だったとか、不倫だったとか、細かいところは週刊誌や警察にお任せるとして、一番痛いのは、山川選手が本来いるべき場所に居られなくなっていることだ。
これは別に球団の決定に異議を申し立てたいわけではない。
そうなってしまったということが、残念である、という話だ。
プロのアスリートが本来、輝くべき場所にいない。これは損失以外の何ものでもない。
週刊誌報道を受け、彼が1軍の出場選手登録者を抹消された日、僕は、ベールーナドームにいた。
番記者が球団上層部や渡辺久信GMへのコメント取りに奔走している中、僕は、いつも通りの取材を続けていた。3、4月の月間MVPに輝いた中村剛也の話を聞くためだった。
彼の話はいつも面白い。
マスコミ向けのコメントをしない彼の評判は時に「塩対応」と言われるが、僕個人はそれを感じたことはない。聞き手のプロとして、腕がなる選手だ。この稀代のスラッガーの本音を炙り出したい。いつも、その一心で取材を続けている。
練習後の時間、試合後の、駐車場での時間を使って、いつも通りに取材を進めた。楽しい時間だった。プロフェッショナルだ。大きなものを得て、その日、僕は帰路についた。
しかし、帰りの電車の中で、ふとこんなことを思った。
中村は今年8月で40歳になる。
そんな彼が今もチームで4番を打っているのは、彼の努力の賜物でもあるが、一方で、その席を追いやるはずの人物がいないことへの寂しさを感じたのだ。週刊誌報道の前に「早くあの人が4番を打てばいいのに」と口にした中村の言葉に納得した。
何がそうさせてしまったのか。
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない今の現状である。
長く高校野球からプロのカテゴリー(メジャー含む)を取材していると、思わぬことが起きる。その「思わぬ」とは高校時代に取材した有望株が想像通りに成長せず、表舞台から姿を消していことだ。
怪我に見舞われたケースもある、チームと合わずに成長が止まってしまった選手もいるが、その理由の中に、野球以外に興味を持ってしまったケースも少なくないのだ。
何をしに、プロの世界に入ったのか。
今、何をすべきかを理解できずに、遊びの方に走ってしまい失敗する。実力勝負で敗れたなら、まだ仕方ないが、うまくいかなかった選手の何人かの中に、野球以外で人生を棒に振ってしまう人もいる。
また、活躍している選手の中にも、「本来はもっと高いところまで行けたのに」という選手も数多いる。
こんな悔しいことはない。
ここで改めて、思うのは、トップアスリートの価値やカッコよさとはプレーしている姿ではないんだなということである。
今年2月のWBCキャンプ。
ファンサービスで群を抜いていたのがメジャーリーガーのダルビッシュ有(パドレス)だったが、その姿勢に影響を受け、戸郷翔征(巨人)らとともに、ダルビッシュに次ぐくらいにファンサービスをしていたのが山川だった。
居残り練習をたっぷりやった後にファンサービスに応じる、山川選手の背中はかっこよかった。
何がそうさせてしまったのか。
悔やんでも悔やみきれない、今回の一件である。
飾りっ気なく、白髪もある。
けれど、「まだまだ野球が上手くなりたい」と語る。
中村は40歳を間近に控えてもやっぱり「カッコいい」。
結論はそうなるのである。
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