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僕が花巻東・佐々木麟太郎の米大学留学を歓迎する理由。
学生に義務付けられているプロ志望届の提出期限があと3日に迫っている。
ここに名前のない選手は10月26日のドラフト会議で指名することができない。つまり、来季、NPBのユニフォームを着ることはない。
今年のドラフトで、いまだ、プロ志望届の提出がない目玉選手がいる。
花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎選手だ。
高校通算130発を放った高校球界屈指のスラッガーだが、彼の進路選択については、かねてから賛否両論があった。
打席に立場とてつもない打球を飛ばす佐々木選手だが、守備・走塁面では課題が多い。その選手が果たしてプロの世界で成功するのかどうか。バットが金属バットから木製に変わることを考えても、なかなか厳しいのではないかという見方もある。
だから、まずは大学に行ってからプロを目指すのがいいのではないかという意見だ。
プロか大学なのか、賛否両論が渦巻いていた。
この夏の甲子園でも佐々木選手については話題となったが、面白かったのが、僕がこの話題に対して、ある質問を行った時の周囲の反応だ。これは友人ジャーナリストや取材に関わる人たちだ。
ーーあなたが佐々木麟太郎の父親なら、どういう選択にしますか?
僕がこういう質問をすると、ほとんどの人の答えが同じだった。
「大学」
ジャーナリストとしては高卒でプロに行くべきだと思っていても、自分の子どもだと答えが変わるという変化に、これが親の考える思考なのだろうと思った。
ところが夏の甲子園が終わると、急展開する。
なんと、佐々木がアメリカの大学へ視察に行ったという報道が流れたのだ。
僕もその報道以前から噂を聞いていた。詳しく書くことはできないが、彼が目指していることを聞いた時に、特段、不思議なこととは思わなかった。
そもそも、佐々木麟太郎の父、花巻東の監督、佐々木洋さんは「世界を目指せ」という考えの持ち主だ。
先輩の菊池雄星や大谷翔平が成功しているからではない。
先駆者であった菊池雄星には高校時代「新渡戸稲造になれ」と最初に背中を押したのは佐々木監督だった。大谷の際も、引き留めはしなかったし、世界へ出ていくことに、謂れのない理由で「行っても成功しない」という答えを持っている人物ではない。
だから、その息子である佐々木麟太が米大学留学と聞いて、不思議なこととは思わなかった。
おそらく、このニュースを聞いて、反対の多くの人が思うのは、「将来的にメジャーに挑戦する気か。成功するわけがない」という意見ではなかろうか。
僕個人的には「そうなれば理想」とは思うけれど、もし、本当に挑戦するのであれば、このチャレンジは野球選手以前に人としての成長を目指すことにあると思う。
メジャーリーグで成功している日本人選手も、誰も「成功が約束されているから」挑戦しているわけではない。成功しないかもしれない世界に行くことに、成功は約束されていなくても成長はできるという確信があるからに他ならない。
野球の本場、アメリカの大学で活躍して、ドラフト指名を受けて、メジャーリーグで活躍する。そんなこと容易いことではないことは誰でもわかるだろう。「簡単に成功できる」とわかっていて挑むのではない。
日本のプロで1位指名を受けて、「ドラ1」と注目され続けて窮屈な生活を強いられるのと、誰もが佐々木を認識していない中で「同じ人」として扱われ、その上で語学や文化の壁を越えながら生きていくということにどれだけの世界観の広がりがあるかは容易に想像できる。
野球で成功できないかもしれないのは日本もアメリカも同じだ。レベルの違いはあるけど約束はされていない。双方で失敗したとして、成長できるかどうかという視点で見ると、「消えた天才」というよくわからないレッテルを貼られてしまうことを考えれば、米大学留学も悪いことではないのではないか。
菊池雄星がよく言ったものだ。
「メジャー挑戦は成功は約束されないけど、成長は約束されるのかなと思っています」
人として大きくなりたい、野球選手としてステップアップしたい。だから、海を渡る。素敵なことではないか。
もし、佐々木麟太郎選手が挑戦を選ぶとしたら、僕は大歓迎である。
菊池や大谷らバックアップ体制もしっかりしてくれることだろう
甲子園球児の新たな道筋を見つける挑戦にして欲しいと思う。