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『蟹の神様』ショートショート小説

世の中には変な神様がいっぱいいるらしい。

ある日、海を歩いていると蟹の形をした神様が現れた。

「なんでも一つ願いを叶えてやろう」

「ほんとですか!?」

「ああ、ただその代わりに歩く時、横歩きしかできなくなるがいいか」

「なんですか!それww」

正直迷いどころだ、願いが叶えてくれるのは、ありがたいが、横歩きしかできないとなるのはなかなか不便になることは目に見えている。

まぁでも最近人生に退屈で飽きてきたところだから、ちょうどいい。

「100億円ください」

「いいんだな」

そして、私は100億を手に入れた。

世の中大抵のことはお金で解決してくれる。

これでなんでもできるぞ。

前からお金があったら世界中を旅したいと思っていた。

飛行機場に来たら、横歩きで周りから変な人だと笑われたが、そんな気にしない。

以前の退屈で仕方がない毎日に比べればどうってことない。

私は、世界中を旅して、豪遊しまくった。

ただ、どこへ行っても、変なやつだと笑われる。

1人で楽しめばいい。1人が楽しいのだと言い聞かせ。

心を許す人に出会うことはなかった。

ある日、どんな人が住んでいるかわからないとされている雪国に興味本位で行ってみた。

遭難してしまったのである。

ここはどこだ、、、

「どうしたのですか?」

1000万した高性能翻訳機で、翻訳された。

そこにいるのは、絶世の美女。

思わず、一目惚れした。

「迷子になって」

「お金払うので、一晩泊めてくれないですか」

1000万円相当のお金を渡した。

「こんなに貰えませんよ」

「いいですよ。お金はたくさんあるので」

そして、一緒に歩くのは、恥ずかしかった。

「変に思わないの?」

「歩き方は、人それぞれですから」

なんて寛容な人なのだろう。

そして、美女の家についた。

ご飯を一緒に食べた後、疲れていたのかすぐ寝てしまった。

起きたら、財布とお金、荷物がなくなっていた、、 

女の人もいなかった。

手元にあったのは、ポケットに入れていた翻訳機だけ。

豪雪の中、お金もなく、横歩きしかできない、、

なんて惨めな姿だ。 

もう何も信じられない。

もう死のうかな、そんな考えもよぎりながらも豪雪の中、歩き続けた。
もちろん横歩きで。

なんだか賑やかな音が聞こえる。

そっちの方へ行ってみた。
人だかりが見える。

どうせ、笑われるに決まっているしな。 

お金も自信もない。

まあ、このまま死ぬくらいだったら、最後に暴れてやろう。

お祭りに乗り込んでみた。

そこで、見たのは驚きの光景だった。

たくさんの人が横歩きで、競争している。

「これって、飛び入りで参加できますか?」

「誰でもできますよ。ぜひ参加してください」

結果は、ぶちぎりの一位。

賞金も出たが、それよりたくさんの人が褒めてくれたのがとても嬉しかった。

「なんで、こんなに早いんだ」

「横歩きの歴史を塗り替える謎の男が現れたぞ」

たちまち英雄になり、人気者になった。

そして、横歩きの神様として、銅像が建てられたのであった。

私は、言った。

「なんでも一つ願いを叶えてやろう、ただし、その代わり女の人を嫌いになってしまうけどいいか」




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