『ロボットの散歩』ショートショート小説
最近、何も感情が動かない。。
嬉しくも悲しくもない毎日、
家と会社の行き帰りするだけ、、
帰っても何もやる気が起こらない。。
仕事は、充実している、人間関係にも困っていない。。
なのに、この虚しさは、なんだろう。。
映画や漫画を見て、まあ面白いとは思うが、大きく心が動かされることはない。
絵を見て心動かされるというのも聞いたことがあったので、有名な画家の絵を見に行ったりもした。
心から笑ったり、心から泣いたり、そうゆう人達見ると
自分とは違うなと、切り離してしまう。。
そんな自分が嫌だ。。
心から笑ったり、心から泣いたりしたい。
退屈な人生に彩りが欲しい。
そんな気持ちでちょっといつもと違う道で帰っていた。
あれっ、ここどこだ?
Googleマップを開けば、すぐに帰れるのだが、それではつまらない。
自分の直感を頼りに歩き進めていた。
トンネルの中におかしな物を見つけた。
拾ってください と書かれた犬が段ボールに入っている。
今時、こういうのあるんだ。
久しぶりに面白いことが起こったなと 嬉しい気持ちになった。
だがしかし、犬はあんまし好きじゃない。
犬とか猫で、かわいいと思ったことがないんだよな〜
まあ、飼ったことが無いからかもしれない。飼ってみたら、可愛くてしょうがなくなるかもしれん、、
とりあえず、ゆっくりと撫でてみた。
あれっ、変だな。冷たい体温を感じない。。
もしかして、、と思ったその時、
光るものが喉元にあるのを見つけた。
スイッチみたいだ。とりあえず押してみた。
「キュイーン」
という機械音と共に動いた。
なんだ?! 犬のロボットなのか?!!
にしては、よく出来ている。
おもしろい!
家に連れて帰ろう!!
そもそも、歩くのか?
一旦、箱から出した。その場から動く気配はない。
その箱の中に、首輪とリールがついていたので、散歩するように軽く引っ張ってあげると歩き始めた。
実家は、母が動物嫌いで、1人暮らししてからも、僕自身あまり興味がなかったので、ペットを飼ったことがなかった。
初めての犬の散歩はロボットってことになる。。
幸いなことに、自分のマンションは、ペットOKだったので、連れて帰っても特に問題になることは無さそうだ。そもそもロボットの犬はペットに含まれるのか。。
名前つけようかな、そもそもオスなのかメスなのかもよーわからん、、
あそこが無いことだし、メスということにしよう、、
「イヌコ」という名前にした。
それから、イヌコとの生活が始まったのであった。
イヌコが家に来てくれたことで、生活に少しの彩りが見えてきた。
そんなある日、イヌコがしっぽを振るようになった。
さらには、家のドアを開けると嬉しそうに迎えに来てくれるようにもなった。
あるとき、前から歩いている人の連れている犬に吠えられまくった時には、吠え返して守ろうとしてくれた。
嬉しかった。
イヌコは、散歩したいときにスリスリしてくる。もう可愛くてしょうがない、癒される。
イヌコは、どんどん生き物らしく、感情が現れてきているようだ。
そして、気づいたのだった。最近、自分が心から笑うようになっていることに、自分自身の感情も動くようになっていることに、、
会社でも、最近明るくなったねと同僚から言われた。
ある日曜日、イヌコと散歩に出かけた。
ちょっと遠くまで歩いてみようか。いつも同じ散歩コースだとイヌコも飽きるだろう、、
そんな気持ちで行った帰り道、道がわからなくなった。Googleマップを見ながら、歩いていた。
その時!!突然イヌコが立ち止まり点滅し始めた。
「そ、ろ、そ、ろ、だ、、」
イヌコがしゃべった。!!
「ありがとう!!楽しかったよ!本当に寂しいけどイヌコもう帰らないといけないの。」
カタコトだったのが、饒舌に喋り始めてた。!!突然のことで状況がすぐに飲み込めない。
少し考えてから聞いてみた。
「しゃべれるの!!??」
「ちょっと待って!! 帰らないといけないってなに!!??」
「未来から来たんだ。110歳の君が感情を取り戻せないかと作ったロボットなの」
「イヌコだって本当は、帰りたくないの!!」
「でも帰らないと過去を変えすぎは良くないということで爆発しちゃうの」
「ごめんね、あと15秒しかいられないの!本当にありがとう!!」
「イヌコ!ありがとう!!ありがとう。。。」
そして、イヌコは光と共に消えてしまった。。
「……っ……! せっかく……っここまで仲良くなれたのに……っ!」
涙が止まらない。。人目をはばからず号泣し続けた、、。
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