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推しのインパクトが小さい!? -インパクト投資奮闘記5-6週目


今度新しく出るファンドの手伝いができることになった。
まだ新米なので、既存メンバーと一緒に担当させてもらう。
投資先となる候補の会社について調べて、いいと思ったらデューデリして投資会議にかけるという仕事。

今回はそこで出会った推し社会的企業と、投資会議で感じた事について。

この会社、推したい!!!

一番最初のスクリーニングステップを通過した中で1社目の担当先、私はすごく応援したくて、ここに投資したい!と思った。
詳しく書けないけど、自閉症の比較的若い大人を雇用する、とってもオシャレな食品の会社。

創業者の女性はいわゆる元キャリアウーマンで、息子が自閉症を持つ。
息子を産んだ彼女の出身国は障がい者への支援が遅れていて、彼女は仕事を辞めてフルタイムで彼の面倒を見ていた。家族で障がい支援の進む国への移住を検討し始め、イギリスに移住してきたというもの。(この移住の苦労ストーリーが、また泣ける。)
イギリスに来てから息子のケアをシェアできる(預ける)場所ができ、仕事を始める→色々な偶然と彼女のひき寄せた運で、今のビジネスをゼロから息子と始める。

自閉症の大人はイギリスに70万人ほどいて、そのうち85%が仕事についておらず、全体の6割以上の人が働きたいのに働く場所がないというデータがある。
今では息子の支援学級の知り合いなど、噂が噂を呼び、従業員の8割が自閉症を抱える大人だ。

詳しく書けないのが残念だけど、プロダクト自体もとっても素敵で、創業までのストーリーも惹かれるし、イギリスのliving wage(最低賃金より多い。普通に暮らせるための給料水準)をしっかり払って障害者を雇用していて、自閉症を持つそれぞれの従業員の得意不得意を見極めながら寄り添って仕事を割り振っているこの会社に、私は心打たれてしまった。

個別対応が必要な性格を持ちがちな自閉症の大人に、就労機会を与える素晴らしい事業だと思った。
私がここまで強く想うのは、彼女のlived experience から来る、自閉症の大人に真に寄り添った姿勢に心打たれたからかなと想う。
会社が課題ドリブンで作られている感じがする。ちなみに自閉症の中で中度の障害を抱える人を対象にしていて、普通の会社で頑張れば働けるような軽度の人は対象にしていない感じも、社会問題へのコミットを感じる。

2社目の担当先は、サステイナビリティを重視した消費財を製造している。そこの製品は、元犯罪者やドラッグ中毒の人が、家の中でできる簡単な仕事(特別なスキル不要)から作られていて、彼らの社会復帰を助けている。
環境に優しいプロダクトはこれから伸びる分野だし、家の中という安心できる場所から働ける、過去の職歴や犯罪歴に関わらず働けるなんて素晴らしい。創設者はサステナ•社会問題への意識が高いおしゃれな女性。

投資会議でのフィードバック

社内で私の推しの1社目をプレデューデリジェンス(本格的な審査の手前、方向性の確認)にかけたところ、いろんな意見が聞こえてきた。
そのうちの一つは以下だ。

「障がい者などMarginalised peopleを直接雇用してるのは素晴らしいけど、インパクトの大きさに課題があるし、インパクトのスケーラビリティが低い。」と。

!?

私の心はざわついていた。

オイオイ待ってくれよ、自閉症の人が働けるスケーラビリティのある組織?そんなのある?
インパクトが小さい?結構自閉症の程度の重い人を雇ったりトレーニングしてるのに!?


2社目は別の課題はあるものの、インパクトのスケーラビリティは認められた。


なぜインパクトが小さい?

なぜインパクトが比較的小さいというフィードバックをもらったか。

今回のファンドのインパクト評価メソッドでは、

「Marginalized people/仕事に就きづらい人を雇用しているか」という項目があって、雇用人数に応じてポイントが加算されるインパクト評価の仕組み。。2人以下だったら1点、100人だったら(沢山雇用していて社会課題に貢献しているだろうから)8点、みたいな感じ。

今回の推し企業は、雇用人数でいうと20人弱。雇用項目でのポイントが低かった。
その結果(本来雇用していることがこの会社の最大のインパクトなのにそこが目立って伸びなかった)、インパクトが小さいというフィードバックをもらうことになった。

(私が知っている限りでは、)自閉症の人って、こだわりが強かったり、得意と苦手な個性が大きい特性があったと思う。マニュアル通りに働くことが難しい人が多いから、いくら健康でずば抜けて得意なことがあっても、そこに寄り添って能力活用をしようとする余力のある会社が少なく、就労機会を得づらい。
一方、2社目が雇っているのは、元犯罪者の人。

元犯罪者と中度以上の自閉症を抱えた大人。どっちが仕事に就きづらい? (データで見ると自閉症の方が就労率が低いことをのちに知った。)

ただ、今回のインパクト評価の定量評価面では、どちらの課題の方が難しいかは加味されていなかったのだ。

ここまで書くと、私がいかにバイアスがあるか自分でも気づいてきた。笑 私は昔自閉症の人が働く施設でボランティアしていたことがあり、彼らを雇用するのがいかに難しいか痛感したことがある。
元犯罪者の中には複雑な背景を抱えてる人が多く、彼らを雇用するのも素晴らしいことだ。

ただ、自分の推し組織が、インパクトの大きさが他と比較した小さいと評価されたことがショックだったし、
うわああああインパクト評価実践だああああ。

となった次第。

インパクトの大きさ=インパクト投資家の成績?

インパクト投資を行うファンドとして、インパクトの大きさは大事だ。
私たちの仕事の評価は、金銭的リターンに加えて、インパクトの評価も含まれている。だからインパクトが小さいところと大きいところがあったら、多いところを投資先に選ぶ。

具体的には、推定インパクトとしてどのくらいの金銭価値があったか年間の報告書に載せることが一般的だ。
1億円投資して、資金的なリターンに加えて、推定インパクトが2億円ですなのか、5億円ですなのかは全然違う。
お金を出してくれている元の投資家は、そりゃインパクトを最大化してくれることを期待して我々に資金を委ねているはずだ。

私たちはインパクトをトラックし改善を促すため、インパクト評価のメソッドがある。
長くなりすぎたので評価についてはまた別の記事を書くとして・・・
今の勤務先では、ファンドごとにインパクト評価ルールみたいなものがあって、それに基づいてスコアリングする。
もちろん、は点数付けだけではなくて、定性的な補足もしっかり書く。


銀行で働いていた時、定量的に評価できるかどうか(スコアリングにちゃんと高得点が出るか)は結構重要だった。

だから私は、今回のインパクト評価の定量面でハイスコアが出なかったこと(インパクトが小さいかもと言われたこと)にそれなりにupsetしていて、定性的な補足しか出来ない→この会社のインパクトが伝わりづらい!と思ってしまったのだ。

まとめ


まだ、どちらの案件も答えは出ていない。もちろん推し企業にだってまだ可能性は十分あると思っている。
ただ、インパクトの評価軸が投資判断に大きく影響すること、そして評価軸を作るって難しいな!(まさか推しがこんな低評価を受けるとは!)という感想でした。

色々あったけど、今回はこの辺りで。


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