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ニコラス 第7章:鍛錬と夜語り


導入

トリアを救出し、エニグマの脅威から解放されたチームTRANSCENDA。だがロイは、衝撃の事実を仲間たちに告げる。真の戦いの幕は、いま開けようとしていた。

一方ニコラスは変わらず夜の鍛錬を続ける。月明かりの下、黙々と己を追い込む彼の元に、差し入れを持って現れるトリア。二人の静かな時間の中で、ニコラスはロイとの出会いを語り始めた。

相棒への強い信頼と、最終決戦への決意が、夜空に静かに響く。

1. 作戦会議

 チームTRANSCENDAの作戦室には、メンバー全員が集まっていた。
 中央の大型高性能モニターに、資料の内容が映し出されている。

 「全員、これから作戦会議を始める」

 ロイの力強い声が、静寂を切り裂く。

 「俺たちは今日、エニグマの脅威を排除した。だが本当の戦いはこれからだ。ユージーン、状況を整理してくれ」

 「ああ」

 ユージーンはタブレットを操作し、中央の大型モニターに映像を映し出した。

 地下深くに作られた研究施設。
 そこで行われている不気味な実験の映像。
 薄暗い照明の下、巨大な培養槽が並び、その中で黒い影のような何かが蠢いている。

 「そして現在進行中のDestrion計画。30年前の大災害で、この世界を破滅の淵まで追いやったABYSSを、人工的に復活させるシャドウベインの計画だ」

 ユージーンは一度言葉を止めた。

 「この計画が実現すれば、シャドウベインは世界を征服することも可能な軍事力を手に入れる。これはもはやただの犯罪などではない。世界を敵に回す行為だ」

 「そうだ。それを阻止するために、俺たちは今動いている」
 ロイが後を引き取った。

 「ありがとう、ユージーン。俺からも皆に話しておくことがある」

 ロイが一歩前に進み出る。

 「今日のエニグマとの戦闘で、俺は闇の魔女ノクテリア・エステルと遭遇した。そして彼女から告げられた重要な事実が二つある」

 ロイは続ける。

 「彼女から、俺が王家の血を引いていることを告げられた。早くに死んだ俺のお袋アレッサンドラは、滅亡したとされていた王家の最後の姫だった」

 その場にいた全員が息をのむ。
 だが、続いてロイの口から出た一言が、さらに驚きを巻き起こした。

 「そしてもう一つ。俺たちが戦いを挑もうとしているシャドウベインの総帥ジャンカルロ。奴が俺の実の父親だ」

 ロイの視線が一層鋭くなる。

 作戦室に衝撃が走る。
 これまで追い続けてきた敵の首領が、自分たちのリーダーの父親だという事実に、誰もが言葉を失った。
 壁際に佇むニコラスの表情が、わずかに強張る。

 「だが、これは俺たちの戦いを変えるものではない」

 ロイの声に迷いはない。

 「むしろ、より一層の覚悟を持って、シャドウベインを、そしてDestrion計画を止める必要がある」

 「ロイ…」
 トリアが小さく呟く。

 「了解した」
 ニコラスが短く応じる。
 ロイはニヤリと笑った。

 「頼りにしているぞ、相棒」
 「当然だ」

 ニコラスは躊躇することなく答えた。

 「お前の盾として命を賭す覚悟は、とうの昔にできているからな」

 「私からも報告することがある」
 ユージーンが告げる。

 「一週間後に港湾地区で大規模な闇取引がある。そこにジャンカルロが現れる確率が高い」

 「それは確かか、ユージーン」

 ロイが鋭い眼差しを送る。
 ユージーンは頷いた。

 「これは裏社会ネットワークを通じて得た精度の高い情報だ。信頼できると考えていいだろう」

 「わかった。ジャンカルロには、俺が直接話をつける」

 ロイが続ける。

 「ジャンカルロと接触し、Destrion計画の中止を説得する。皆にはその間、取引を妨害し敵を引き付けてもらいたい」

 「前線は私に任せてもらおう」

 シルヴェスターが前に出た。
 モニターに映し出された港湾地区の地図上のポイントを指差しながら説明を始める。

 「最前線にニコラスを置く。キャシディは側面からの強襲を担当。クインシーは影からの狙撃。トリアは負傷者に即座に回復の支援を。前線の統制は私が取る」

 そしてトリアに向き直った。

 「トリア、お前を前線に出すのは私の本意ではない。だが今回の戦いには世界の命運がかかっているため、やむなくお前のセレスティアの力に頼るのだ」

 シルヴェスターはくどいほど念を押す。

 「いいか、危険を感じたらすぐ戦場から離れるのだぞ。間違っても無理はするな」

 「はい」
 トリアは強く頷く。

 「私はすぐに回復できるように見ています。皆さんは思い切って戦ってください」

 シルヴェスターは頷き、メンバーを見渡した。

 「時間は20分、トリアの回復があればそれだけは確実に稼げる。ニコラスとキャシディの強襲、クインシーの狙撃で敵の態勢を崩しながら、持久戦に持ち込む。ただし…」

 シルヴェスターが付け加える。

 「トリアへの攻撃は絶対に防げ。彼女が倒されれば、この持久戦は成り立たない」

 「任せて」
 キャシディが答える。

 「トリアちゃんへの攻撃は私が絶対にさせないわ」

 「了解だ」
 クインシーも頷く。

 「後方支援は私とマキシマス、ハロルドの三人だ」
 ユージーンが立ち上がる。

 「マキシマスは広域魔術支援、ハロルドは後方からの射撃援護、そして私が後方全体を統括する」

 「妥当な布陣だ」
 ロイが頷く。

 「後方からの武装支援は任せてください、特製の改造狙撃銃を開発します」
 ハロルドが答える。

 「了解だ」
 マキシマスも頷く。
 「広域魔術結界による防御支援は私が担当する」

 「では、これで作戦は決定だ」

 ロイが締めくくる。

 「残り一週間、各自準備を万全にしてくれ」

 メンバーが次々と部屋を出ていく。
 最後に残ったニコラスがロイの肩に手を置いた。

 「後悔はないな?」
 「ああ」

 ロイは振り返り、相棒の目をまっすぐ見た。

 「これが俺たちの取るべき道だ」

 「…分かった」
 ニコラスも頷く。

 親子の因縁を超えて、世界の命運を賭けた戦いの火蓋が、今切って落とされようとしていた。
 一週間後の港湾地区。
 その夜の結末が、世界の未来を決めることになる。

2. 夜の鍛錬

 月が雲間から顔を覗かせ、静まり返った鍛錬場に銀色の光を投げかけていた。
 フロアに設置された古い白熱灯は半分ほどしか点いておらず、その薄暗い光と月明かりが不思議な陰影を作り出している。

 深夜を告げる時計の音が遠くで12回鳴り響いたが、ニコラスの一日はまだ終わらない。
 汗で濡れた黒いタンクトップが月明かりに照らされ、その肩から背中にかけての筋肉の動きが影となって壁に映る。

 鍛錬場の端に積まれた古びたサンドバッグや、壁際に並ぶダンベル。
 それらは長年の使用で色褪せ、傷んでいたが、だからこそ独特の風格を漂わせていた。

 シャドウボクシングの動きは正確で無駄がない。
 一つ一つの動作に意味があり、それは長年の経験が生み出した完璧な型だった。
 ニコラスの呼吸は乱れることなく、拳は空気を切り裂くように素早く繰り出される。

 「まだだ」
 彼は己に言い聞かせるように呟く。
 「もっと速く、もっと正確に」

 ロイの相棒として、彼を守り抜くためには、この程度の鍛錬では足りないと感じる。
 拳に込められた決意は、月明かりの中で影となって踊る。
 鏡に映る自分の姿を見つめながら、動きの一つ一つを確認していく。

 「ニコラスさん」

 そんな彼の耳に、扉のわずかな軋みと共に、優しい声が届いた。
 振り返ると、そこにはトリアが立っていた。
 手には見慣れたピクニックバスケットを抱え、心配そうな表情を浮かべている。
 薄いピンクのカーディガンが夜風に揺られ、髪の先が月の光を受けて輝いていた。
 バスケットからは心地よい温かさと、焼きたてのパンの香りが漂ってくる。

 「やっぱりまだ練習してましたか」

 トリアの声には優しい叱責が混ざっていた。

 「今日は特に遅いですね」

 ニコラスは黙ってシャドウボクシングを続けようとしたが、トリアは諦めない。
 彼女は一歩前に進み出た。

 「少し休憩を取りませんか?ホットサンドを作ってきたんです」

 トリアは嬉しそうにバスケットを開けた。

 「まだ温かいですよ。ハムと卵に、チーズも挟んであります。それと…」

 彼女はバスケットの中から保温ポットを取り出した。

 「具沢山のスープも作りました。夜は冷えるから、温かいものが体に良いんです」

 ニコラスは一瞬躊躇したが、トリアの気遣いを無下にはできない。
 確かに体は少し冷え始めていた。

 「…ありがとう」

 彼は短く答え、拳を解いた。
 汗を拭うタオルをトリアが差し出すと、感謝の微笑みと共に受け取る。

 「ハロルドも心配してましたよ」

 トリアは続けた。
 「『あんまり無理するなって伝えてくれ』って。それに『明日の朝は訓練機器の調整をするから、体調を整えておいてほしい』とも」

 トリアの言葉に、ニコラスは小さく頷いた。
 ハロルドの気遣いも、素直に受け入れることにした。

 練習場の隅には古い木製のベンチがあった。
 長年の使用で木目が深く刻まれ、端の方は少し欠けている。
 だが、その古さが妙な温かみを感じさせた。
 二人はそこに腰を下ろし、月明かりの中で静かに食事を始める。

 トリアはホットサンドを包んでいた布を丁寧に広げた。
 パンは外はカリッと香ばしく、中はまだふんわりと温かい。
 溶けたチーズが端からわずかにはみ出し、食欲をそそる良い香りが漂う。

 「実は新しいレシピを試してみたんです」

 トリアは自分の分を手に取りながら言った。

 「パンを焼く前に、特製のハーブバターを塗って。体のことも考えて、野菜もたっぷり入れました」

 実際、一口かじると予想以上の味わいだった。
 外側のカリカリとした食感と、中のジューシーな具材のバランスが絶妙。
 ニコラスは黙々と口に運びながら、その味わいを噛みしめていく。

 「毎日すみません」

 トリアが申し訳なさそうに言った。

 「でも、ニコラスさんが頑張っているの、見てて分かるんです。だから…」

 彼女は言葉を探すように一瞬黙り、それから微笑んだ。

 「私にできることって、これくらいしかなくて。でも、少しでもお役に立てたら」

 「気にするな」
 ニコラスは彼女の言葉を遮るように答えた。

 「むしろ、俺の方こそ迷惑かけてる」

 彼はホットサンドに手を伸ばしながら、珍しく口角を緩めた。

 「それに、美味いな。これ」

 スープの湯気が、月明かりに照らされて幻想的な模様を描く。
 トリアは保温ポットからカップにスープを注ぎ、そっとニコラスに手渡した。
 温かな液体が喉を通り、疲れた体を内側から温めていく。

 沈黙が流れる。
 遠くで虫の音が聞こえ、冷たい夜風が二人の間を通り抜けていく。
 練習場の隅に置かれた古びた時計が、静かに時を刻んでいく。
 窓の外では街灯が点滅し、どこか遠くで犬の鳴き声が響いた。

 「ロイのことなんだが」

 突然、ニコラスが静寂を破った。
 彼の声は普段より少し柔らかい。

 「あいつ、昔から重たいもの背負いすぎなんだ。それを…」
 「支えたいんですよね」

 トリアが柔らかく言葉を継いだ。

 「分かります。私も、みんなの力になりたいって思うから」

 彼女は月明かりに照らされた練習場を見渡しながら続けた。

 「だからニコラスさんの気持ち、よく分かるんです」

 練習場の天井から、古い換気扇がかすかな音を立てて回っている。
 その音が、二人の間に流れる静けさをより際立たせていた。

 ニコラスは黙ってトリアを見つめた。
 月明かりに照らされた横顔には、不思議な凛々しさが宿っていた。

 「俺にできること」

 ニコラスはゆっくりと言葉を紡ぐ。

 「それは、ただあいつの拳になり盾になることだけだ。昔から変わらない」

 彼は自分の拳を見つめながら続けた。

 「だからこそ、もっと強くならなきゃならない」

 トリアは安心したように微笑んだ。

 「ニコラスさんの存在自体が、大きな支えになってるんです。私たちにとってもそうだから」

 彼女はそっとニコラスの腕に触れた。

 「でも、無理は禁物ですよ?」

 月の光が二人を静かに照らし、練習場に落ちる影が少しずつ長くなっていく。
 ニコラスは最後のホットサンドを手に取り、トリアは彼の横顔を見つめながら、この瞬間の温かさを噛みしめていた。

3. 思い出語り

しばらく無言のまま夜の静けさが続いたが、ふとニコラスが口を開いた。

「ロイとの最初の出会いの話、したことあったか?」

トリアは驚いたように首を振る。

「いえ、まだ聞いたことないです」

ニコラスは少しだけ遠くを見つめるような表情をした。 彼は普段、過去のことを語ることはない。 それでも、トリアの前では少しだけ心を開いているようだった。

外の闇は、彼の記憶の奥底に潜む暗い過去を映し出すかのようだった。
トリアは彼の隣に座り、静かに耳を傾けた。

ニコラスの幼少期の記憶は、痛みと生存の闘いで彩られていた。
大災害後の世界は、孤児たちにとって容赦なく、冷酷な場所だった。

「俺の両親が何者だったかは分からない」
ニコラスは追憶に沈みながら語り始めた。

「記憶にあるのは、壊れかけたアパートの一室と、常に空腹だった日々だけだ」

トリアは彼の横顔を見つめ、言葉を挟まなかった。

「物心ついた時から俺は一人だった。食べ物を見つけるため、ゴミ捨て場をあさり、路地裏を渡り歩いた。とにかく生きることに必死だった」

彼の声は、過去の苦痛を静かに紡ぎ出していく。

「最初の喧嘩は、パンを巡るものだった。ゴミ捨て場で見つけたパンを、年上の奴らに奪われそうになった。怖かった。でも、生きたかった」

ニコラスの目は遠く、あの日の記憶に旅していた。

「その時、俺は初めて自分の力に気づいた。恐怖が、力に変わった。体が大きく成長し始め、暴力は俺が生き残るための唯一の手段になった」

彼の拳が固まる。
幼い日々の傷跡が、その手の中に蘇っているかのようだった。

「喧嘩を重ねるうちに、弱い奴はここでは生きていけないことを、俺は学んだ」

トリアは、彼の言葉の奥に潜むリアルな生存への意志に息を呑んだ。

「12歳の頃、すでに俺は裏社会で有名ないっぱしのストリートファイターになっていた。金のためにどんなファイトでも受けて立ち、誰だろうと倒せると思っていた」

ニコラスは皮肉な笑みを浮かべる。

「まさに、自分の力を絶対と信じていた。若さと力だけを武器に、俺は裏社会を征服できるとすら思い上がっていたんだ」

トリアは彼の横顔を見つめた。
かつての傲慢さと、今の冷静な自省が、彼の表情に絶妙に重なり合っていた。

「それは、古い倉庫街。夏の終わりの、灼熱の日差しが容赦なく照りつける場所だった。地元のギャングたちが仕切る縄張りで、俺はファイトの挑戦を受けていた」

ニコラスは目を閉じ、あの日の光景を鮮明に思い出す。

「周りには数十人の男たち。相手は地元の有名なギャングのナンバー2。残酷で容赦がないことで有名な野郎だった。大人たちは『お前に勝ち目なんかない、もう終わりだな』と嘲笑った。だが俺は何も怖くなかった、若さゆえだな」

彼の声は、記憶の中の興奮を彷彿とさせていた。

「戦いは地獄だった。拳と蹴りが飛び交い、血と汗が地面に飛び散る。相手は俺より経験豊富で技術も上だったが、全然負ける気はしなかった。俺はついに相手を追い込み、馬乗りで殴り続けた」

そのあまりの激しさに、トリアは息を呑んだ。

「その時倉庫の奥から、一人の男が現れた。そいつがロイだ。奴は俺たちの戦いを、まるで物陰から猛獣を観察するかのように見つめていた」

ニコラスの目が、遠い記憶の中で燃えている。

「俺はふとロイの存在に気づいた。奴はこちらに歩いてきていた」

彼は深いため息をつく。

「ロイは俺に近づき、たった一言だけ言った。『もう止めろ』と。圧倒的な威圧感だった。俺はその言葉の重みに息を呑んだ」

トリアは言葉を失いながら、それでもニコラスの話を聞き続けていた。

「だが俺は若気の至りで反抗した。『関係ねぇ!どけ!』と叫び、ロイに殴りかかった。そのとき、ロイは動いた」

ニコラスの声は、その記憶の衝撃を今も鮮明に保っていた。

「まるで影のように、彼は俺に近づいた。俺の全力の攻撃をほんのわずかな動きでかわした。そして一撃。俺は地面に叩きつけられた」

彼は右手で軽く頬の古傷をなぞった。

「血が地面に滴る中で、初めて俺は敗北した。自分の無力さを思い知らされた。周囲は静まり返り、誰も動けなかった」

トリアは、息を呑みながら彼の物語に聞き入っていた。

「ロイは俺についてこいと言った。ただの命令以上の何かだった。俺を単なる乱暴者としてでなく、一人の戦士として認めた言葉だった」

ニコラスの声に、初めて柔らかな感情が宿る。

「それからの10年間、俺たちは共に戦った。同じ飯を食い、共に笑い、共に傷つき、共に成長してきた。ロイは俺の相棒であり、家族だ」

彼はベンチから立ち上がった。
その動きには、過去の痛みを現在の力に昇華させるような凛とした決意が満ちていた。

「過去は変えられない。だが、未来は俺たちの手の中にある」

トリアは、ニコラスの姿に深い敬意と感謝の念を覚えた。

「ニコラスさん、あなたの強さと誠実さが、私たちに希望と勇気を与えてくれます」

夜は更け、二人の周りに静寂と決意が満ちていった。
ニコラスの鍛錬の音だけが、静かに部屋に響き渡る。

「あと30分したら戻る」
ニコラスが静かに言った。

トリアは優しく笑った。
「私にも見守らせてください」

チーム・ネクサスの中で最も寡黙なニコラスが、こうして自分の想いを語ってくれること。
それは、トリアにとって大きな信頼の証だった。
普段は無口で近寄りがたい印象のニコラスだが、こうして二人きりになると、少しだけ心を開いてくれる。
その変化を、トリアは密かな喜びとして大切にしていた。

夜は更けていく。
練習場の蛍光灯が時折かすかに明滅を繰り返す中、二人の呼吸だけが静かな空間に溶け込んでいった。
だが、そこに漂う空気は、もはや孤独なものではなかった。


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