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キャシディ外伝第4章:光の中へ

導入

魔術師教会エニグマの大聖堂で、キャシディ、マキシマス、シルヴェスターの三人は、幹部魔導師たちと向き合う。
毅然とした態度で自らの意志を語るキャシディの姿に、幹部たちは戸惑いを隠せない。
その時、彼女の体から不思議な光が放たれ始める。それは彼女の内なる決意が形となって現れた力だった。

これは、暗殺者としての過去を捨て、新たな未来へと歩み出す少女の物語。

1.大聖堂での対峙

魔術師教会エニグマの大聖堂は、荘厳な静寂に包まれていた。
正面の壁に据え付けられた巨大なパイプオルガンが、ステンドグラスを通して差し込む朝日を受けて輝いていた。
その光は、中央に描かれた巨大な魔法陣を神秘的に照らし出していた。

キャシディ、マキシマス、そしてシルヴェスターは一列に並び、幹部魔導師たちと向かい合っていた。
空気は張り詰め、誰もが次の一手を慎重に探っているかのようだった。

かつての自分なら威圧感に押しつぶされていたかも知れない。
しかし今、キャシディは毅然とした態度で立っていた。

彼女の瞳には、以前にはなかった強い意志の光が宿っていた。
その瞳に映る幹部魔導師たちの姿は、もはや畏怖の対象などではなく、ただの老人に過ぎなかった。

長老格の老人が、杖をつきながらゆっくりと前に進み出た。
「キャシディ」
長老の声が、静寂を破った。

「お前は我らから受けた恩を忘れたわけではあるまいな。お前の使命は教会を守ることにある」

その言葉にキャシディは一瞬目を閉じた。
そして再び目を開く。
その瞳には強い決意が宿っていた。

「私の使命は、もはや教会を守ることではありません」

彼女の声は、静かではあるが力強かった。

「私の使命は、あの少女のような不幸な犠牲者を二度と生み出さないこと。そして、本当の意味で人々を守ることです」

長老が再び口を開いた。

「キャシディ、お前は我らの庇護から抜けるというのか?」

キャシディは深く息を吸い、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「私は、もう暗殺者として生きることはしません」

彼女の声は静かでありながら、揺るぎない決意に満ちていた。

「私の力は、人々を守るために使います。それが、あの少女の死を無駄にしないために、私が選んだ道です」

その瞬間、彼女の身体から放たれる光が一層強くなり、魔法陣がまばゆいばかりに輝き始めた。
それは彼女の中に眠る特殊能力「INTO THE LIGHT」が、彼女の強い意志に応じて覚醒しようとしている証だった。

幹部たちは、その光景に息を呑んだ。
彼らの目に、驚きと恐れの色が浮かんでいた。

彼女は、自分の中に新たな力が芽生えるのを感じていた。
少女の死を経て生まれ変わった自分の意志そのものだった。
キャシディは強い決意を込めて言った。

「これが私の選んだ道です。この道を歩むことで、私は二度と罪のない命を奪うことはありません」

マキシマスが一歩前に出て、静かに、しかし力強く言った。

「彼女には自由を得る権利がある。彼女の中に秘められた力、それが真に発揮されるのは、彼女が自らの意思でその力を使う時です」

シルヴェスターも続けた。

「無理強いして力を引き出しても、真の力にはならない。それどころか、その力は破壊と混沌を生む可能性がある。彼女の意志が鍵となるのだ」

2.秘められた力

大聖堂の空気が凍りついた。
キャシディの宣言と、続くマキシマス、シルヴェスターの言葉が、幹部たちの心に深い衝撃を与えていた。
キャシディから放たれる光は、次第に強さを増し、魔法陣全体を包み込んでいった。

長老が震える声で問いかけた。

「キャシディ、お前は本当に我々の元から離れるというのか?」

キャシディは毅然とした態度で答えた。

「はい。私は新しい道を歩むことを決意しました」

その瞬間、彼女の体から放たれる光がさらに強くなった。
その光は、まるで彼女の内なる決意が形となって現れたかのようだった。
マキシマスが前に進み出て声を上げた。

「あなた方にも分かるはず。これが彼女の真の力です。この力は、彼女が自らの意思で選んだ道を歩むためのものなのです」

シルヴェスターも続けた。

「彼女の力は光の力。それは闇を打ち砕き、真実を照らし出すものだ。彼女が闇に縛り付けられていた時には、決して現れることのなかった力だ」

キャシディは、自分の体内で渦巻く力に戸惑いながらも、それを受け入れようとしていた。
暗殺者として訓練された今までの力とは明らかに異なる、温かく、そして生命力に満ちた力だった。

幹部たちの間で動揺が広がった。
一人が声を荒げた。
「だが、キャシディの力を放っておくことはできない!その力が我々の元から離れれば、何が起こるかわからないではないか!」

別の幹部も同調した。
「そうだ!彼女を解放するなど馬鹿げている。我々の管理下に置くべきだ」

シルヴェスターは厳しい目つきで反論した。

「キャシディの力を無理に抑えつければ、それこそ制御不能な災厄を招くことになる。彼女の力は、新たな未来を切り開くものだ。それを理解していただきたい」

マキシマスも力強く語った。

「彼女の力は人々を守るためのもの。そして彼女は、もうあなた方の操り人形などではない!」

3.INTO THE LIGHT

キャシディは、自分の周りで交わされる議論を聞きながら、静かに目を閉じた。
彼女の心の中で、新たな決意が形作られていった。

そして、彼女はゆっくりと目を開け、マキシマスの方を見た。

「私が選び取った道を進むには、あなたが必要です、マキシマス」

キャシディの声は、静かでありながら強い意志に満ちていた。

「あなたと共に歩むことで、私はこの力を真に使いこなすことができる。私を信じてついてきてください」

マキシマスは、キャシディの手をしっかりと握り返した。
彼の目には、深い信頼と愛情が宿っていた。

「君の意志は固い。私はいつでも君の隣にいる。共にこの力を、正しい方向に導いていこう」

二人の手が触れ合った瞬間、キャシディとマキシマスの間に、圧倒的な魔力が流れ込み、光が爆発的に広がった。
それはキャシディの「INTO THE LIGHT」とマキシマスの強大な魔力が融合し、合体技「DOUBLE REC」の片鱗が僅かに垣間見えた瞬間だった。

大聖堂全体が、まばゆい光に包まれた。
その光は、これまでの闇を打ち払い、新たな希望を告げるかのようだった。

幹部たちは、言葉を失って立ち尽くした。
彼らの目の前で起こった奇跡に、誰もが息を呑んでいた。

キャシディとマキシマスは、互いに見つめ合った。
彼らの目には、新たな未来への決意と希望が輝いていた。

大聖堂内に満ちた光が徐々に収まっていく。
幹部たちの間で緊張に満ちた沈黙が広がった。
彼らの表情には、一様に驚きと恐怖が混ざっていた。

一人の幹部が、恐れを隠せない様子で叫んだ。
「この女の力は危険すぎる!女を殺して力を封印すべきだ!」

しかし別の幹部が遮った。
「馬鹿か!あの力を抑え込む前に、我らが真っ先に消されるぞ!」

幹部たちの間で論争が起こり始めた。
彼らの表情にはもはや威厳はなく、ただただ恐怖と保身が浮かんでいた。

4.光の中へ

長老は深く息を吐き、諦めたように言った。

「仕方あるまい…キャシディ、お前を解放する」

その言葉に、幹部たちの間でざわめきが起こった。
しかし、誰も反対する勇気はなかった。

長老は続けた。

「だが、一つだけ約束してもらいたい。その力で我々に危害を加えないということだけは誓え」

キャシディは冷静に答えた。

「私にはあなた方を害する理由はありません。ただしあなた方が再び罪のない人々を犠牲にしようとするなら、その時は容赦しません」

その言葉に幹部たちは身震いした。
脅しではなく、純粋な事実の表明だった。

マキシマスが静かに一歩前に出て、頭を下げた。
「ご決断に感謝いたします。彼女の力は人々を守るためのもの。彼女の意志が導くでしょう」

シルヴェスターも続けて言った。
「彼女の未来を祝福していただきたい。彼女が作り出す新しい光が、この世界にとって新たな希望となることを」

長老は震える手で杖を握りしめ、
「行け、キャシディ。もう二度とここに戻ってくるな」
と言った。

キャシディは静かに頷き、マキシマスとシルヴェスターに向かって歩き始めた。
三人は無言で大聖堂の扉へと向かった。

扉が開かれ、外の明るい光が差し込んできた。
キャシディは一瞬まぶしそうに目を細めたが、すぐに前を向いた。
彼女の表情には、新たな決意が満ちていた。

「行きましょう」
キャシディは静かに言った。

マキシマスは静かに頷いた。
「ああ、僕たちの新しい未来へ」

三人は光に満ちた外の世界へと、新たな一歩を踏み出した。
これから始まる新たな未来に向けて、二人の間には確かな絆が生まれていた。

「僕たちの力で新しい未来を切り開いていこう」
とマキシマスがキャシディに優しく語りかけた。

キャシディは彼の手を強く握り返し
「あなたと共にいる限り、私はどんな困難にも立ち向かえる。私たちの力で、私のような不幸をなくしてみせるわ」
と誓った。

こうしてキャシディとマキシマスは新たな未来を共に歩みはじめた。


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