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ニコラス エピローグ:月夜の告白


導入

シャドウベインとの最終決戦を経て、平和を取り戻した街。ロイは市議会で演説し、裏社会の問題解決に向けて動き出す。ニコラスも治安維持活動の最前線に立ち、日々鍛錬を欠かさない。

ある月明かりの夜、いつもは無口なニコラスがトリアを丘の上へと誘う。普段は感情を見せない彼の心にも、ある変化が訪れていた。

二人の間に流れる静かな時間の中で、新たな物語が始まろうとしていた。

1.表社会での活動

シャドウベインとの最終決戦を経て、ロイは裏社会の問題を解決するために市議会で演説して広く市民の協力を募った。
チームTRANSCENDAのメンバーもロイを支え、裏社会の犯罪撲滅や孤児達の救済活動に力を入れていた。

ニコラスは「俺は頭を使う仕事は苦手だからな」と言い、自ら率先して治安維持活動に回り、合間に鍛錬も欠かさなかった。
ただ時々、何かを確かめるように、握った自分の拳を眺めていることがあった。

2.月夜の告白

ニコラスがトリアを誘ったのは、ある月の明るい夜だった。
ニコラスの方から誘われるのは初めてでトリアは驚いたが、彼の申し出を喜んで受け入れた。

二人は丘の上へと向かった。
月明かりに照らされた風景は静かで、穏やかに流れる風が心地よかった。

丘の頂上に着くと、二人は並んで月を見上げた。
月の光が二人の姿を淡い光で包み込んでいた。
いつも無口なニコラスがゆっくりと口を開いた。

「…俺は二度、不思議な力がこの身体に満ちる体験をした」

ニコラスの声は低く響き渡る。

「最初は、魔術師教会エニグマからお前を助け出した時。そして、二度目はお前と一緒にABYSSをぶっ倒した時だ」

ニコラスは遠くを見つめるようにして続けた。

「でもそれ以来、その力が現れることはなかった。俺だけじゃその力を出せないんだ。どちらの時も、お前が俺のために祈ってくれた。お前がいたからこそ、俺はあの力を引き出せた」

トリアはその言葉に耳を傾け、ニコラスの顔を見上げた。
無骨な表情の中に、確信めいたものが垣間見える。

ニコラスは少しだけ間を置き、視線をトリアに向けた。
彼の瞳には不器用で真剣な想いが宿っていた。

「俺は考えるのが苦手だが、これだけは分かる。俺とお前は、不思議な何かで繋がっている。だから…たぶん、俺はお前のことが好きなんだと思う。お前も…そうであってくれたら、いいんだが」

普段は寡黙で感情を表に出さないニコラスの口から出たこの告白は、彼自身にも少し照れくさいものだったようだ。
月明かりに照らされた彼の頬は、わずかに赤く染まっていた。

トリアはまず驚き、そして笑顔を浮かべ、静かに頷いた。

「うん、きっとニコラスさんの言う通りだと思います。私も、あなたのことをいつも近くに感じていましたから」

トリアは優しくニコラスを見つめ、少しだけ身を寄せて彼の頬にそっと口づけた。

「私も、ニコラスさんが好き」

ニコラスは何も言わず、トリアの背中に腕を回し、そっと彼女を抱きしめた。
戦場で仲間を守り抜いた彼の腕は、今は優しく、暖かかった。
トリアもまた、その温かさを感じながら、ニコラスの胸に顔を埋めた。

「…ありがとう」と、ニコラスが小さな声で呟いた。
トリアはその言葉に微笑みながら、彼の鼓動を感じ取っていた。

二人の間に言葉にならない安らぎが流れていた。
月光は穏やかに二人を包み、彼らは静かな夜の中で寄り添っていた。
いまこの瞬間、二人は確かに心から結ばれていた。

3.これからも二人で

ロイは市議会の一員となり、裏社会の撲滅に向けての活動をますます進めていった。
ニコラスとトリアもロイの活動を支えていた。
ニコラスは治安維持部隊を率い、トリアは孤児救済活動に積極的に携わった。

「相変わらずロイは忙しそうだな」
とニコラスが言った。

「はい。でも、ロイさんがこんなにも頑張っているのを見ると、私たちも負けてられないなって思います」
トリアは静かに答えた。

彼女もロイの活動を尊敬しており、自分もその一員であることに誇りを持っていた。

ニコラスはその言葉に頷き、再び夜空を見上げた。

「俺たちはこれからもずっとこうしてロイを支えていくんだろう。俺はそれでいいと思ってる。お前と一緒だから、毎日がずっと充実している。疲れなんてまるで感じない」

トリアは嬉しそうに微笑んだ。
ニコラスは不器用ながらも、彼女に対する想いをきちんと告げるようになった。
ニコラスの無骨なまでに真っ直ぐなところが、トリアは何よりも好きだった。

数ヶ月後、ロイは市長に就任した。
裏社会の撲滅をなしえた功績が認められた結果だった。
ニコラスとトリアもまた、それを自分のことのように喜んだ。

そしてニコラスとトリアは、ついに結婚式を挙げることとなった。
式は、チームTRANSCENDAのメンバーだけを招いたごく内輪のものだった。
華やかな大きな式ではなかったが、それでもそこには温かな祝福の光景があった。

真っ白なスーツを着こなしたニコラスの姿は、普段とは少し違って見えた。
彼の隣に立つトリアも、純白のドレスに身を包み、笑顔を浮かべていた。

「綺麗だな」
とニコラスは少し照れたように呟いた。
彼にしては珍しい一言だったが、本心であることは明らかだった。

「ありがとう、ニコラスさん」
トリアもまた、少し顔を赤らめながら答えた。
「あなたも、いつもよりずっと素敵ですよ」

チームTRANSCENDAのメンバーたちは二人を温かく見守り、祝福の言葉を送った。
ロイは式の最後に立ち上がり、笑みを浮かべながら言った。

「ニコラス、トリア、二人がこうして結ばれる日が来ることを心から嬉しく思う。世界にこれほど似合いの二人はいないだろう。これからも、お前たち二人が俺の側にいてくれることはとても頼もしい。本当に、ありがとう」

ニコラスは軽く頷き、「相棒として、これからもお前を支えるだけだ」と短く応えた。
その言葉には、ロイへの絆と信頼が込められていた。

トリアもまた「ロイ、私もこの人と一緒にロイのことを支えていきます」と、感謝の気持ちを込めて微笑んだ。

式の後、二人は月夜の輝くバルコニーに出た。

「これからも二人で、一緒に歩んでいこう」
とニコラスは静かに言った。

「はい、ずっとあなたの側に」
トリアもそっと彼の手を握り返た。

二人は静かに寄り添いながら、月の明かりの下で新たな契りを交わした。

-fin.


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