ハロルドエピローグ：復興に向けて

導入

シャドウベインとの戦いが終わり、平和が訪れた。ハロルドとトリアは公園で散歩を楽しんでいた。かつて漆黒に染まった空は今、清々しい青さを取り戻し、子供たちの笑い声が響いている。

二人は幼い頃の思い出を語り合いながら、この平穏を取り戻せたことを噛みしめていた。そこへチームTRANSCENDAのメンバーが集まってきて、花束やプレゼントを手に二人の前途を祝福する。ハロルドとトリアは仲間たちの温かな祝福に包まれながら、新たな人生への第一歩を踏み出そうとしていた。

1.平和な日常

柔らかな日差しが公園を包み込む午後。
桜の花びらが風に舞い、子供たちの笑い声が響く中、ハロルドとトリアはゆっくりと散歩を楽しんでいた。

「ねぇ、ハロルド」
トリアが空を見上げる。
「あの日の空は、こんなに青くなかったよね」

ハロルドも共に空を見上げた。
ABYSSとの戦いの日、漆黒に染まった空がよみがえる。
しかし今は、その記憶さえも遠い過去のように感じられた。

「本当だな」
ハロルドは微笑む。
「でも、今この青空を見られるのは、お前と戦えたからだ」

公園のベンチに腰かけた二人の前で、幼い子供たちが追いかけっこをしている。
その無邪気な笑顔に、トリアの瞳が潤んだ。

「私たちも、昔はああやって遊んでたよね」
トリアが懐かしそうに言う。

「ああ」
ハロルドは優しく笑った。

「お前が転んで泣いたら、いつも俺が背負って帰ったじゃないか」
「もう！それを言うなら、ハロルドが工房から真っ黒になって帰ってきた時は、私がいつも着替えを持っていったでしょ？」

二人は同時に笑い出した。
幼い頃からの思い出が、今の幸せをより一層輝かしいものにしている。

ハロルドはそっとトリアの手を取った。
「あの頃は、お前のことを妹みたいに思ってた。でも今は…」

「うん」
トリアは頬を赤らめながら、ハロルドの手をぎゅっと握り返す。
「私も、あの頃はハロルドのことをお兄ちゃんみたいに思ってた。でも、いつの間にか…」

言葉は途切れたが、二人の間に流れる空気は、どんな言葉よりも雄弁に想いを語っていた。

その時、にぎやかな声が聞こえてきた。
「おーい！」
クインシーの明るい声。
振り向くと、チームTRANSCENDAのメンバー全員が、花束やプレゼントを手に集まってきていた。

「ハロルド、トリア」
ロイが微笑む。
「こうして平和な日々が戻ってきたのは、お前たち二人のおかげだ」

「まったくだな」
クインシーが花束を差し出す。
「これからは幸せになることが、お前たちの使命だぜ」
ニコラスも珍しく柔らかな表情を見せ、ユージーンは優雅に会釈をする。

「トリア」
シルヴェスターが静かに言った。
「お前は本当に立派なセレスティアになった。そして、一人の女性として幸せな道を選んだ。クララも、きっと喜ぶだろう」

「シルヴェスターさん…」
トリアの目に涙が溢れる。

「マキシマスとキャシディからの言付けだ」
シルヴェスターは小さな包みを差し出した。
そこには、一組の揃いの指輪が入っていた。
「お前たちの新しい人生への祝福を込めて」

ハロルドとトリアは、仲間たちの温かな祝福に包まれながら、幸せそうに微笑み合った。
春風が二人の髪を優しく撫で、桜の花びらが舞い散る。

「これからもずっと」
ハロルドがトリアを抱き寄せる。
「うん、ずっとずっと」
トリアが答える。

2.復興にむけて

陽光が差し込む研究室で、ハロルドは新しい設計図に向かっていた。
復興計画のための様々な図面や試作機が並ぶ中、彼の机の上には一枚の古い写真が置かれている。
両親の笑顔が収められたそれは、彼の新たな決意を支える道標となっていた。

「ハロルド？」
扉が静かに開き、トリアが顔を覗かせる。
温かいお茶と手作りのサンドイッチを持った彼女の姿に、ハロルドは優しく微笑んだ。

「ごめん、また仕事に没頭してて」
「いいの」
トリアはハロルドの隣に腰掛け、研究室を見渡した。
「すごいね。この設計図全部が、新しい街のためのもの？」
「ああ」
ハロルドは一枚の図面を広げる。

「ここに新しい浄水施設を作って、そこから各地区に安全な水を供給する。それから、この地域には新しい発電施設が必要だ」

語るハロルドの目が輝いていた。
それは技術者としての情熱だけでなく、平和な世界を築こうとする強い意志の現れだった。

「ご両親も、きっと誇りに思ってくれてるわ」
トリアがハロルドの肩に手を置く。
「あなたは技術の力で、みんなの幸せを作ろうとしている」

ハロルドは机の上の写真を手に取った。
「俺の両親は、シャドウベインの犯罪に巻き込まれて命を落とした。だからこそ、俺は誓ったんだ。二度とこの街に犯罪組織が根付かないように、誰もが安心して暮らせる街にすると」

「そうよ」トリアも写真を覗き込む。
「私たちの力で、もう二度と、誰も大切な人を失わない世界を作りましょう」

二人で写真を見つめていると、ドアが賑やかに開いた。
「よう！」
クインシーが明るい声で入ってくる。
「今日もガッツリ働いてるじゃねーか」

「ハロルド」
ロイも続いて入ってきた。
「新しい施設の件、議会が承認したぞ。シルヴェスターたちの推薦もあってな」

「本当ですか！」
ハロルドの顔が輝く。
「ああ」
ユージーンが優雅に頷く。
「私からの素敵なプレゼントというわけだ」

「みんな…」
ハロルドは仲間たちの顔を見回した。
かつての戦友たちは今、それぞれの立場で新しい世界を作ろうとしている。

「さあ」
トリアが立ち上がり、ハロルドの手を取る。
「お昼にしましょう。今日は私が作ったの」

研究室のテーブルに、仲間たちが集まる。
他愛もない会話が弾み、笑い声が響く。
窓から差し込む陽光が、その光景を優しく照らしていた。

「ねぇ、ハロルド」
トリアが小声で囁く。
「幸せ？」

ハロルドは頷いた。
「ああ。こんなに幸せなことはない」
彼はトリアの手を優しく握る。
「お前といると、どんな夢だって叶えられる気がするんだ」

「私もよ」
トリアは頬を赤らめる。
「これからも、ずっとあなたと一緒」

陽光の中で、二人の指輪が小さく光った。
それは未来への誓いの証。

ハロルドとトリアの新しい人生は、まだ始まったばかり。
しかしそれは、かけがえのない仲間たちに囲まれ、互いを想い合う愛に支えられた、希望に満ちた道のりとなるはずだ。

窓の外では、新しい街が着々と形を整えていく。
その光景は、まるで二人の未来を映し出すように、輝かしく、そして力強く発展を続けていく。

-fin.