
【現場監督が語る】データの大切さを知った、ある失敗談
製造現場で20年、様々な改善活動に携わってきた私から、ある重要な教訓をお伝えしたいと思います。
「いつもこうやってるから」
この言葉で、どれだけの改善機会を逃してきたか分かりません。
5年前のことです。ある工程改善の会議で、ベテラン作業者がこう言いました。「この作業手順は30年間同じやり方でやってきた。問題ない」と。
しかし、実際に作業時間を計測し、データを取ってみると、驚くべき事実が見えてきました。同じ作業なのに、作業者によって所要時間が最大で2倍も違っていたのです。
この発見から、私は「感覚」と「事実」の違いを痛感しました。以来、改善提案をする時は必ず「実測データ」を取るようにしています。
例えば、先日の不良率改善の取り組みでは、「朝一番に不良が多い」という意見が出ました。でも、実際にデータを取ってみると、むしろ午後3時以降に不良が集中していることが分かったのです。
現場には「経験」や「勘」を重視する文化があります。確かに、長年の経験から培われた技能は貴重です。でも、それが「思い込み」になってしまうと、かえって改善の妨げになることがあります。
特に気をつけているのは、次の3つのポイントです
1. 「いつもの」という言葉を使わない
2. 具体的な数字で語る
3. 定期的にデータを取り直す
現場では「今までこうやってきた」という声をよく聞きます。でも、その「こうやってきた」が本当に最適なのか、データで確認する必要があります。
実際、私の職場でも、作業時間の計測や不良の発生状況、設備の稼働率など、様々なデータを取るようになりました。最初は面倒くさがる声もありましたが、今では「数字で見える化」が当たり前になっています。
例えば、先日の改善活動では、ある作業者が「この工程、もっと早くできるはず」と提案してきました。その時、彼は1週間分の作業時間データを持ってきていました。それを基に議論することで、具体的な改善策を見出すことができたのです。
もちろん、データを取れば全てが解決する、というわけではありません。現場には数字では測れない「技能」や「経験」も確かに存在します。
でも、少なくとも「いつもこうだから」という思い込みだけで判断するのは危険です。私たちの「感覚」は、時として事実と大きくズレることがあるのです。
最近では、スマートフォンやタブレットで簡単にデータが取れる時代です。これを活用しない手はありません。
最後に、若手作業者の方々へ。
ベテランの経験は確かに貴重です。でも、あなたにはデータという「武器」があります。データに基づく改善提案なら、きっと聞いてもらえるはずです。
「カン」や「コツ」も大切ですが、まずは「データで語る」ことから始めてみませんか。それが、現場をより良くしていく第一歩になるはずです。
それではまた次回。