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"白ごはん"なしで生きてきた私

ご飯って味しない
ふりかけないと食べれない
ご飯って美味しいって感じない

そう、こう呟くのは昔の私。

ひどいよね。
苦労して作ってくださっている方がいるのに。
でも、子どもは、味つけしないと白ごはん食べられない子もいるかな。そんな風に思ったり。

あなたは"白ごはん"は好きですか。
私は、好きではありませんでした。
でも、30歳を超えてから好きになりました。
その経緯をお話ししたいと思います。


*-*-*-*-*

幼稚園のころのお弁当では、母がよく丸い小さなおにぎりを作ってくれていた。

お椀の中にふりかけを入れる。
ラップでくるくる巻いて作った丸い小さなおにぎりを、そのお椀にころんと入れる。
お椀を回しながら、ふりかけをおにぎりの全体につける。
カラフルな、丸い小さなおにぎりができる。

私もよく母に「やる?」と誘われ、お手伝いしていた。

でも、普段食卓に出てくるご飯には、ふりかけは出てこない。
私は味をつけない白ごはんは味を感じず、いつも「ご飯いる?」と聞かれていた母に、「いらない」と答えていた。
いつの間にか、母は何も聞くことなく、私の分だけ白ごはんを出さなくなった。

白ごはんのお供は好きだった。
お漬物とか梅干しとか、納豆とか。
でも、白ごはんと一緒に食べることはなく、いつも単品で食べていた。

おかずばかり食べていたものの、小学校になると、給食では白ごはんが出た。
私が通っていた学校では、掃除の時間になっても給食を食べていた子もいた。
でも、食べられない子は最初に減らしておくように、配膳のとき「少なめで」と配膳係の子にお願いしたり、
食べ始める前に減らして、残飯を減らす取り組みが少しずつ浸透してきた時代でもあった。
そのため私はいつも白ごはんをどっさり減らしていた。
つがれていた1/4とかの量に。
食べられないことはなかったけど、無理して食べたくなかったからだ。
食べるのにも時間がかかるため、食べられる量ではなく、時間内に食べ切れることを意識していた。
その日の体調で今日はこれくらい食べられるとか、食べられないとかもあったしね。

白ごはんをあまり好きではなくても、無理に食べなければならない環境になることはなかった。
だからなのか、嫌いにもならなかった。
減らして完食を繰り返していくうちに、"残こさず食べたい"気持ちも、いつの間にか身についた。
そのため、残すなんてイヤ。
出たものは全部食べる大人になった。
次第に白ごはんも、他のおかずと食べることを覚えた。
けれども、家では白ごはんは、なくていい存在で、あまり食べなかった。

大きくなるにつれて、お腹が空くことが増えた。家にはあまりおやつを常備していなかったため、ご飯をよく食べるようにはなった。
梅干し乗せたり、納豆乗せたり、マヨネーズと鰹節と醤油かけて食べたり、卵かけご飯にしたり。
味はつけないと食べられなかったが、ご飯を食べることは増えた。
夕食時、母にも、「ご飯いる?」と聞かれるようになった。

でも...
白ごはんは、やっぱり好きではない。
白ごはんではなく、何かと一緒に食べるご飯が好きなだけ。
私には、白ごはんの美味しさはわからなかった。

小腹が空き、炊き立てではないご飯で卵かけご飯をして食べると、母にいつも「炊き立てじゃないよ」といわれていた。
白ごはんの美味しさを知っている母にとっては、卵かけご飯は炊き立てが美味しいらしい。
でも、私にはそんなの関係ない。
食べたいときに、好きなようにして食べるスタイルだった。


そんな私は、20代後半で結婚した。
白ごはんは、好きではない。
でも、白ごはんが好きではなくても、夫は食べるため、炊かなければならなかった。
お弁当も入れるため、2合炊く。
夫1人だと食べきれない。
当時はなんでもかんでも冷凍にしたくなかった私は、白ごはんが余ることを避けたかった。
仕方なく、白ごはんを自分の分もついで食べるようになった。
昨日も今日も明日も。

するとだんだんと、白ごはんを知ることができた。

あれ、白ごはんって、噛むと甘い
んっ!炊き立ての白ごはんってホクホクしてる!
今日はべちゃべちゃしてる。水入れ過ぎたかな
つぶつぶしてて、ちょっと硬めが私好き!
ん?前のお米と匂いが違う。味も違う!
わっ!今日の白ごはんキラキラしてる!

あ、私..."白ごはん美味しい"って感じてる。

30歳過ぎてから、ようやく白いごはんの美味しさや白いごはんの違いを知ることができた。


結婚前の白ごはんの味の記憶はない。
嫌いではなく、美味しさを感じなかったのだ。
味がしないと思っていた白ごはんは、
どの白ごはんも同じだと思っていた。
でも、今やっと白ごはんの美味しさを知って、日本の良さを感じることができた自分にホッとしている。

夫にも、実は最近ようやく「僕の好きなご飯の炊き方になってる!」とってもらえてね。
結婚してもうすぐ8年なんだけど。
なんだろう、夫好みのご飯が炊けるようになって、ようやく妻になれた気持ち。
今はもう、ご飯を炊くとき夫はしない。
「カハリーが炊いた方が美味しいから、お願い」っていって、頼ってくれるようになった。

ご飯の炊き方が夫好みになったのは、今年、お義母さんから、無農薬の新米のお米をもらったことがきっかけ。
「新米は水を少し少なめにするんよ」
と母に教えてもらっていたため、水の分量を意識するようになった。
新米ではなくても、ご飯の炊け具合で、いつも水をメモリ通りではなく、自分で調節するようになった。
自分でも、プロのお米の洗い方からおにぎりの作り方まで調べて真似てみたり。
それが、夫の「僕の好きなご飯の炊き方になってる!」につながった。


白ごはんって美味しい。
炊き立てってさらに美味しい。

今は家族が増えて、子どもたちにも出す白ごはん。
「ごはん、おいしい!」といってくれるので、良かったって思う。
でも、私のように白ごはんの美味しさを知らない子どもはいる。大人だっているかもしれないね。
保育士をしていたときも、「ふりかけかかってないから、いらなーい」っていう子も、1人や2人ではなかった。
白ごはんを残す子もいた。

だから、園でも学校でも、稲刈りや収穫体験をして、育てる大変さや有り難みを知る機会をつくってくれてる。

でも、農家さんの苦労を知れることはほんの一部。私もわかっていない。
家で小さな発泡スチロールでお米の苗を育ててみるのもいいが、時間がとれない家庭もあるだろう。

でもね、私の場合は、まずは白ごはんが美味しいって感じないと興味なんてもたなかった。
農家さんの苦労も、わかろうとしとしても、自分の行動は大きく変わらなかった。

毎日自分でご飯を炊いて食べたから、
気づいたんだよ。

毎日自分でご飯を炊いて食べる。
白ごはんが好きではない子どもも、それならママやパパと一緒にできるかな。

今年は、農業をしている友人のとこの、稲刈りや稲木掛け体験、体調を崩して行けなかったんだけど、たまにはそういった体験ができるとこへ行ってもいいよね。
そしたらさ、炊飯器を開けただけで、白ごはんの美味しさがわかるよ。
食べてみたらもっと感じるよ。
農家さんの苦労も知ろうと、目にとまるようになって、感謝の気持ちも生まれるよ。


私自身、何もないと思っていた白い味。
白の中に色があるなんて知らなかったな。
いまやご飯の時間には欠かせない白ごはんは、今日も家族を笑顔にしてくれている。
白ごはんがあって良かったなと、感謝の気持ちでいっぱいだ。


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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
先日テレビを観ていると、自分たち家族でお米を作っておられる方が出ていたんです。
いもち病になって、実が入っておらず、160キロ収穫できる場で30キロしかとれなくて悲しんでいたり、「今年が一番ふっくらしたお米だ」と喜び、両手広げたくらいの大きさがある木摺臼や土臼で籾殻をのぞいたあと、お米を嬉しそうに眺めていたり。
その姿を見たとき、私は白ごはんが好きではなかったことを思い出し、申し訳ない気持ちになりました。
白ごはん、好きになって良かったって思うし、感謝して食べることを忘れてはいけないなって感じました。

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