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くしゃみはなぜ「助かる」のか? ~2.5次元Vtuber論争について思うこと~ #7〈V屋のひとりごと〉


Vtuber「ハクション!!」

コメント「くしゃみ助かる」


 Vtuberの配信を見たことがある方なら、こういった光景に一度は遭遇したことがあるのではないでしょうか。
 Vtuberの方がくしゃみをすると、チャット欄が「助かる」コメントで溢れたり、青・水色スパチャが大量に飛び交ったりします(青・水色スパチャはくしゃみを表す)。

 場合によっては、「Vtuberくしゃみ集」なんていう切り抜きが作られることもあります。


 でもこの「くしゃみ助かる」というワード、他の界隈ではあまり言わないですよね。例えば、Vtuberと対になるような3次元の配信者・アイドルの界隈では、あまり「くしゃみ助かる」ということは言わない気がします(Vtuber用語が派生して使われていることはあるかもしれませんが)。

 一体それはなぜでしょうか?

 というわけで、V広場へようこそ。管理人のMottyです。
 今回は、「くしゃみはなぜ『助かる』のか?」というテーマでお話していきたいと思います。また、その過程で、最近話題になっている2.5次元Vtuberの是非についても触れようと思います。

 本日のお品書きは以下のようになっています。



ただ「かわいいから」というだけなのでは?


 まず、そもそもくしゃみを有り難がる理由は「かわいいから」というだけなのでは?ということについて考えたいと思います。
 これについては、確かにそういう一面もあると思います。

 試しに、Youtubeで「くしゃみ集」と検索してみました。するとこうなります。
注:私のYoutubeはVtuber関連の話題に染め上げられている危険がありますのでご注意ください。

検索候補はこんな感じ。Vtuberが多いが、配信者やアイドルの方も候補に挙がっている


検索するとこんな感じ。一番下にちょっと見えているのがホロライブのくしゃみ集。
プレイリストがあることに恐怖と危機感を感じる。


 ちなみに「くしゃみ」で検索しても同じような感じでした。

 とまあこのように、そもそもくしゃみとは太古の昔から需要があったようで(?)、Vtuberに限らず様々な方のくしゃみがエンタメとして存在するようです。

 ここで、参考になる記事をご紹介させていただきたいと思います。「くしゃみ助かる」の由来を探っている記事です。興味がある方は、是非後で読んでみてください。


 上の記事から、「くしゃみ助かる」の由来について考察している部分を引用します。

そんななか、プライベートな部分が見られてうれしい、といった意味合いで誕生したんだと思います。

…ただ、上記の理由は優等生の模範的な回答だと思っていて笑、ほかにもいくつか理由がある気がするんですよね。

まず、初期は今以上に女性Vtuberが多く、単純にくしゃみをする声自体がかわいい、恥ずかしい部分を見られた(聞けた)ことの嬉しさなど、アイドル的な要素が多分にふくまれてた可能性があるかと笑

出典:【Vtuber】くしゃみ助かるの元ネタや発祥を調査【シャドバのローウェン】 | つむぎゆりブログ (26g.me)


 この記事でも書かれている通り、単純にかわいいという理由でくしゃみに需要があるというのも一つの事実だと思います。Vtuberであるかどうかに関わらず、「(特に)女性がかわいいくしゃみをする」ということには一定の需要があるようです。世界は広いものです。

 ところが、同じようにYoutubeで「くしゃみ かわいい」と検索すると様子が違ってきます。

動物という新ジャンルが登場。今後の活躍に期待(?)。
そして、やはり強いプレイリスト。


 このように、先程とは違って動画が一気にVtuber関連で埋め尽くされるようになります。
 断定はできませんが、これだけ違いが出るということは、Vtuber界隈における「くしゃみ」は特別な意味を持っているということになるのでしょう。Vtuber界隈においては、通常よりもくしゃみをかわいいとする文化が強いということになりそうです。

 ここからはその特殊性について深掘りしていきたいと思います。



くしゃみが「助かる」のは2次元だから?


 Vtuber業界においてくしゃみに「助かる」と反応する文化が形成されたのはなぜか?その理由の一つに、

くしゃみは素の部分を見ることができるものだから

というのが挙げられると思います。くしゃみって自然に出てしまうもので、中々咄嗟に演技することが難しいものですよね。そういう素の部分を知ることができるのがくしゃみの魅力なのでしょう。

 しかし、これではVtuber界隈でのみくしゃみを有り難がる文化が形成された理由にはなってません。では、なぜVtuber界隈だけなのか?
 それは、Vtuberの特性に由来していると考えられます


 まず、非常にメタな話をして申し訳ないですが、そもそもVtuberとは、「中の人」の言動に合わせてアバターが動き、そのアバターの動きを楽しむ、というものです。つまり、Vtuberと我々視聴者の間には常に「アバター」という壁が存在するということになります。

 本来は、マイクを通して聞こえてくる声はアバター関係なしに我々に届いているはずなのですが、それを我々はまるでアバターが声を発しているかのように「錯覚」しているということになります。これが一つ目の特性です。
 ここら辺はアニメと構造は同じですね。アニメだって、声優さんがいなければキャラが口をパクパク動かすだけの絵になってしまうわけですし。

 下の動画は声優志望の方のためのアフレコ練習用動画です(1分4秒)。もしこの状態でアニメが放送されたら、全く感情移入できない謎アニメになってしまうことでしょう(そりゃそう)。


 そして二つ目の特性として、Vtuberの間ではくしゃみの際にミュートにすることがエチケットとなっていることが挙げられます。
 くしゃみを出すことがタブーとなっている環境で、ある意味でくしゃみの秘匿性が増した(?)ということです。秘密っていいですよね、うん。
 本当はこれについてもう少し説明したいのですが、あまり説明すると私の人間としての尊厳が失われそうなので、ここらでやめにしておきます。まあ一言で言うと、「秘密っていいね」ということです。
 ただ、この要素は最近は薄まっているように感じます。もはやくしゃみがタブーどころか一つのエンタメみたいになってますし。
 くしゃみへのVtuberの反応の変化については、あおぎり高校の動画でも取り扱われています。
※あおぎり高校は色々ぶっ飛んでいるので、内容についてはネタとして捉えることをお勧めします。


 こういった特性が、くしゃみを有り難がる文化がVtuber界隈においてのみ形成された理由になっているのではないかと私は思います。
 まとめると、普段「アバター:視聴者」の関係であるのが、くしゃみの瞬間だけアバターの壁を通り抜けて「中の人:視聴者」という関係に変化するということです。ある意味で、一瞬でも中の人と繋がれたという事実に対して「助かる」と言っているのではないかと思います



リアルを知れるのは嬉しいこと?


 少し話は変わりますが、最近Xで2.5次元Vtuberの可否についての議論が盛り上がっていますよね。
※2.5次元Vtuber:Vtuberでありながら、リアルの姿(首から下、手、胸など)を見せているVtuberのこと。

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