
美容室で『おまかせで』と注文したら美容師さんの理想な髪型になったそうなのですが…。
『〇〇、髪長すぎる』
久しぶりにこんなこと言われた。
たしかに言われても仕方がないぐらい伸びていた。
今の髪型は、正直ボブに近いと言っても過言ではない。
おそらくもう少し伸ばせば到達するだろう。
Q.そもそもなぜこんなにも伸ばしていたのか?
やってみたい髪型が長くないとできないから?
A.いいえ。そんな理由じゃありません。
答えは簡単。
とにかく美容室に行くのがめんどくさく、特に髪型にこだわりがなかったからだ。
さすがに、周りの人に言われたら美容室に行こうと前々から決めていた。
こんなだから彼女できないんだろうな。と痛感する。
指摘されたその日のうちに美容室の予約を取った。
なにやら予約した美容室は若者で流行しており、人気女優藤吉夏鈴さんも通っているらしい。

おそらく店選びは失敗していないだろう…。
…
…
予約当日
予定通りの時間に美容室へ
ベルが備え付けられる重いドアを開けた。
?:いらっしゃいませ〜
〇:予約していた〇〇なんですけども…。
?:あっ、〇〇様。お待ちしておりました
?:今回担当します、『由依』です。

〇:由依さん…よろしくお願いします。
由:では、コチラに
前を歩く由依さんに付いていく。
周りを見渡すと、本当に若者ばかりだ。
流行しているのが、目に見えてわかる。
由:コチラにおかけください。
〇:はい
由:ではまず、シャンプーからしていきますね
そう言って由依さんは椅子を倒す。
自分でするよりも丁寧な手捌きで洗われているのが頭から感じ取れる。
〇:(あれ、そういえば白い布的なやつってないの?)
〇:(確か前まで通っていた美容室ではあったような…)
今までには無い違和感を覚える。
〇:(最近の美容室ではもう無くなったのかな。)
そう思い自分の考えはもう古いのか。と実感する。
考えているうちに由依さんを下から見る形に。

今日初めてお会いしたが、とても綺麗な方だ。
こんな綺麗な方が、真面目にぼくのためにシャンプーをしてくれている。
由依さんにお礼がしたくなる。
由:あっ…//
〇:…?
突然恥ずかしそうにする由依さん。
なにかシャンプーでミスをしたのかと思っていると、
由:フェイスガーゼ忘れてた…//

やっぱり。
今の時代にもあったと思い安心する。
優しくフェイスガーゼを被せられる。
由依さんの綺麗な顔が見れなくなり、少し寂しく思う。
そこから慣れた手つきでシャンプーを終え、カットの方へ
由:今回はどのような髪型にされますか?
〇:特にこだわりがなくて…
〇:最近流行りの髪型とかもわかんなくて…
由:そうですかぁ…
〇:由依さんのおまかせとかでもいいですか?
由:えっ?!
由:わたしのですか…?
〇:よかったら…。
由:普段はおまかせ注文してないんですけど…やってみます
由:では、今回はわたしのおまかせで…!
〇:ありがとうございます
由:がんばりますっ!

『おまかせ』と言うムチャなお願いだったと思うが、意外にも由依さんの手捌きに迷いはなく、鏡越しに見える由依さんの目はキラキラしているようだった。

頭を触られているのが、ヘッドマッサージかのように気持ち良く、気付けば意識が落ちてしまっていた。
由:…さん…〇さん…
〇:…ん。
由:おはようございますっ
〇:あっ…寝ちゃってましたか…。。
由:もうスヤスヤでしたねっ
〇:お恥ずかしい…。
由:それで、今回のカットはこんな感じで
〇:えっ…
前の鏡、由依さんが持つ手鏡で自分の髪全体見たが信じられなかった。
歴代一位を争うレベルで自分に似合っていた。
〇:これ、由依さんが…?
由:もちろんですっ
由:どうですか〜かっこいいでしょ〜?
〇:はい。すごく…。
由:よかったです〜
由:〇〇さんがわたしの好きな髪型似合う方で
〇:由依さんが好きな髪型なんですね
由:はいっ
由:やっぱり彼氏になる人にはこの髪型してほしくて
〇:彼氏になる人…?
〇:由依さん片想い中なんですか
由:絶賛そうですね、
由:その片想いの彼の髪を今切り終えたところなんだけどね

〇:いま…?!
由:そうっ
由:今気づいたの?
由:普段はおまかせって言われても断ってるんだから
〇:そ、そうだったんですか…
由:入ってきた時から、〇〇さんのお顔可愛らしくて、絶対カットしたら輝くお顔だなって思ったら案の定やっぱり
由:ねぇ…
由:普段は受け入れない注文したんだから、
由:由依もちょっとムチャな注文してもいいよね

fin.