とある社会科教師の高校授業日誌 時事演習「航空機客室へのペット同伴」~トロッコ問題をヒントに
私の勤務している高校には、3年生の選択科目として学校設定科目の「時事演習」という科目があります。
2時間続きの授業で、1時間目はニュースを一つ取り上げ現代社会、倫理、政治経済、地理、日本史、世界史で学んできたことを確認し、2時間目は席が近い者同士で話し合い、自分の感想・意見をこちらで用意した様式のレポート用紙に記入させています。ちなみに席は自由としていますので、話しやすい者同士で近くに座っていることが多いです。
先週は、2日の日航機と海上保安庁機の事故の後に、ペットを客室に同伴することを求める署名が集まっており、著名人のSNSが炎上するなどネット上で論争が持ち上がっているというニュースを取り上げました。
そこで、自分の高校の教科書には載っていないものの、トロッコ問題を提示してみました。制御不能の路面電車が暴走していて、そのままにすれば先にいる5人の作業員が事故で死んでしまう。そこで、分機器で列車の進路を変えると、今度は1人作業員が先にいる。列車の進路を変えるべきかどうかという問題です。現代社会や倫理の教科書には、功利主義や公正については載っていますので、高校の内容を大きく超えるものではないと考えました。
つまり、現在はベットを持ち込むことができない航空会社が多いですのでベットの命よりも人間の命を優先しているわけです。しかし、ペットを客室に同伴させるということは、事故の時にペットは手荷物ですので置いておいてくださいと言われても、置いていけば爆発炎上に巻き込まれるわけですから、置いていくことには葛藤が生じます。そこで、ペットの命を優先するのか、自分の後から脱出する乗客の安全を優先するべきなのか、選択が迫られるわけです。
今回の事故の時には、乗客は客室乗務員の指示に従い、手荷物を全員置いていき、10人1組で手をつないで脱出したと聞いています。そして、乗客全員が脱出した直後に爆発したわけですので、ペットが同伴していれば、ペットの飼い主はまさにこの選択が迫られたわけです。
もちろん、これまた高校の教科書には倫理で地球環境問題に関して人間中心主義は載っているだけで、動物の命についての考察し載っていないのですが、人間の命に較べて動物の命は軽く扱っていいのかという問題はあります。最近では、家畜の飼育や屠殺に際してなるべく動物に苦痛を与えないようにと主張されるようになりました。
「ペットは家族」という主張は、まさに人間の命と動物の命の重さについての問題だと思います。
以上を提示して、生徒に考えてもらったわけですが、休み時間から話し合いをしている生徒もいましたので、生徒に考えてもらえる材料を提供できたかなと思いました。