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胆嚢系疾患の臨床看護!

急性胆嚢炎や胆石症などを中心としたがん以外の胆嚢系疾患についてまとめました!
その疾患とは何か、検査や治療、治療後の経過、退院指導までを網羅しこのページを見るだけで臨床看護を行えるように作成しました。
ぜひ、最後までご覧ください!


○目的
 胆嚢とは?
 ・胆嚢の解剖生理

 急性胆嚢炎とは?
 ・概要
 ・症状
 ・重症度

 胆石症と胆嚢炎
 ・検査
 ・治療
 ・PTGBA
 ・PTGBD
 ・ERCP

 腹腔鏡下胆嚢摘出術
 ・手術内容
 ・術後の合併症
 ・ドレーン管理
 ・退院指導


胆嚢とは?
胆嚢は肝臓に隣接している臓器です。
肝臓で作られた胆汁を濃縮して貯蔵します。
そして食事摂取に合わせその濃縮した胆汁を分泌する機能があります。また、胆汁は脂肪の分解を助ける酵素が含まれているため、胆嚢摘出した患者は身体が順応するまでは脂肪分の摂取を控える必要があります。胆道閉鎖、閉塞を起こすと排便が白くなる所見がありますが、これは胆汁が便の色の元となっているからです。


急性胆嚢炎とは?
急性胆嚢炎は胆石で胆管が塞がることで起こることがほとんですが、まれに奇形や捻転、胆嚢の血流障害、膠原病、胃切除に伴う迷走神経切除、胆管空腸吻合、胆嚢と隣接している臓器の炎症が波及して発生することもあります。胆汁の排泄遅延で細菌が増殖したり、胆嚢内に膵液や逆流することで胆嚢炎が起きることもあります。胆嚢が何らかの原因で炎症を起こし、腫れて炎症の進行と共に胆嚢の壁が壊死していきます。壊死を起こすと腹膜炎に至る可能性があるため緊急手術を行い、胆嚢の摘出と腹腔内の洗浄を行います。腹膜炎は敗血症へと進行する可能性のある病態で早い段階での治療が必要です。
※胆嚢捻転症とは胆嚢頸部の軸捻転で血流障害を起こし胆嚢壁が壊死を起こすことです。この場合、急速に病状が悪化するため胆嚢摘出術を早急に行います。

<症状>
・上腹部の不快感
・鈍痛
・右季肋部痛など
・腹膜炎を併発している場合は腹膜炎の症状の有無も確認します

<重症度>
 軽症
 ・軽症は中等症や重症の基準以下の場合。
 ・保存的治療を行い改善がない場合は手術を
       行う。
  手術リスクが高い場合は保存的治療を行い
      状態が改善したら手術を行う。

 中等症
 ・WBCが18000/mm2以上
 ・72時間以上症状が継続している
 ・右季肋部痛
 ・局所炎症所見など
  胆嚢ドレナージを初期治療と一緒に行い症
       状の改善を図る。

 重症
 ・腹膜炎や敗血症の所見や症状がある場合
 ・胆嚢ドレナージを行い保存的治療を行う。
  全身状態の改善が最優先で行われる。状態
       が安定したら手術を行い胆嚢を摘出する。

手術を行わなかった場合は、24時間以内に再度重症度を判断する。


<胆石や胆嚢炎の症状は?>
・腹痛(心窩部痛や右季肋部など。人によっては右肩に放散痛を生じる患者もいる)
・悪心・嘔吐・黄疸
腹部所見:吸気時に右季肋部を圧迫すると呼吸が止まるマーフィー(Murphy)徴候
☆既往歴に上部消化管疾患の手術や肝硬変、急激な体重の増減、心臓弁膜症置換術などの治療経験のある患者は胆嚢結石のリスクが高い。


<Mirizzi(ミリッツィ)症候群>
ミリッツィ症候群は、胆石症に関連するまれな病態で、胆嚢管や胆嚢頸部に存在する胆石が原因で、総胆管や肝外胆管を圧迫し、閉塞性黄疸や胆管炎を引き起こす状態を指します。

病態の特徴
胆嚢管または胆嚢頸部に位置する大きな胆石が主因となります。
胆嚢の炎症が進行することで、胆嚢と総胆管の間に瘻孔が形成される場合があります。
長期間放置されると、総胆管への胆石嵌頓や二次的な胆管炎が生じ、患者の状態が悪化することがあります。

主な症状
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
総胆管が圧迫されることで胆汁の流れが滞り、閉塞性黄疸が発生します。
右上腹部の痛み
胆石や胆嚢炎による腹痛。
発熱・悪寒
胆管炎を合併すると感染症の症状が現れ
消化不良・吐き気
胆汁の流れが滞ることで消化に影響を及ぼす

原因
胆石が最も一般的な原因。
胆嚢頸部や胆嚢管にある大きな胆石が、近接する総胆管や肝外胆管を圧迫する。
* 胆嚢炎などの慢性炎症が関与し、胆嚢と総胆管の間で癒着が起こることがあります。

分類
ミリッツィ症候群は、進行度や瘻孔形成の有無によって以下のように分類されます(Csendesの分類が一般的です!)

Type I
胆石が総胆管を外から圧迫するだけで、瘻孔形成はない。

Type II
胆嚢と総胆管の間に瘻孔が形成され、胆管壁の1/3以下が侵食されている。

Type III
瘻孔がさらに進行し、胆管壁の2/3が侵食されている。

Type IV
瘻孔が完全に形成され、総胆管が全周性に侵食されている。


<検査>
・血液検査でWBCやCRPなどの炎症値の上昇
・腹部エコーや腹部CTで胆嚢壁肥厚や胆嚢の腫大、胆嚢結石などが所見として確認できる。


<治療>
原則的に胆嚢摘出を行う前提で治療を行う。
・炎症が限局的で強くない場合は、入院し絶食、抗菌薬投与を行う。
・全身状態が不良で手術が行えない場合は、PTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)やPTGBA(経皮経肝胆嚢吸引穿刺)などを行う。


PTGBD (Percutaneous Transhepatic Gallbladder Drainage)
経皮経肝胆嚢ドレナージと呼ばれるこの処置は、急性胆嚢炎や胆嚢の感染症に対処するために行われる低侵襲手技です。

PTGBDとは?
PTGBDは、皮膚(経皮)を通して肝臓(経肝)を介し、胆嚢内にチューブ(カテーテル)を挿入して胆汁や膿を外部に排出する処置です。
主に急性胆嚢炎の緊急対応として、手術がすぐにできない場合や手術リスクが高い患者に対して行われます。

適応症
PTGBDが行われる主なケース
急性胆嚢炎(Grade II, IIIなど重症の場合)
抗生剤治療だけでは改善しない場合。
膿が溜まっている(膿性胆嚢炎)場合。
手術が困難な患者
高齢者、全身状態が悪い患者、重篤な合併症(心肺機能低下など)がある患者。
術前管理
胆嚢摘出術(胆嚢を切除する手術)前に感染を抑えるための一時的処置。

手技の流れ
・超音波やCTを用いて胆嚢を特定し、局所麻酔を行います。
・皮膚に針を刺し、肝臓を通過して胆嚢にアクセスします。
・ガイドワイヤーを使用してカテーテルを胆嚢内に入れます。
・胆嚢内の膿や胆汁を外部のバッグに排出します。
・カテーテルは通常数日から1~2週間留置します。


メリット
⭐︎低侵襲
開腹手術を避けることが可能。
局所麻酔で行えるため、全身麻酔がリスクとなる患者にも適用可能です。
⭐︎即効
胆嚢の圧力を低下させ、感染症状を迅速に改善できます。

デメリットと合併症
 ・感染
 ドレナージカテーテルを介した感染リスクが
   ある。
 ・出血
 肝臓を通過するため、出血の可能性。
 ・胆汁漏れ
      カテーテル周囲から胆汁が漏れることがあ
      る。
 ・再発の可能性がある
       ドレナージは一時的な措置であり、根本治
       療にはなりません。


PTGBA (Percutaneous Transhepatic Gallbladder Aspiration)
経皮経肝胆嚢吸引術は、胆嚢炎や胆嚢内の異常な胆汁や膿を一時的に除去するために行われる処置です。

PTGBAとは?
PTGBAは、皮膚(経皮)を通して肝臓を経由し(経肝)、胆嚢内に針を刺して内容物(膿や胆汁)を吸引する処置です。
主に急性胆嚢炎や膿性胆嚢炎の緊急対応として使用されます。
一時的な症状の緩和を目的としており、治療の第一段階や手術前の準備として行われることが多いです。

適応症
PTGBAが適用される主なケース
急性胆嚢炎(軽度~中等度の場合):
抗生剤治療で十分な効果が得られない場合。
重症化する前の迅速な対応が必要な場合。
手術が困難な患者
高齢者や重篤な合併症を抱える患者。
一時的に全身状態を改善し、後日手術を行う場合。
ドレナージが不要な場合
短期間の症状緩和のみが目的の場合。
PTGBD(カテーテルを留置する処置)の代替として利用されることがあります。

手技の流れ
 ・超音波やCTを使用して胆嚢の位置を確認
      します
 ・胆嚢の膨張具合や内容物の状態を評価
 ・局所麻酔を行います
 ・皮膚から肝臓を通過して胆嚢に針を穿刺し
      ます。
 ・内容物を吸引して外部に排出します。
 ・吸引後に針を抜去します。
 ・状態が安定しているか確認します

メリット
☆低侵襲
開腹手術や全身麻酔を避けられる。
患者の負担が比較的小さい。

☆迅速な症状緩和
胆嚢の圧力を軽減し、炎症を抑える。
手技が単純ですぐに処置できる
TGBDと比較して手技が簡単で短時間で終了。

デメリットとリスク
☆一時的な効果のみ
吸引のみのため、再発や根本治療にはつながらない。

☆感染のリスク
処置部位の感染や胆嚢内の感染が広がる可能性。

☆内容物の不完全排出
残存した膿や胆汁が再び症状を引き起こす可能性。

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