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お母さんになりたかった話③

妊娠がわかってから約一ヶ月。
そろそろ紹介状をもって新しい病院に行く頃です。

赤ちゃんの心臓の音、まだ聴けてないんだよ〜と
妹に話しました。すると
「お姉ちゃんに似て のんびり屋さんなんだよ!
のんちゃんって呼ぶ!」と呼び名をつけてくれました。

響きもかわいいし、本当にのんびりゆっくり
大きくなってる気がして、のんちゃんという名前がとても気に入りました。

帰ってきた夫にも早速伝えて、お腹のなかにいる間は、のんちゃんと呼ぶことにしました。


産婦人科へ

小さな個人病院でしたが、若い方からお年寄りまで患者さんがたくさんいました。

紹介状をもって、一人で行きました。
その日の担当は別の病院から来ているお医者さんでした。


何度目かの診察台。
恥ずかしさはもうありませんが、体の中に器具を入れられるのは慣れません。
力を抜いて、深呼吸。


小さな画面に 子宮のなかが映ります。

「あれ… 心臓が動いていれば赤い模様が出る仕組みになってるんだけど、ちょっと出てこないね」

本来は上記画像のように、赤く表示が出るそうです。
でも私が見た画面の中は、白黒のままでした。


「うーん…赤ちゃんの向きとかで見えてない可能性もあるので…。前の病院で心拍の確認はできてましたか?」

「いや、できてないです…」

「そうでしたか。一度院長にも診てもらいましょう。三日後にまた来てください」



心拍が確認できたら、たまごクラブを買って帰ろうと思っていました。

心拍が確認できたら、家族みんなに報告するつもりでした。

心拍が確認できたら、母子手帳をもらえるはずでした。

病院を出て、車に乗り込みました。
体が震えて、思考が停止した状態で、うまく呼吸ができません。


中学生の頃、国語の授業で
「人生万事塞翁が馬」ということわざを習いました

良いこともあれば 良くないことも起こる。
それが人生だ、みたいなことですよね。

その話を聞いてから、良いことが起こるたびに「次、なにか良くないことが起こるんじゃないか」、「今こんなに幸せだけど、その分 不幸が押し寄せてくるんじゃないか」と幸せな状況を素直に受け入れられなくなっていました。

そのまま大人になり、今。
とてつもない不幸が私の目の前に立ちはだかっていると感じました。

25年間、衣食住に困らず、大好きな人たちと過ごせた幸せな日々のツケが、今まわってきたんだ。
とうとうこの日がきてしまった。



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