お母さんになりたかった話⑤
前回は手術日が決まったところまででした。
病院に付き添ってくれた母との帰り道。
「今まで言ってなかったけど、実はママも赤ちゃんひとり、亡くしてるんだ」
かなり驚きました。なぜなら母は、私のことをかなり若いときに産んでいるからです。
「高校のときに妊娠して。ママはずっと赤ちゃんほしかったから産む気でいたんだけど、家族にも友達にも反対されてさ。病院に連れて行かれて手術しなきゃならなかった」
「そのときお父さんが、次、赤ちゃんできたら
産んでもいいって言うんだよ。多分落ち着かせるためにね。」
「すごい辛かったし、正直ヤケクソになってたんだけど(笑) 手術から1ヶ月後にまた妊娠して、それがあなただった。お父さんに『次は産んでもいいって言ったよね?!』って詰め寄って、やっと産めたんだ〜」
母は笑いながら、懐かしそうに話してくれました。
いや〜驚いた。でもそこで、すっと納得した話があるのです。
不思議な夢の話をひとつ
子どもの頃、熱を出すと必ずみる夢がありました。
真っ暗ななか、私は細くて狭い道を
一生懸命、首を伸ばしながら進みます。
妖怪ろくろ首みたいなイメージ。
でも周りにはお祭りの出店のような、魅力的なものがたくさんあって、つい寄り道をしたくなります。
でも急がなきゃ!息ができなくて苦しい。
早く前に進まなきゃ!!
なにかに急かされている気持ちになります。
おそらくそれは、隣にも同じ道が一本あるから。
これは競争なのか、なんなのかわからない。
でもとにかく急いで、前に前に進む。
一番乗りで出口から出なくちゃ!
隣に道があることは確かです。でも競争相手がいない。
不思議な気持ちのまま、ゴール寸前で目が覚めます。
子どもながら夢について推測していて、
『私は双子だったのかな?』という結論に達しました。
でもそんな話は家族から聞いたことがないし、小学校高学年になるとその夢をみることができなくなりました。
母から、手術をしている話を聞いて納得しました。
あの誰もいない道は、その子が通った道なんだな。
その子が無事産まれていたら、私という存在はなかったんだなぁ。
それか、タイミングをちょっとだけ間違えたから一ヶ月後にまた来たのかもしれません。
お騒がせしました(^O^)笑
長年の夢のナゾがとけてスッキリしました。
そして、まわりの反対を押し切ってでも私を
産んでくれた母に感謝しました。
話が逸れましたが。
この日は夫も早退して帰ってきてくれて、
母と一緒に病院で言われたことを伝えました。
「そっかぁ…。辛かったよね。俺も辛い。
残りの時間も、のんちゃんと一緒に楽しく過ごそう…!」
こういうとき、男の人も大変ですよね。
なんて声をかけたらいいのかわからないと思います。
でも私は、悲しい気持ちを共有してくれるだけでありがたく感じました。
我が子のことを大切に思ってくれてさえいれば。
どんまい!次チャンスあるよ!! って
スポーツみたいに気持ちは切り替えられないですから。
ムリに前向きな言葉をかける必要はないと思います。
手術の日は、また母も来てくれることになりました。
残り11日間あります。
お医者さんには、もしかしたら自然に出てきてくれるかもしれないよと言われましたが、
私は1日でも長く一緒にいたいと思いました。
たとえ心臓が動いていなくても。
本当に愛しく感じました。