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お母さんになりたかった話 ⑩
薬の力を借りて、夜にしっかり眠れるようになった私は、次の段階。
「自分の怒りの感情に気づく」練習をはじめました。
流産の話からは少しだけ逸れます。
とはいっても、
我慢強い + 怒ったことがあんまりない。
そんな自分の気持ちに耳を傾けても、
うんともすんとも言いません。
「これくらい平気だよ〜」とニコニコするばかり。
「これくらいのことで怒るなんて心が狭いよ」
「人に優しくするべきだよ」と
頭の中で声が響きます。
「そうだよね!人には優しくしたい!」
その声に返事をして、一件落着。
でもその声は正論を語る自分自身なんですよね。
自分の素直な気持ちよりも、正論を優先してきたので、それが当たり前になっちゃってました。
これをわるいことだとは思っていません。
ただ、今の私、かわいそうだなと思って。
自分の気持ちを自分で無視するなんて。
頭に響く声を無視するように心がけてみました。
「洗い物しなきゃキッチンが汚いなぁ…」
「今疲れてるから、明日でいいや!寝よ!」
「お義母さん、面倒だからデイサービス行きたくないって言ってる。どうにか説得しないと…」
「面倒なら休めばいい!代わりに喫茶店行ったほうが楽しいし美味しい!」
あ〜自分の気持ちの通りに動くとこんなにラクなんだ……😴
そのうち、自分の怒りの感情にも気付きはじめました。
道を塞いで歩く人たち🚶♀️🚶♀️🚶♀️
楽しくおしゃべりしてるから仕方ない。と今までは思ってたけど、
「道を塞ぐ奴が一番キライ!!頭の後ろにも目つけろ!!!!!視野広げろバーカ!!!」
と思うようになりました。あれ?なんか口が悪くなってる。笑
また別の日は、
夕食の準備をしていたのに、夫から「ひとりで飲みにいく」と急な連絡。
どうしても飲みたくなったんだろう。たまにはひとりで飲みに行くくらい いいじゃないか…
でも今までの優しすぎる私とは違う!!!!
「飲みに行くときは事前に連絡ください。こちらも準備などがあるので」と怒りLINE。
このあとケンカしました。笑
しかし飲みには行ってなくて、私の誕生日プレゼントを買いに行ってたというオチ。怒り損。
でも少しずつ、怒れるようになってきたことを実感しました。今まで我慢してたんだなぁ。
何度目かの精神科で、
👨⚕️「怒りというのは、ガスコンロの火を調節するようなものです。
怒りの感情自体を無くすことはできません。ですから、なぜ自分は怒っているんだろう?と怒りの根源を冷静に判断しつつ、火力を調節するのです」
なるほど。火力を調節して、怒りの根源を解決すればスッキリ。わかりました…!
そこから月日は流れ、精神科にも前向きな気持ちで行けるようになりました。
眠剤がないとまだ不安だけれど、眠れることによって体はこんなにも楽になるんだなと。
街で小さな子を見かけても、涙は出なくなりました。妊婦さんを見かけても、恨めしい気持ちは湧いてこなくなりました。
晴れている日は積極的に出かけました。バイクにもたくさん乗って、色んな景色を見ました。
綺麗なものを見聞きするたびに、のんちゃんに話しかけました。
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「夕陽っていうんだよ。綺麗だね」
手術のあとは「失ったもの」「守れなかったもの」として のんちゃんを認識していました。
でもこうして、心が前向きになりつつあると、「私のそばにいてくれてるんだ」と思えるようになりました。それがただの妄想でも。
私が信じたいことを、信じることにしました。
手術から一年後、母が「水子供養しよう」と提案をしてくれて、お世話になっているお寺に行きました。
お坊さんに念仏を唱えられると、改めて私は小さな命を亡くしたんだと実感が湧いて涙が止まりませんでした。
色んな気持ち。
悲しい、寂しい、悔しい。
4年経った今でも「どうして生んであげられなかったんだ」と思います。
答えがないことを考えても仕方ない、というのは私のなかの正論で、それを無視して考えたいだけ考えるようにしています。
泣きたいときには泣く。
いつまでも泣いていたら心配するよね、ごめんねのんちゃん。
でも泣きたいんだ、あなたのことをおもって。
わたしのことも、夫のことも、のんちゃんの誕生を楽しみにしてくれていた家族をおもいながら。
いつかまた会えたらとっても嬉しいけど、たぶん、私はもう妊娠することがこわい。
もうあんなに辛い思いは、できればしたくない。
かなり保守的な考えになっていて、勇気のない自分がイヤになる。
でも、そんな私をどうか、許してほしい。
考えは時間をかけて変わるかもしれない。
前向きになったらまたいつか、頑張るかもしれない。
そのときまで、穏やかに過ごそうと思う。