学生1(大3)

 ここだけの話、正直に言う。俺はモテる。といっても超絶イケメンなわけでも高身長なわけでもない。ま、顔面はそこそこイケてて(※自分調べ)、身長は成人男性平均ってとこかな。ただし学歴はある(地味に重要だぞ?これ。俺の武器の1つ)。そしてもう1つの武器は、、、トーク力。

 最近ハマっているのは、飲み会。なぜかって?そりゃあ女の子と遊べるからに決まっている。掴みは雑学噺とマジック披露、その後丁度いい感じに酔いが回ってきた頃合いで女の子の相談に乗ってあげれば、もう完璧。一気に距離を縮めて耳元で囁いたり手を重ねたり、、、。ワンチャンいけそうな雰囲気にまで持ち込む、まではいくものの、そこで解散。その先には進めない。向こうからお誘いされたら俺の勝ちってことで、そこで試合終了にするのがマイルール。
「この後、一緒にもうちょっと、どうかな、、?」
「ごめん、俺付き合ってる子いるから」
 
 今付き合ってる子は2人目。1学年違いの2歳年下で現在大学2年生の女の子(※俺は浪人組、向こうは現役組)。俺が1人目の子と上手くいってない時期に捨て身の勢いで猛アタックをしてきた子。俺が渋々OKしたという始まり方もあって、俺の言うことを何でも聞いてくれるし尽くしてくれる。ただ少し嫉妬深いところがあって、特に俺が飲み会に顔を出した翌日なんかにはよくすねる。それをなだめるのが、これまた楽しい。
 正直好みの顔ではないが、しっぽを振る子犬のような可愛らしさがあるので付き合っている。大学2年の冬からはじまって、この前1年記念を迎えた。

 付き合ってる子がいるのに他の子と遊んで最低!と思う方もいらっしゃるだろう。ただ、これでも自分的には大切にしているつもりだ。サプライズは欠かさないし、一緒にお出かけもよくするし、会いたいと言われれば夜中でも駆けつける。そう先月なんか20歳の誕生日プレゼントに、ナントカブルーで有名なブランドのネックレスをプレゼントした。
「ありがとう、大切にする!!大好き!!」
なんだかんだ、順調だ。

 今の俺を語る上で避けては通れない話題がある。それは、俺が経験した「恋の痛手」だ。今となってはこんな俺だが、純粋だった頃もあるんだなー、実は。しばし思い出話にお付き合いいただこう。
 
 1年間の浪人生活を経て、無事に大学進学を果たした春、初めての恋人が出来た。彼女は高校の同級生で、学年で1番人気の女の子だった。猛アプローチの末振り向いてもらえたこともあり、誠心誠意、真心を込めて大切に大切に愛を伝え続けた。ピュアもピュアな恋愛で将来結婚すると信じて疑わなかった。しかし、現実はそう上手くいかないものだ。

 付き合って1年が経ったくらいの頃。
<2週間ぶりに会った時の会話にて>
 「この前バイト先の人たちとご飯に行って楽しかった!男の子2人と私とだったんだけど、、、安心して!ただの同期だから!2人とも彼女がいるし何にも起こらないよ~」
 (ん?まあまあ、そういうこともあるのか、、??)
<忙しいから暫くLINE返せないごめん、といわれて既読スルー3日目の夜中>
 ♪~ぱぽぺぱぽぺ
「はい、もしもし。夜中にどした?大丈夫?」
「じつわぁ~、今サークルの飲み会なんだけどぉ~終電逃しちゃってぇ~、、、、今から迎えに来て!!まってるからねぇ~!」
ブチッ。
 (ん???めちゃ酔ってるし、通話切られたし。ていうかLINEはスタンプすら返してこないのに飲み会には行くのか!?)

 さすがに精神的限界を迎えた俺は、友人に相談した。
 なんか最近彼女と どうも上手くいかなくて、、頑張ってはいるけどもしかして頑張り方間違えてるかな、、
その時、彼に言われた一言。お前それただの都合のいい男じゃね??
その一言が?で?ストンと腑に落ちたというか、それによって全ての違和感が解消された。俺、ただの"アッシー君"じゃん、、、。

 それから俺は変わった。真っすぐ純粋に恋をするのが馬鹿らしく思えてきたのだ。すぐさま彼女に別れを告げた。ごめん、もう付き合えない、というと今までの横柄な態度とは一変、泣きに泣いてすがられた。ごめんなさい、考え直して、私は本当に大好きだしこれから先も一緒にいたいと思ってる などなど。やはりどこかで"学年1人気な女の子からOKをもらえた"という引け目を感じていた節があった。だからこそ我儘にも付き合ったし、カッコイイ彼氏でいる努力も続けた。彼女と結ばれる運命を信じて。だがしかし、実際はどうだろうか?あれ程恐れていたものが、まあ俺の「別れる」この一言でこんなにもボロボロに、従順になるものなのか。ちょっと、いやかなり快感。

俺がコケにされる恋愛なんてまっぴらごめんだ。ふん、遊んだっていいじゃないか。それくらいのことでうるさく言ってこない子がちょうどいい。

 昨日は400日記念だった。おうちデートも兼ねてカノジョの下宿先でお祝いした。
「ねえ、今日付き合って何日目でしょうー?」上目遣いで聞いてくる。
「ちゃんと正解できたら ご褒美、あげるよ??」ほう、何をくれるのやら。
「えーっとー、400日くらい?」だが、ここは敢えてはっきり言わない。
くらいじゃないよ、400日だよ。もー、分かってるくせに。今日400日のお祝いしようって会ってるのに、くらいって何!?。プンプン起こって部屋から出て行ってしまった。可愛いなあ。思った通りの反応が返ってくるのでからかい甲斐がある。俺の掌の上で転がされているのにどこまで気付いているのやら。

 虚しくないかって?いいや、都合のいい男に成り下がったときの虚しさ・寂寥たるや。
無駄なプライドは捨てちまえ。

 ただ今でも俺が夢の中で前の彼女と度々デートしていることは秘密だ。なぜだか分からないが、夢に彼女が出てくるのは決まってカノジョと共に夜を過ごしている時なのだ。カノジョを腕に抱きつつ、夢の中で彼女にキスをする。奇妙ではあるが、俺はこの夢のひと時が気に入っている。

 
 そんなこんなで、今日もまたカノジョとじゃれ合って時が過ぎる。

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