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パラレルリンク・ロボット史#1
パラレルリンク・ロボット、またはデルタ・ロボットと呼ばれる産業用ロボットは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(École polytechnique fédérale de Lausanne, 以下EPFL)のレイモンド・クラヴェル教授が1985年にスイスで初めて特許を取得、その後EU、日本、北米など世界の主要国で特許が認められる。
このパラレルリンク・ロボットは、3つの軸が先端のムーバブル・プレートという部品で連結されていて、3つの軸を同時制御することでわずかな軸の移動量で先端を高速に、より長距離に移動させることができる画期的なものである。2007年にこの特許は全て満了し、世界各国のロボットメーカーがロボットラインナップに加える、高速ピッキング・ロボットのスタンダードになった。
しかし、このロボットの開発経緯は、ロボット大国日本では殆ど知られていない。
開発のきっかけになったのは、EPFLから車で1時間弱北東に走ったところにある、小さな町・ブロ(Broc)のランドマークであるメゾン・カイエ(Maison Cailler)、現存するスイス最古のチョコレート工場だ。カイエは、長い間スイスや近隣国でしか流通していなかった、スイス人が愛するチョコレート・ブランドであり、現在はある企業の傘下に入っている。それが、スイス発祥の、世界最大の食品メーカー、ネスレ(Nestle)である。
この、カイエというチョコレートメーカーにはネスレ社のルーツがあり、またパラレルリンク・ロボットのルーツにもなる数奇な運命がある。
<画像引用, スイス特許庁に申請された出願書類, CH672089 A5 >