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のりかな毎日エッセイ250116:推しの子最終回考察③:アイを信じるルビー:暴露劇「15年の嘘」は何故改変されたのか
2025年1月15日、10時54分。
さて。
推しの子最終回考察3回目!ネタバレ注意!
推しの子まだ読んでない人は今すぐ読もう♪
みたいなこと書いてたら、ステマと認められて集英社から、
感謝状とか送られてこないかな~?
推しの子1年分とか?
なんやねんそれ。要らんし。
という冗談はさておき。
のりかなエッセイ2ndシーズン始まっていきなり、推しの子読んでない
人にはわけわかんない話をして大丈夫なのだろうか…?
という不安も置いといて。
昨日の続き!
推しの子最終巻が出るや否や、SNSで大炎上。こんな結末許せない!
じゃあどんな結末ならよかったの?とおととい、昨日と考察してきた結果、
炎上ファンが望んでいた結末は以下の通り、と判明したね。
「「15年の嘘」という劇中劇を通じて、星野アイの謎が仄めかしではなくちゃんと詳細に読者に解明され、またカミキヒカルも断罪され、1巻からの伏線回収が済み、1巻からの復讐劇がきちんと完結する。
結果、復讐の呪縛から解放された星野アクアはその後、ルビーや有馬かな、あかねと末永く幸せに暮らしましたとさ。他の登場人物もそれぞれの苦悩が解消され、全員幸せになりました♪」
しかし実際には、作者はたぶん炎上覚悟で、これとは違う結末を提供した。
それはなぜかな?と考察していきたい。
:
「15年の嘘」という劇中劇は実際には、真実を明らかにする暴露劇では
なく、星野アイが15年前に吐いた嘘を補強する「フェイク劇」になった。
結果、真実によってカミキヒカルを追い詰める武器ではなく、逆に、
「あの劇で描かれた星野アイ像はフェイクだ!」とカミキに弱みを握られる
ものになった。復讐ではなく口封じのために、アクアはカミキを殺さなけれ
ばならなくなる。
星野アイの嘘というのは?
「私の「愛してる」は噓だって思われているけど、本当は、ファンのことだ
って、B小町のメンバーのことだって、アクアやルビーのことだって、カミキくんのことだって愛していたんだよ?」
「だからカミキくんを振ったのも、メンドクサくなったからじゃなく、彼のことを思って、本心に逆らってそうしたんだよ?」
というものだ。
アイはわざわざ、上記のような内容の釈明ビデオを、15年後の子供達に当て
て撮り残していた。それをアクアは、「15年の嘘」のスタッフロール後に
流す決定をする。アイのキャラ像を、
「みんなのことを愛しているがゆえに、優しい嘘を吐いてしまう人」
というポジティブな方向で固定、強化する狙いだろう。
この劇を観た観客は、
「なるほどアイは人を愛せないエゴイストでは無かったんだな」
と信じることだろう。
「15年の嘘」は、アイを擁護し、イメージアップに貢献し、その推しを
増やすような内容の劇になった。
なぜか。
星野アクアが当初考えていた、「復讐のための暴露劇」はそのような
内容では無かったのではないか?と僕は考えている。
:
15年前にアイがファンの一人に刺殺されたとき、アイがファンを裏切って
男と付き合っていたという憶測が流れた。
実際には付き合うどころか、推しの子供まで作っていたわけだけど。
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カミキヒカルは今現在も、星野アイを越える可能性のあるアイドルの卵を、自らの手は汚さずに、間接的に殺し回っている怪物だ。
彼が殺しに関わっていた証拠が一切無い以上、「15年の嘘」という劇で今現在の彼の犯罪を暴き、世間の炎上によってカミキを抹殺するという「復讐」
は果たせない。逆にカミキに名誉棄損で報復されるリスクがある。
星野アイを間接的に殺害した「真犯人」がこの、カミキヒカルだった。
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十巻にしてようやく、アクアは真犯人に辿り着く。
真犯人カミキに対する彼の復讐は、まず「アイがファンを裏切って男と付き
合っていたどころか、隠し子まで居た」という事実の暴露から始まる。
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「ファンに刺殺されたアイには当時隠し子がいた。成長した隠し子は
アクアとルビーというアイドルになった」という情報を週刊誌に流したアクア。
15年も前の、すでに風化した事件に世間の関心を向け直す意図があったの
だろう。とはいえ、かつての「推し」だったアイの名誉を傷つける暴露に、
アクアが躊躇なく踏み込んだことは重要だ。
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アクア(左)とルビー(右)の星野アイ像のずれに注意したい。
推しアイドル・アイを盲目的に信奉していたアクアは、
真犯人を暴く過程で一人の人間としての星野アイを初めて知り、
蒙を啓かれたのかもしれない。
「アイ無限恒久永遠推し」のルビーはそんなアクアの「転向」を許さない。
この時点でアクアが企画した「15年の嘘」は、従って、アイの名誉を傷つけ
る暴露も厭わない内容だったと推測できる。
アイがカミキを捨て、絶望したカミキがファンを唆し、アイを殺害させた。
その劇の目的は、カミキというより、カミキが未だに信奉する神アイドル、
アイの名誉を暴露によって失墜させることにあったのではないか?
この時点でアクアの中にあった、「15年の嘘」の構想は、
「アイを擁護し、イメージアップに貢献し、推しを増やすような内容の劇」
では無かったはずだ。アイの真実、「人間星野アイ」を暴露する劇。
それがカミキヒカルへの復讐だったのではないか。
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1946年、人間宣言。当時の日本人の衝撃は如何ばかりか…
https://www.news-postseven.com/archives/20180907_751777.html?DETAIL
勿論カミキ以外にも、未だにアイを信じているファンはこの、暴露によって傷つけられるだろう。
アイを未だに信奉する妹ルビーとの仲は、最初の暴露の時点で決裂する。
この時点でアクアは、妹ルビーを傷つけようが、アイとカミキに復讐
できればそれでいい、と思っていたのではないか。
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アイの秘密を暴露した兄アクアと、妹ルビーは決裂する。
しかしアクアは、「15年の嘘」公開による更なる暴露を企んでいた。
しかしこの直後、妹ルビーの正体が、天童寺さりなの転生した姿だと
アクアは知ることになる。
ルビーが傷つくことには耐えられるが、暴露によって「さりなちゃん」
が傷つくことには耐えられない。
結果、「15年の嘘」の内容は、「さりなちゃん」やカミキヒカルのような、
アイの信奉者を傷つけないような内容に変更していかざるを得なくなった。
そして最終的にはむしろ、アイのイメージアップを図るような劇に様変わり
してしまった。
「星野アイ」役を演じるのが、妹ルビーこと「さりなちゃん」に決まった時点で、この改変は不可避になったのだと僕は、思っている。
(ここまでで2700字!ここでいったん切るべき?いや続けよう!)
:
「15年の嘘」の内容は、当初の構想から大きく変わった。
重要な転換点は、星野アイ役を、ルビーが演じることに決まったことにあると思っている。ルビーはアイの、
「私のお母さんは私のこと嫌いだからさ」
という台詞につまづく。
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ルビーの中に残る前世の記憶。
「天童寺さりな」だった頃のトラウマがルビーを苦しめる。
このセリフをどうしても言うことができないルビーは苦悩する。
ルビーの苦悩に戸惑うアクアはこの直後、自分が「せんせー」、ゴロー医師
の転生した姿であることを明かしてしまう。
そしてルビーもまた、ゴローが救えなかった元患者、「さりなちゃん」こと
天童寺さりなの生まれ変わりであることを告げる。
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行方不明になった「せんせー」に見つけてもらうために、アイドルになったルビー。
しかし「せんせー」は、転生してずっとそばにいたのだ。
15年の間、星野アイの子供として転生した2人の兄妹は、その素性を互いに
知らずにいた。しかし、星野アイの、
「私のお母さんは私のこと嫌いだからさ」
という台詞につまづいたことがきっかけで、二人はようやく、
「せんせー」と「さりなちゃん」であることに気づく。
そしておそらくこの辺から、「せんせー」こと星野アクアの「推し」は、
「星野アイ」から「星野ルビー」こと「さりなちゃん」に変わっていく。
というかもともと、ゴロー医師の愛の対象は、星野アイというアイドルでは
なく、余命いくばくもない幼い患者、「さりなちゃん」だった。
さりなちゃんを救うことができない代償行為として、ゴロー医師はアイと
いうアイドルを推す。アイを推すことが、さりなちゃんを救うことになる。
そしてさりなちゃんの夢は、いつかアイを越える魅力的なアイドルに
なって、「せんせー」を振り向かせること。
「せんせー」の推しを、アイではなく天童寺さりなに、「推し変」
させること。
でもこの夢はかなわない。
さりなちゃんはアイドルになるどころか、大人の女性になることもできな
い。不治の病で死んでしまう運命だ。
しかし運命は変わってしまう。
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作者はここで、物語の結末を変更するリスクを自覚している。
ツクヨミの言う「悪手」とは、復讐鬼に徹しきれないアクアが劇の内容を
変えたこと、またその変更を許した作者自身に向けられていると思う。
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天童寺さりなが、ゴロー医師を手に入れるためにクリアしなければならない課題は、16歳まで生きること。
星野ルビーに転生することで、その課題は奇跡的にクリアできた。
そしてもう一つは。
アイドルになって、アイを越える最強のアイドルになること。
アイが果たせなかった、東京ドームライブを実現すること。
そうすれば「せんせー」は、アイなんかじゃなく自分のことを好きになってくれるはず。だから、星野アイを越えなければならない。
そのために殺人的なスケジュールをこなしてでも、
「15年の嘘」は成功させなければならない。
なのに。
「私のお母さんは私のこと嫌いだからさ」
という台詞につまづいてしまう。
:
おそらく、余命いくばくもない天童寺さりなのもとから、「お母さん」が離
れていったことがトラウマになっているのだろう。
病気が重くなってから、めったに見舞にきてくれなくなったお母さん。
それでも、「愛してる」と言ってくれた。
あの言葉が噓なはずがない。
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アイドルはファンの欲望する嘘を吐く。「愛してる」という嘘を。
ここで「お母さん」も、さりなのすがる視線に応じて、「愛してる」と言ってくれる。
でもこの時以降、お母さんはお見舞いに来なくなる。
「愛してる」は本心なのか、ファンサービスだったのか?
「母親が娘のことを愛さないはずがない」という信仰にすがって、
「さりなちゃん」は最期の時を耐えた。
でも臨終の際でも、もう母親は会いに来てくれなかった。
自分のことを愛してないんじゃないか?
「愛してる」って言葉は嘘なんじゃないか?
そんなさりなちゃんを可哀そうに思ったのか、ゴロー医師は父親代わりに
なってくれたけど…。でも女としては見てくれないだろう。
ゴロー医師が女として推しているのは魅力的な星野アイだ。
しかし奇跡的に、天童寺さりなは星野アイの娘、星野ルビーとして転生
する。アイの血を継いだルックスと才能で、アイを越えるアイドルになる
ことも夢ではないかもしれない。頑張れば「せんせー」を手に入れられる!
それがさりなの夢。さりなの欲望。だから死に物狂いで頑張っている。
ところが壁になるのが、
「母親が娘のことを愛さないはずがない」
という信仰だ。
:
星野アイは果たして、星野ルビーことさりなを愛していたのだろうか。
カミキヒカルや、自身のファンを愛していたのだろうか。
「母親が娘のことを愛さないはずがない」けど、でも天童寺さりなの母親は娘をネグレクトしたのでは?
そして2番目の母親、星野アイも、子育てを放棄していなかった?
赤ん坊の星野ルビーの世話をしていたのは、赤ん坊の星野アクアだった。
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母親にネグレクトされたさりなを哀れに思ったゴロー医師は父親代わりになる。
そしてまた、転生したゴロー医師ことアクアは、アイという母親にネグレクト
されたさりな=ルビーの面倒をみることになる。
その後も子育てを、マネージャーのミヤコさんにほぼ丸投げしているダメ親ぶりを発揮するアイ。「私がちゃんと世話するから!」といってペットの犬を買ってもらったけど、一週間で飽きて、世話は母親任せになる、というパターンに似ている気が…。飽きっぽい人なのかな?
ペットはかわいいけど、でも世話するのはメンドイからやりたくない。
星野アイは欲張りなんだ!自分に正直なんだ!
うーん…。
:
「星野アイの謎」が明らかにならないまま、説明不足のまま「推しの子」は終わってしまった、と怒っている一部のファンは炎上を起こしたけど。
ここまででも大分、星野アイの人物像は見えてきていると思う。
説明不足と言っている人は、自身の読解力不足を疑った方がいいのでは?
(辛辣ー)
それはともかく。
天童寺さりなの母親は、「母親」としての星野アイの欠点を露悪的に表現
するためのキャラだと思う。
もう一人、 少年カミキヒカルを性搾取したショタコン、姫川愛莉という女性
が出てくるけど。これもまた、性愛に関する星野アイの欠点を露悪的に表現
するためのキャラだと思っている。
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姫川愛莉の魔の手から逃れるために、嘘を吐いて愛莉を殺させたカミキは罪の意識に苦しむ。
そのカミキの告白を重いと感じたアイは、カミキと別れる。
捨てられたカミキは絶望し、モンスターになる。
星野アクアは、神アイドル星野アイを間接的に殺した犯人に復讐を誓う。
しかし真犯人カミキヒカルに肉迫するほどに見えてくるのは、姫川愛莉や、
天童寺さりなの母のような女性と、アイの類似性だ。
アイは慈愛に満ちた最強のアイドルだったのか?
それとも、「愛してる」は全部ウソだったのか。
アイを盲目的に信じていたアクアは疑問を持ち始める。
アイのために復讐するだって?アイは果たして、被害者だったのか?
:
「愛してる」という言葉は紛らわしいので、2つに分けよう。
他人を所有したい、手に入れたいという感情を、「エロス的な愛」とする。
他人のために尽くしたい、献身したいという感情を、「アガペー的な愛」としよう。
こうすれば、星野アイに欠けているものを名指しできる。
アイは自分のフォロワーを一人でも多く増やしたいと思うし、子供達をカワイイとも思っている、カミキヒカルを欲しいとも思っている。
でも彼らのために尽くすのは嫌だ。彼らのために、自分を曲げるのも嫌だ。
星野アイは「エロス的な愛」に対する欲求は強いが、「アガペー的な愛」は
持ち合わせていない。
ファンのことを「愛してる」のは本当だ。エロス的な意味で。
ファンを一人でも多く増やしたい。もっと愛されたい。
でもそのための献身として、自己犠牲として、自分が本当に好きな人を
あきらめる気はさらさら無い。だから嘘を吐く。
星野アイが本当に愛してる「推し」はカミキヒカルただ一人だ。
首尾よくカミキヒカルの、【推しの子】を妊娠したアイは、カミキが自身の
トラウマを語り、アイに救いを求めるようになると、面倒になってカミキ
の元を離れる。エロス的には今も愛してるから、別に嘘は吐いてないよね?
アクアやルビーといった子供達のことも愛している、可愛いし。でも子育てなんてしない、それはアイのキャラじゃないし。
アイは他人を所有したいとは思うけど、他人のために貢献することができない。エロスはあるけどアガペーが無い。そのことに苦しんでもいる。
そんな自分を変えたくて、アイドルになってみたり、人を好きになってみたり、子育てをしてみたりした。
そうすれば自然と、愛する気持ちが湧いてくるかもしれない。
ファンのために愛する人をあきらめたり、好きな人の苦しみを共有したり、育児のために寝不足で肌荒れしたり。
でも結局、自分を変えることができなかった。
皆から愛されるけど、その見返りを与える能力が無いという苦しみ。
ファンから愛されるたびに、でも私は皆のことを愛せないんだよ?という
引け目、重荷は増えていく。
「皆の事愛してるって言ってるけど、それは嘘。本当に愛してるのはカミキくんだけ。」
その嘘がバレて、アイは報復を受け、殺される。
前世の記憶を持ったまま、アイは少女ツクヨミに転生する。
ツクヨミは愛に絶望している。
「人は何故、愛を抱く生き物なのだろう」
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:
アイはアガペー的な愛を持てない自分に苦しんでいたのだと思う。
そんな自分を変えようと努力していたのだとは思うけど、でも何万人というファンに一方的に愛されても、その愛を献身で返すのは殆ど不可能だろう。
ファンの怒りを、リョースケ君のナイフを受け止めるくらいのことしか、
できないのだろう。
:
「アイドルの言う「愛してる」は本心なのか、嘘なのか」
「星野アイの言う「愛してる」は本心なのか、嘘なのか」
という謎が明確に解決されることを、一部の読者(読者群B)は期待する。
僕もそれを期待していたし、最初はそういう結末になると予想していた。
↓
のりかな書評01「推しの子」論前篇|のりかな
のりかな書評01'「推しの子」論前篇・補遺|のりかな
「「愛してる」という言葉が本心なら、証拠を見せてみろ!」
とファンに言われたら、アイドルは困ってしまうだろう。
愛の客観的なエビデンスというのは、献身のことだ。アガペーのことだ。
客観的に見れば、アイドルは何も献身してない。見返りを返していない。
愛してると言うだけで、一方的に金銭やフォロワー数を稼いでいるだけだ。
「「愛してる」という言葉が嘘でないなら、証拠を見せてみろ!
俺ら推しファンとキスしろ、セックスしろ!」
それが見返り、献身、エビデンスだ。
でもアイがセックスしたいのは、推しのカミキヒカルだけだ。
その事実に、ファンは嫉妬し、裏切られたと感じる。
アイが「嘘吐き」だという証拠は、エビデンスは、無限に存在する。
「オレは100万もつぎ込んだのに、でも俺とはセックスしないんだろ⁉
カミキとはセックスするんだろ⁉」
カミキヒカルがアイを、特定のアイドルを潰そうと思ったら、付け入る隙は
無限に存在する。
アイドルがファンを愛しているという客観的な証拠など、存在しないの
だから。
だからアイドルは不利なのだ。いつでも炎上のリスクにさらされている。
にもかかわらず。
星野ルビーは、天童寺さりなは、そんな「星野アイ」像を受け入れることが
できない。
アイはそれでも、自分も含め、皆のことを愛していたはずだ。
「愛してる」という言葉は嘘でなかったはずだ。
そしてそれは多分、真実なのだ。
証拠は全く無いけど。
アイドルは何も見返りを、エビデンスを返すことができない以上、ファンが
その愛を信じるかどうか、でしかない。
アイの「愛してる」が本心かどうかは、アイでなく、ファンの側が決める
ことだ。
それを疑うなら、見返りとしてキスを求めようという下心があるなら、アイドルファンになることはできない。
アイドルを推すというのは見返りを求めない献身、アガペーなのだと思う。
しかしドルオタの中には、「これだけ貢いだんだからあわよくば…」と思っ
ている輩もいる。
逆にアイドルの側にも、ファンへの献身をポーズだけでやっている輩もいる
だろう。
星野アイはだから、破滅した。
いや本人的には献身したつもりだったのだけど、自己犠牲の才能が無かったのだ。アイドルに向いてなかったということだろう。
しかし星野アイができないなりに、皆を愛そうと努力していたことを、
ルビーことさりなは信じている。
そのルビーの疑わない心が、ルビーの強さなのだ。
そのルビーの信じる心を、アクアは守ることにした。
ルビーに、アイへの不信を与えたくはない。
アイを疑った途端、ルビーのアイドルとしての強さも消えるだろう。
アイドルとファンは、相互の献身、アガペーだけで成立する世界だ。
そこにエロスが混じってはいけない。
そんな世界が絵空事でなく、本当に存在しているとルビーは信じている。
ママはそういうアイドルだったし、自分もそうなれると信じている。
だから15年の嘘という劇中劇は、アクア自身も信じていない、星野アイ像を
発信することになった。
ルビーことさりなや、さりなのような純真なファンに、そういうアイドルが
フィクションでなく実在すると信じてもらうために。
「アイドルなんて現実にはこんなもんだよ(笑)」というような暴露劇。
そんなものを描いてどうするのか。
推しの子の最終回がそんなものになってどうするのか。
だから推しの子の最終回は、読者群Bが期待したような、安っぽい暴露劇
にはしなかったんだと、僕は思う。
:
星野アイは、愛される能力が天才的だったけど、愛する能力、献身に向かない性格だった。変わろうと努力した、愛そうとしたけど果たせなかった。
アイの献身にはエビデンスが無いけど、ルビーはそんな、「愛そうと努力したこと」に気づいているし、信じている。
それはエビデンスの無い真実だ。
アイの心の中など誰も知りえないのだから。
ひっくり返そうとすればいくらでも可能なので、カミキヒカルが「真実」を暴露すれば、ルビーが闇落ちする可能性はあった。
だからカミキは、というかカミキ的な人間は葬り去らなければならない。
「自分たちの都合のために、快楽のために、エビデンスを根拠に「真実」を
暴露する人間」を。
相互不信を広める人間を。
星野アイの真実が、醜い実態が、ダメ母親ぶりが最終回で暴露されることを期待していた読者群Bは、カミキと共に葬り去られた。
星野アイを信じられないのは、アクア自身も同じだ。
だから彼も死ぬ必要があった。
でもアクアが、「せんせー」が死んでしまったら、ルビーがアイドルを目指す理由、アイを越えるアイドルになる目的が無くなってしまうのだ…。
:
アイドルとファンは献身的な愛だけで成立している、という嘘をガチで信じ
ている、アイを越える最強のアイドル、ルビーが誕生しようとしている。
しかしルビーの欠点は、「せんせー」を一途に愛していることだ。
それが暴露されたら、ファンへの献身的な愛は嘘、ということになる。
だからルビーことさりなの「推し」は、消えなければならない。
でも「せんせー」が死んだら、ルビーはアイドルをやめてしまう…。
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:
「せんせー」を一途に愛しながら、ファンを愛しているという二心、嘘は
許されない。嘘がバレたらルビーことさりなちゃんはアイのように、
ファンに刺されるだろう。それ以前に、自分が嘘を吐いている、矛盾してい
るとルビー自身が気付いた時点で、ルビーの強さ、自分自身を信じる強さは
失われるだろう。
「せんせー」ことアクアを喪ったルビーは、
それでも立ち上がったわけだけど。
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まあね…。こういう意見↑も出るよねえ…。
ルビーは如何にして、喪失から再起したのか。
ルビーの心中は、読者の想像力に委ねられている。
とはいえ僕なりの考察はあるので、それは次回、書こうと思う。
さすがに一万字超えそうなので、今日はここまでにして。
ルビーが再起できた理由、そして再起したルビーはアイを越える、
最強のアイドルになれるのか?
そして、アクアが自死したもう一つの重要な理由について。
ご期待ください♪
:
文字の量が増えるほど、読んでくれる人が減るという危惧はあるのだけど、
必要なことを書こうとすればこれぐらいの分量にはなってしまう…。
なるべく多くの人に読んでもらいたい、「推しの子」のことを理解してほしいと思うけど、僕は無名人なので拡散力が無い。しかも分量多いし。
この考察を良いと思った人は、なのでなるべく多くの人に読んでもらって
広めて下さい!自分で言うのもなんだけど、良い感想が広まれば、良い
作品を作るモチベーションも強まると思うし。炎上コメを気にして、
「登場人物が全員不幸にならない、説明がクドい漫画やドラマ」
ばっかになったらつまらないし…。
というわけで。
次回たぶん最終回!ではでは、また明日♪