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バンコマイシンとテイコプラニンの投与設計の私見を語ってみた。(腎機能評価も合わせて)

バンコマイシン投与設計の私見
初回負荷投与
初回負荷投与は体内の血中濃度を急速に上げることが目的であり腎機能に応じて調整する必要はないです。個人的には薬物動態の式 D(mg)=Vd(L)×Cmax(mg/L=μg/mL)に基づいてやっていることが多いです。分布容積は色んな指標があリます。PATはYasuhara Modelに基づいているので母集団の分布容積は60.7Lと固定されています。→個別化が難しい。個人的には簡便なWinter-1994 Model(0.7×BW)で分布容積を計算しています。分布容積が計算できたらピーク値を30~40μg/mLくらいに設定してちょうどいい塩梅の投与量に設定しています。まとめると初回負荷投与量はD=0.7×BW×30~40で算出しています。例)78kgの患者
D=0.7×78×30~40=1638〜2184→1750mgとしています。*分布容積は体格によって規定されるので肥満体型でも実体重代入でいいです。
維持投与量
やり方としてはA)腎機能を評価し、B)AUC450~500となるようにおおよその必要な1日維持量を計算し、C)PATで微調整して投与量を決定しています。
A)腎機能評価の仕方
個人的には基本はCcrと個別化GFRで評価しています。明らかにCcrの過大評価(高齢でScr<0.6など)が起きていると予測される場合にはシスタチンを用いた腎機能評価で投与設計をしています。緊急性のない高齢者の設計でシスタチンが間に合わなければ過量投与の方が嫌なので、CcrとeGFRどちらか低い方で計算したりします。若年であればそこまで値に乖離はないのでおおよそでやります。この感覚はやってないとわからないと思うので実践あるのみです。
① Cockcroft-Gault式
→最も簡便で使用頻度が高い。式に年齢、体重が含まれているので若年、肥満などあれば過大評価に注意する。(体重が30kgの人と60kgの人で腎機能も2倍は違う。年齢も然り。)前提条件としてCcrの上限は120~130とされています。(GFRとは違い尿細管分泌のクリアランスも含まれるため100以上になる)日本の測定は酵素法なのでScr+0.2をして治験時に使用されたJaffe法に近似するという考え方もあるのですが、日本のCcrの推算式がもともと低く見積もられるように設定されているため+0.2補正をするとさらに低く見積もられてしまう懸念はあります。DOACなどのハイリスク薬の過量投与を懸念する際には考慮しますが、一般薬であれば毎回計算する意義はないと思います。要するに器械的に+0.2をしても意味はなく、リスクとベネフィットを天秤にかける必要があります。

<Cockcroft-Gault式の注意点>
高齢の患者や寝たきりの患者、肥満患者では腎機能を過大評価する場合があるので注意。(25歳以上のCLcrの平均値:CLcr(mL/min)=100-(Age−25)を参照して解離を確認することができる)
高齢者や寝たきりの患者のクレアチニンの補正方法
① Scr≦0.6mg/dLの場合、補正Scrとして0.6を代入
→ラウンドアップ法という。過量投与のリスクを低減することはできると思うが腎機能の過小評価にもなりかねないので過小投与であった場合は速やかに投与量を補正することが大事だと思います。
② Scr≦0.6mg/dLの場合、補正Scrとして男性では0.8、女性0.6を代入
③ Scr<0.6mg/dLの場合は、0.6を代入、0.6≦Scr<0.8mg/dLの場合は実測値、0.8≦Scr≦1.0mg/dLの場合は1.2を代入する
④ CG式で算出したCLcr≧85mL/minの場合は、85mL/minとする

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