STEAM ENGINEリリース記念、木村紘自作自演インタビュー
Photo by Yuuki Oishi
ただのサイドメンのドラマーであるということに忸怩たる思いを持っていました。
インタビュアー(木村紘)
ー今回は大注目のプロジェクトSTEAM ENGINEがファーストアルバムリリース、リリースツアー開催ということでインタビューさせていただきます!ー
木村紘
おかしいなあ。大注目っていうわりにはあなたしかインタビューしてくれないんですか?(一同笑)
まあいいですよ。1番話したいこと言えますしね。
ー大注目というのはまあ社交辞令でして、、
まずはSTEAM ENGINEというプロジェクトの経緯について教えていただけますか?ー
スタートは2021年です。その年僕は1枚目のリーダーアルバムTREESを自主レーベルでリリースしました。ありがたいことにたくさんの方に聴いていただきましたが、それでも僕か参加メンバーのことを前から知っているリスナーにしかなかなか届かない。そこの歯痒さをもとに、僕らを知らない人、もっと言うとJazzを聴いたことない人にも届けるような実験をしたいと思ったんです。さらに言うと、僕の大学時代からの親友に小西遼、角田隆太、の2人がいるんですが、彼らは一楽器奏者を超えて音楽のスタイルやコミュニティーまで作っているのに、僕はただのサイドメンのドラマーであるということに忸怩たる思いを持っていました。もっとトータルで音楽を作りたかった。
ー確かにそこは大きな影響ですね。ー
ありがたいことに1枚目の売り上げの資金も?????万円ありましたしね。そこで1枚目をリリースして半年も立たないうちに新しいメンバーで次のRecordingをしたんです。
様々な実験をした配信シングル
ーそれが2022年に3ヶ月連続でリリースされた配信シングルですね。ー
そうです。この3曲では様々な試みをしました。
1.曲が長すぎないこと
2.イントロの時点で曲のイメージが伝わるアレンジ
3.キャッチーなメロディー
4.1曲ごとに異なるグルーヴ、楽器編成
5.ボップス曲と並んでも寂しく聴こえない音圧
そして最も大事なメンバー選びは、ぶち上げられる4人を呼びました笑
以前から多くのバンドを共にやってきた渡辺翔太(Pf,Key)と古木佳祐(B)。この2人はアコースティック、エレクトリック両方できるところもポイントです。そして別のライブでやってめちゃくちゃ相性がよかった道産子ホーンズ佐瀬悠輔(Tp) 馬場智章(Sax)というメンバーです。あえて使い古されたクインテット編成で新しいことにチャレンジしたい気持ちもありました。
この実験は見事に成功して、ありがたいことにSpotifyのプレイリストのカヴァーに選ばれ、再生数もジャズの曲としてはかなり多くなりました。
ーそこからいきなり2023年のコットンクラブデビューですね。ー
そうなんです。この配信シングルを聴いてくださったコットンクラブの担当の方から連絡がきて初ライブ決まりました。そこから2度目のレコーディング、ライブ、追加公演、3度目のレコーディングを経てここまできました。
古くて非効率でも現代もなお魅力を放つ蒸気機関車
ーSTEAM ENGINEという名前、ロゴマークもこの時決まったそうですね。どのような思いが込められていますか?ー
個人のバンドではなくプロジェクトとして活動したいと思った時にまず思い浮かんだのが1st SingleのタイトルSTEAM ENGINEでした。Jazzが大衆に広く流行した時代は1950-60年代までです。それをあえて今やる意味とはなんなのかと考えた時に、同じような時代に最盛期を迎え1970年代にはほぼ姿を消した蒸気機関車が思い浮かびました。技術としては古くて非効率かもしれないけれど現代でも魅力を放ちファンを生み出し続けている。その力強さに希望を託しました。
ロゴも、5つの楽器が一丸となって突き進むイメージで作りました。
コンセプトはありません。具材全部載せのベスト盤です笑
ーでは今回のアルバムについてコンセプトを聞かせていただけますか?ー
コンセプトはありません。具材全部載せのベスト盤です笑
というのは言い過ぎですけど、近年のアルバムに多いようなアンビエントなイントロダクションから始まって、誰かのスピーチがあって、短いインタールードがあって、、という感じに飽きていたので、1枚目はシンプルに曲を聴いていただこう。と決めました。もちろん曲の流れは熟考しました。次回作以降はもっとコンセプチュアルになるかもしれません。ただ現代の世界のジャズシーンのコンテクストを掴むことは意識しました。
ーコンテクスト?ー
はっきり言って昔は、すぐ文脈とかコンテクストとか言う人をバカにしてました。ただ、最近になってPatrick BartleyのバンドをやったりBen WendelやLakecia Benjaminと共演して、世界最先端のジャズのコミュニティに入るには、演奏技術は当たり前で、歴史を踏まえて言語や文脈を共有している必要があると感じたんです。自由な即興と言ってもその会話に入れないことには始まらない。常に世界の最新の音楽の言語を取り入れていきたいと思っています。
ードラマー木村紘としては何を心掛けましたか?ー
現代の偉大なリーダードラマー達、Mark Guiliana, Louis Cole, Kendrick Scottなどは参考にしましたが、基本的にはライブでもレコーディングでもリーダーでもサイドメンでも同じです。現代のジャズはビートメイキングや、短いリフの繰り返しが曲のキモとなっていることが多いのでドラムリーダーに向いているなと思いました。今回はアコースティック感を重視して曲ごとにドラムのサウンドを大きく変えたりはしていませんが、この先はもっと個々に作り込みたいと思っています。
リスクを排除した社会であえて不確定な世界に飛び込む
ー今回のリリースライブ、ツアーにあたって、配信シングルのために作られたプロジェクトをあえてライブで見るという点はどうお考えですか?ー
今まで語ったことと相反しますが、僕はジャズという音楽の本質はライブにあると思っています。なぜなら音楽が生まれるプロセスそのものがジャズだと思っているからです。音源はその入り口です。
現代社会の文化や娯楽の中でジャズのライブってかなり異質だと思うんです。即興が中心ですから当然毎回演奏は違う、プレイヤーのコンディションによっていい悪いもあるかもしれない。そんなの他のジャンルでは許されない笑 現代では世の中のほとんどの娯楽がそうです。例えばディズニーランドのアトラクションが日によってクオリティが違えばみんな怒る。ただ人間という存在は本来非常に不安定で変わり続けるものですから、見せかけだけ均質を装うのは奇妙だと思うんです。本当は明日死ぬかもしれない、そういう人生のコアが見えなくなってる。そんな中でジャズという営みはリスクを受け入れてそのプロセス自体を見せるものです。そしてその先には人生一度きりの感動に出会えるかもしれない。一見リスクを排除したように社会であえて不確定な世界に飛び込むということはすごく重要なんではないかと思っています。
生のドラムのエネルギーはAIに取って代わられることはない
ー生音の魅力もライブならではですよねー
そこは大きいです。特に僕はドラマーですから、生のドラムのエネルギーはAIに取って代わられることはないと思っています。今回のツアー会場はどこも生音が聴こえる規模ですからぜひそこを体感して欲しいです。
ーありがとうございました、リリースライブ楽しみです!ー
【リリースツアー日程】
10月25日(金)丸の内Cotton Club
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm [2nd.show] open 7:45pm / start 8:30pm
11月20日(水)名古屋 金山Mr Kenny’s
Music Charge 予約¥4500 当日¥5000
18:00Open 19:30Start
11月21日(木)大阪 梅田GALLON
Music Charge 1set ¥3500 2set ¥5000Open 18:30 1st set 19:30 2nd set 20:50
11月22日(金)神戸 100BAN Hall
Music Charge 予約¥4500 当日¥5000
学生¥2500
Open 18:30 Start 19:00
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?