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帰って来た道真ベテルギウスの夜に続編:女の子たちの災難

帰って来た道真ベテルギウスの夜に続編:女の子たちの災難


この編は、「皇帝失脚」の続きです!

ジャンヌダルク

 ジャンヌを話し相手として教育を与えつつ過ごしていた
楓子は、二人目の火炙りの乙女を救出した。気に成っていた
のだ。
高級老人ホームグレーシア・ラインハルトで自立支援用
ロボットスーツナビゲーターとして元料亭の女将安田貴子に
仕えていた彼女は、女将の趣味の影響を受けている。
安田の御婆ちゃまは、彼女に繰り返し語り、関係する時代劇
ドラマを彼女と一緒に観劇していた。女将の存命中最後に観
たのは、人気女優前田敦子主演で設定を若干弄りアイドル
女優前田敦子の役を恋に狂って江戸市中を業火で焼いた犯罪
者では無く恋する男が放火犯として疑われたのを知り彼の命
を救う為に自らが火を点けたとして自首すると言う健気な話
に成っている。
一番感涙物の挿話は『奉行が取り調べでお七、お主まだ十六
じゃろう』と問いかけると『この正月で十七に成りました。
存分にお仕置きを願います』と答えると言う箇所だ。
この箇所は、従来のシナリオ通りだ。意味が良く分からない
とお思いの人が居ると思いますが、現在に置き換えると
少年法の問題なのだ。数えの十六才は死刑に当時成らなかっ
たのだ。奉行は、十七歳に成っていたと知っていたが態と命
を助ける為に図ったのだが、彼女は自身が死ぬことで恋を
貫いたのだ。

八百屋お七

 楓子は、ジャンヌと戦艦ゆうなぎに搭載して置いたお気に
入りのそのドラマを見た。

 「哀しい話ね。彼女を助けるのですね。私も協力しますわ

 「有難う。でも貴女は、この国のこの時代では、目立ち過
ぎるは、ここでヨーロッパ人が居ると最悪怪物扱いされてし
まいます」

鈴ヶ森でお七は、張り付け柱に縛られ足元に柴の束を置かれ
た。処刑の口上が読み上げられた後、火が点けられ煙が激し
く出だした。油を掛けて早めに殺せば良いと思われる方も居
ると思いますが、火炙りの刑は焼き殺すのでは無く、煙に巻
かれ窒息死させる刑罰らしい。皮膚が焼けだす前に既に気絶
するか窒息死するのだ。生きたままで意識を保ったままで焼
き殺される様な残虐極まりない刑罰では無いらしい。
しかしながら、見物客にとっては衝撃的な映像だ。
煙でお七の顔が見えない位に成った。楓子が無害な増煙剤を
加えたのだ。光学迷彩で近づき、お七に酸素マスクを着け、
身代わりの人形と交代に七を刑場より連れ出した。

 「ここが、地獄ですか、鬼さん」

ジャンヌに向かって声を出した。

 「私も火炙りより救われた者です」

ヨーロッパ女性で勇ましい姿が似合うジャンヌは、鬼と思わ
れても仕方が無いが敬虔なキリスト教徒である彼女は、地獄
の悪魔と同じ意味の鬼と呼ばれたので不快だった。
彼女はお七を尋問した。閻魔の役までやったのだ。お七は、
従来の解釈通り、寺小姓に再び逢う為凶行を犯したのだ。
救った命だ。ゆうなぎのクルーとして現代的な学習に努め、
未来へ進むのだ。

アンネフランク

 楓子には、もう一人救いたい少女が居た。アンネ・フラン
クだ。彼女はガス室で殺されたのでは無い、劣悪な環境で
衰弱死したのだ。衰弱した彼女を死体置き場から石鹸に加工
される前にそう遺体の皮下脂肪を搾り取り石鹸に絶滅収容所
では行われていたと言う悪魔でもそこまで恐ろしい事は出来
ないと思えるのにナチはやってしまったのだ。
彼女の衰弱しきった身体をゆうなぎに積み込んだ生体治療
カプセルに横たえ治療した。危ない処だったが、助かった。
彼女は運が悪かった。もう少し潜伏が成功して居たら、
ノルマンディー上陸からナチス政権が崩壊していたのだ。
彼女を含め、彼女の家族は、父親以外戦後を迎える事が無
かった。彼女の日記は、スリーパターンが今では存在する。
彼女たちを匿った父親の会社の女性が彼女たちが連れ去られ
る前、事前に渡されていた日記を読んで是非世の中に出さね
ばと考えた初版本、生き残った父親が、彼女の性の芽生えが
記述してある部分等、父親として考慮して編集した版、
後の世に最後の記述まで記述し彼女自身が清書した日記が
発見された完全版である。
気が付き元気を回復したアンネにスリーパターンを楓子が見
せた。

 「あら、お父さんたら、娘が男の子を気に成ると書いて
ある部分は駄目なのね」

 「駄目よ。貴女は死んだ事に成っているから、お父さんに
逢いに行くことは禁止します」

 三人の乙女にその日が来た。天に眩く輝く火球が現れたの
だ。楓子の言った事が正しいと再認識した。
ペテルギウスが超新星を起こしたのだ。これから、楓子の
ようなアーティフィカル・ジャッジAJが開発され宇宙時代
の幕開けを迎えるのだ。ジャンヌ・七・アンヌは、ワクワク
した。自分たちの命まで救って貰った宇宙の神秘ブラック
ホールを楓子が、ゆうなぎで通過した為に過去の事実を変更
した事は理解したが、自分たちが生きている人間として自由
に活動しては駄目と言う事は理解できなかった。
三人の乙女はそれぞれ生きていた時代では過度に活発な
お嬢さんたちである。しかしながら、楓子への恩義から大人
しくしていた。
彼女たちが、オリオン号出発前に自由気ままに活動すると
タイムパラドックスが発生し語り部にも描き尽くせない事態
が発生するのは必須である。

 宇宙に人類が進出して行き、直接民主制の太陽系連邦が、
発足し、連邦の重税感からタックスヘイブンを宇宙に求めた
宇宙貴族たちが帝国を作った。帝国が発足するより数年前に
は、道真たちが超巨大宇宙観測船オリオン号で太陽系の外に
出発していた。
オリオン号に搭乗した楓子がブラックホールに突入した事で
彼女は過去の地球に迷い込み、三人の乙女を宇宙戦艦ゆうな
ぎにクルーとして迎えたのだ。
第一次宇宙紛争が連邦の勝利で終わった直後、正確には、
楓子がブラックホールに突入した直後の時間である。
楓子は、AJアーティフィカル・ジャッジ協議会に接触し
た。流石の英知を極めたAJも暫く混乱したが、楓子の意識
は、従来通り統合化され、ブラックホールの経験と過去に
タイムスリップした事で得られた歴史的知見はクラウド・
サバーに収められた。
三人の乙女達は、連邦市民として新しいIDを与えられた。
乙女達は、連邦直轄地イスラエルとパレスチナ境界にある
連邦発足直前に日本自衛隊が国連軍として管理する事に成っ
た宗教紛争の発生地を観光した。
アンネは、『嘆きの壁』に手を当て自らの民族の迫害の歴史
に涙した。
ジャンヌは、『聖墳墓教会』でマリア様に祈りを捧げた。
七は、歴史教育を受け一神教に関するトラブルを理解して
いるが二人の命に係わっている感慨に比べて何も感じ無かっ
たが、アンネに連れられてイタリアはジュリエットの像の
前で号泣した。彼女たちは、長い長い時の果て自由を謳歌
できた。

編末

続きは、「帰って来た道真」に成ります!
目次は、「帰って来た道真ペテルギウスの夜続編」
小編へのリンクを張っています!

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