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サイバー探偵ウラヌス:轢き逃げ

サイバー探偵ウラヌス:轢き逃げ


 新青梅街道で轢き逃げ事件が発生した。単なる交通事犯で
は無い悪質だ。何故悪質かと霊園脇の斎場に集う会葬者の列
にトラックが突っ込んだのだ。
会葬者が犠牲者に成ったのだ。容疑者はタクシーを強奪して
逃げた。事故では無い事件だ。捜査本部が立てられた。
タクシーは直ぐ乗り捨てられホシの姿は見あたらない。
覆面パトカーで佐久間警部と又三郎はウラヌスの指示に従い
移動していた。

 「警部、ウラヌスは川崎方面に向かえと指示していますが
変ですねえ・・浦西さんの事件が終わったから手を抜いて
るんじゃ」

覆面パトを多摩川沿いに下流に向かって進めながら言った。

 「又三郎、ウラヌスは俺に言ったんだ。・・・轢き逃げ犯
より悪い奴がいるとそれを確保しに行くんだよ。
轢き逃げ犯の顔写真と立ち寄り先は捜査本部長の斉藤警視に
俺の名前で既にウラヌスが送っているから逮捕は時間の
問題だ・・・そうだ君は気付いて無いかもしれないが、
ウラヌスは音声でやり取り出来るんだ。今の会話も彼に聞か
れている筈だよ」

得意そうに警部が喋った。

 「ウラヌス、どうなんだ」

カーナビに対して又三郎が聞いた。

 「又三郎様、失礼しました。警部にお知らせしたので了解
して頂いていると思っていました」

カーナビが喋った。警部は驚いたが、顔に出さないように務
めた。
又三郎は自身のパソコン・スマホだけで無くカーナビにも
ダウンロードを試み成功させたのだ。
ちなみにアンドロイドやWindowsMobailを使用
している機種はアプリのダウンロード可能な物もあるのだ。
既に川崎市域に入っている。又三郎が聞いた。

 「悪い奴とは、どんな奴ですか」

敬語で聞いたが、ウラヌスが答えた。

 「違法薬物売人組織のボスです。轢き逃げは、奴らによっ
て意図的に作られた事件です。もっと大きな事件が裏に
存在します」

何だか、惑惑した。刑事になって始めての大事件に遭遇した
感があった。

 「神奈川県警と麻取の動きは、どう成っているんだ」

 「私の掌握している所、まだ動いていません。警察庁には
FBIからカルロス・フランシスコ・リベラに対する照会状
が届いている筈ですが現場まで届いて無い模様です」

 「我々は、どうすれば良いんだ」

 「至極普通に怪しい外国人に対して職務質問すれば良い訳
です・・・彼には、FBIから照会状が来ていますが逮捕状
ではありません・・・日本で法律に抵触する物を所持してい
る可能性がある筈ですから、ボディーチェックか身辺を
探索すれば出て来る筈です」

車は、川崎貨物港に到着した。

 「車のエンジンを切らずにそこの倉庫の通用口前に止めて
下さい・・二人ともスマホにレシーバーを付けて私と交信
出来るようにして下さい。
念のため、拳銃を用意していますね。車のキーは掛けないで
下さい。私に考えがあります」

二人は素直に従った。一寸考えれば信頼を寄せるのが、
早すぎる気がするのだが。

 「直ぐ踏み込んでOKです。奴は、ここに居ます。
顔写真は確認していますね。恐らく、この中では変装はして
無い筈です」

直ぐ見つけた。

 「ミスターリベラですか、警察です」

声を又三郎が掛けた。カルロスは慌てた。予期せぬ訪問だっ
た。彼は出口に向かって走った走った。
出口にエンジンを掛けたままの車が有った。間抜けな警官め
と思ったのかドアに手を掛けた。直ぐ開いた。
乗り込みエンジンを吹かし逃げようとした。
ステアリングハンドルが動か無い。ロックが掛かっている。

 「警部、カルロスは私が確保しました。彼の使用していた
パソコンをチェックして下さい。
インターネットにネット接続可能なら、私をダウンロードし
て下さい」

 「又三郎さん。カルロスの荷物のチェックお願いします。
携帯やスマホを持っていたら、私をダウンロードして
下さい。カルロスは、混乱していますが、
大人しくして居ます」

カルロスのパソコンから轢き逃げ犯に覚醒剤を売った証拠が
出て来た。カルロスは大人しく縛に付いた。
又三郎と後部座席に収まり、警部が運転し国分寺署まで連行
した。
既に轢き逃げ犯は捕まっている。彼の尿から覚醒剤反応が
検出され、カルロスから購入してラリッて葬送の列に突っ込
み会葬者を葬儀の主役に変えた事を認めた。
カルロスは、小売りを行う売り手では無い、輸入に関わる
エージェントだ。たまたま、売り子の轢き逃げ犯が間違えて
大量に使用し錯乱の為、件の大事件を起こしたのだ。
カルロスは、轢き逃げ犯が事件を起こしたので日本から、
一時撤退を実行しようとした矢先、ウラヌスに足を掴まれ
たのだ。ウラヌスが起動したのは彼にとって最大の不幸
だった。
彼の輸入は巧妙だった。決済はビットコインを使い足が着か
無い。輸入した物は、マーブルつまり大理石の石材だ。
過去に彫刻物の内側に薬物を忍ばせる手口が横行したが、
大胆にも大量の薬物を輸入する為に巨大な重量物の中に隠し
たのだ。
メキシコのエージェントだからコカインを主力薬物にして
いると思われるが、日本では覚醒剤なのだ。日本では、
覚醒剤が全世界で一番高値取引されるからだ。

編末

このサイバー探偵ウラヌス世界は、楽天的長編小説『
ベテルギウスの夜に』
のスピンオフ作品です!

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