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先生のいう乳生産マシーンの意味

乳牛の研究をされている先生が、乳牛のことを乳生産マシーンと表現されていて、結構衝撃を受けました。たしかに十分納得はできるのですが。

納得の理由は乳牛のライフサイクルにあります。



まず生まれてから12か月間。この期間は哺乳、育成期間。
分娩後すぐ、母牛は初乳と呼ばれる乳を泌乳するので、赤ちゃんウシはこの乳を摂取する。
なぜ初めの乳にだけ「初乳」という名前がついているかというと、とてもとてもスペシャルな乳だから!

スペシャルな要素①・・・常乳(一般の乳)と比べて成分の割合が全然違う!特に免疫グロブリンがめちゃ多い!免疫グロブリンの働きは、新生動物の一時的な疾病&感染の防止。
牛はヒトと違って、免疫グロブリンが胎盤を介して胎児に移行しないんです。だから乳を介して子に移行させるしかない。

ちなみに乳中に一番多く含まれているタンパク質のカゼイン(カゼインの凝固物がチーズです!)も普通の乳に比べると多い。カゼインって通常ミセルを形成していて、ミセルの維持にはミネラルが必要なので、必然的にミネラルの量も多くなる。

スペシャルな要素②・・・初乳の摂取にはリミットがあるから!
初乳中に含まれる抗体分子(巨大な分子)が牛の赤ちゃんに吸収してもらえる時間には限りがある。そのリミット、なんと6時間。寝ている間に赤ちゃんが生まれてしまって初乳を飲ませられなかった、というのは通用しないってことですね。
リミットの訳は、牛の赤ちゃんが何でもかんでも吸収してしまって、赤ちゃんの体内に異物が侵入してしまっては危険だから。

こうしたスペシャルな「初乳」を摂取した赤ちゃん牛は2,3日後から固形飼料を食べ始める。というのも胃のトレーニングのため。硬めの試料を早くから与えることで、栄養摂取源を乳から飼料や乾草に移行しやすくするんです。


生まれて13か月たったころ、なんと1歳1か月でもう交配を開始します。遅くとも15か月までに受胎することが目標とされています。は、早すぎる。。。!
赤ちゃんが生まれるまでには約280日かかる。(人間と同じくらい!)つまり2歳になるまでに分娩を迎える。
さすが、品種改良の成果。

そして分娩後はホルスタインの本命の役目、泌乳です。さらに、、、分娩後、泌乳を継続しながら結構すぐに人工授精です。(1年1産の場合3か月後くらい)(ちなみにウシは人工授精100%です!)
1年1産の場合、365日中、305日搾乳、60日乾乳(搾乳しないということ)。前回も書いたけど、1日1頭当たり平均30 kgも搾乳するんです。



ホルスタイン、すごくすごく働き者です。




こんな感じのサイクルがだいたい3,4年繰り返されます。ホルスタインの出産は約3.4産。これを平均除籍産次っていうのですが、実はこれが年々低下しています。
つまり、、、ホルスタインの現役期間がどんどん短くなっているということ。
科学的研究が進んでいるのに…?


こうした背景にはやはり人材不足があります。


まず、ホルスタイン自身は品種改良によって生産できる乳の量が増えているのにも関わらず、日本全体での乳生産量は少しずつ減っています。

それがどうしてか。

後継者不足によって酪農家が減少する。

酪農家を引退する人が飼っていた牛がほかの酪農家のもとへ移籍する。

酪農家一人でお世話する牛の数が増える。


なかなか手が回らず、病気(乳房炎など)になりやすかったり、最悪の場合、死亡してしまったりする。これは上の方に書いた、初乳の与える時間を守れない、気候変動に応じた暑さ寒さ対策の不備、などが原因だったりする。


こうした流れによって、全体乳量は低下してしまうんです。




今はまだこうした課題を知って、その原因を少し理解しただけで、実際に現場も見ていないし、直接酪農家さんに話を聞いたわけでもない。実習くらいでは理論の理解のためであって、決してその苦労は分かるはずないと思う。きっと授業で習うこととは正反対のことすらあると思う。


だから学んだことを改めて文章にすることしかできないけれど、できるだけ早いうちに、自分の目で現場を見て、話を直接聞いて、そのうえで「乳生産マシーン」への違和感を言葉にしてみます。


ぜひまた読んでね!

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