1人から、そこからだね。【創作絵本ストーリー⑤】
ぼくはみんなと仲良くできる。
友達がたくさんいる。
今、ぼくは小学2年生。
学校のみんなと仲良くして毎日いろんなみんなと遊んでる。
このあいだ
『ねぇ、ゆうとくん。今度いっしょに遊ぼうよ。みんなで遊ぶのも楽しいけど、たまには2人でお話したり遊んだりしたいな』
って話しかけられた。
でもぼくは
『そうだね。でも、ぼくみんなと遊ぶほうが楽しいから、またこんどみんなで遊ぼうね!』
そう答えた。
でも、あるとき、1人の子に言われた。
『ねぇ、君は、ぼくのこと知ってる?名前とか、ぼくの好きなものやいろんなこと』
え?えーと…
そう言えば、この子は確か。トオルくん。
なに、トオルくんだっけ?
上の名前が浮かんでこないや。
トオルくんは何が好きだったかな?
どんな遊びが得意だったかな?
ぼくは考えてた。するとトオルくんが言った。
『出てこないんだね。ゆうとくん!君はかけっこが得意で、友達とは鬼ごっこやサッカーとかして遊ぶよね』
ぼくは、少しおどろいた。
トオルくん、すごいな!ぼくのことちゃんと分かってくれてる。
するとトオルくんが
『ゆうとくん。ゆうとくんは誰とでも仲良くなれてたくさんの友達がいるよね。でも、気づいてる?たくさん友達がいてもゆうとくんはみんなのことちゃんと知らないんだよ。名前も、得意なことも好きなものも。』
ぼくは、はっとした。
(そう言えば、ぼくがはっきりちゃんと言える子って、よしきくん、しょうくん、この2人だ)
ぼくは、みんなと仲良し、みんな友達、誰とでもすぐ仲良くなれるからぼくは1番友達が多いんだ!って自分で思ってた。
だけど…
それって本当の友達?
みんなのことよく知らない。
なのに、ぼくはなんでも知ってるように思ってた。
ぜんぶのみんなと毎日遊んでるわけでもない、話してるわけでもない。なのにぼくは…
そんなぼくにトオルくんは
『ゆうとくん、ぼくはもうすぐ転校するんだ。もっとゆうとくんと話したり、遊びたかったな。ほかのみんなもそう思ってるよ。ゆうとくんはいい子なんだよ。だから、ゆうとくんのまわりにみんなが集まってくるんだよ。ゆうとくんは、みんなのことをみんなとして見てる。1人ずつじゃないんだよ。だから、名前もはっきり言えなかったり、得意なことも分からなかったり。だから、みんな少しさびしい気持ちになるんだよ』
ぼくはトオルくんの言葉で気づいた。
ホントだ。ぼくはみんなのことちゃんと知らないかも。
みーんな友達。それでいいって思ってた。
みんなじゃないんだよね、みんな1人1人なんだよね。
ごめんね、みんな。ごめんね、トオルくん。
みんなはぼくのこと大事に思って、ぼくのことちゃんと分かってくれてる。
ぼくはそれができてなかったんだ。
1人から、1人ずつ、大事に。
ぼくはそこからなんだね。
たった1人になったとしてもそこから、1人から大事にしないといけないんだ。
だって、最初は友達は1人からだったんだもんね。
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