小さな神様
ぼくは小学3年の男の子。
名前は「しん」
『ママ、ただいま!』
『お帰りなさい。しんちゃん、手洗いうがい忘れないでね』
『はーい』
『ん?排水口の入り口に何かいる?』
『よう!小僧』
『うわ!』
ジャー!!……
ぼくはあわてて蛇口をひねった。
『おい、やめろ!おい~』
やっぱりなにかいた!流れちゃったかな?…
そっとのぞきこんでみた。
『小僧!あぶないだろ!』
『うわ!』『ん?つの?鬼?』
小さい!親指くらいだ。
『俺は鬼じゃない!これは、つのじゃなくてアンテナだ!』
『アンテナ?』『鬼じゃないんなら何?アンテナって何?』
『おれは神様!アンテナは、おれが住んでる神社に、お参りに来た人達の願い事をキャッチするためだ!』
『そうなの?すごい!』
『しんちゃん?どうしたの?』
ママに見つからないようにぼくの部屋へいそいだ。
『おまえ、しんって言うんだろ?友達とうまく遊べない』
『なんでぼくの名前を?』
『おれの神社の前を通って学校行ってるだろ。おまえの願い叶えてやるよ』
『願い?』
…(あ!あの時!)…
ぼくは友達とうまく遊べない。だから、友達と、もっと仲良くなって遊べますようにってお願いしたんだ!!
『叶えてくれるの?』
『あぁ。お前がやらないといけない事があるけどな』
『どんなこと?』
『まずは、「ありがとう」を言え。何かしてもらったら必ず、なんでもありがとうって言うんだ。』
『うーん…』
『お前「ありがとう」も言えないのか?何かしてもらったら「ありがとう」これ大事だぞ。言えるな?明日からできるな?』
『うん…分かった』
『おはよう!』『おはよう!』
…(あっ!どうしよう!…ふでばこ、ふでばこ忘れた!!)
(前の席のみくちゃんには…言いにくいなぁ…
どうしよう…となりの席のともきくん!ともきくんなら、いつもニコニコ笑ってて優しい。)
『と、ともきくん』
『なに?』
『ふでばこわすれちゃって…』
『いいよ。えんぴつ、かしたげる』
(ありがとう)…言えなかった…心の中でしか言えなかった…
どんどん時間がすぎてく、どうしよう…
『はーい、今日もみんな楽しく過ごせた?帰り道、気をつけて。また明日も元気で会いましょう!』
(どうしよう、終わっちゃった。えんぴつ、えんぴつ返さなきゃ)
(それと、ありがとう、を、ちゃんと言わなきゃ!…)
『と、ともきくん!これ…』
『えんぴつ。ありがとう』
『うん、いいよ!』
やっと、言えた…
よし!帰ろ!
ガシャン!!
教科書がランドセルから落ちた。ちゃんと、しめてなかったんだ。
『はい』
みくちゃんが拾ってくれた。
ぼくは
『ありがと』
と小さな声で言って教科書をさっとうけとった。
『なんで怒ってるの?』
『え?おこってなんかない…ょ』
『なんか、ふてくされて言ってるように聞こえた』
(そんなふうに言ってないのに…)
『ただいま…』
『お帰り!しん!どうだった?ありがとう言えたか?』
『ともきくんには、言えた。みくちゃんにも言ったけど、みくちゃんに怒ってるの?って言われた』
『しん、笑って言ったか?』
『え?だって、おにちゃん笑えって言わなかったよ』
『おにちゃんじゃない!おれは!…まぁいい。しん、お前は本当のありがとうが言えてないんだ。これからは笑って笑顔で「ありがとう」って言ってみろ。ありがとう、と笑顔だ。これは大切なことだ』
『うん…わかった…』
次の日。
『おはよう!しんちゃん!』
ともきくんだ。
おにちゃんに言われたように!
『おはよう!ともきくん、きのうはありがとう!』
と、ぼくはニッコリ笑って言った。
すると、ともきくんが
『いいよ、しんちゃん。しんちゃん笑顔すてきだね!』
って言って笑ってくれた。
だからぼくもまた笑顔になった。
コロコロ➰➰
『あ!消しゴムが』
『はい』
みくちゃんが拾ってくれた。
ドキドキ…ちゃんと言わなきゃ
『ありがとう!』
ぼくは笑って言った。
すると、みくちゃんもニッコリ笑ってくれた。
それから、ぼくはみんなに笑顔で『ありがとう』って言えるようになった。
ある日ともきくんが
『しんちゃんこんどのお休み遊ぼう!』
って誘ってくれた。
そして、
笑顔でみんなとも遊べるようになった。
『ただいま!おにちゃん!』
『お帰り!しん。お前、毎日楽しそうだな。どうだ?楽しいか?』
『うん!友達とたくさん遊べて楽しいよ!』
『そうか、よかったな。しん、これからも笑顔!忘れるなよ!ありがとうもな!』
次の日の朝、
ぼくが起きたらいつもぼくの布団の上で寝てるおにちゃんがいない。
『おにちゃん?』
ぼくはおにちゃんを探した。
でも、どこにもいない。
そのままおにちゃんは姿を見せなかった。
それから、ぼくは毎日みんなと遊んだりお話ししたり楽しく過ごしていた。
学校の帰り道。
ふと、立ち止まる、、、神社だ。
ぼくはおにちゃんの神社に行ってみた。
ぼくは、笑顔で言った。
『おにちゃん、ぼく、今とっても楽しいよ。ありがとう!おにちゃん!』
すると、優しい風がフワ~っとぼくをつつみこんでくれた。
おしまい
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