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遺言執行者の役割とは?

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
本日は、遺言執行者についてお伝えします。
遺言は書いたけど、これって私が亡くなった後どうなるの?とご心配になられた方はいらっしゃいませんか。せっかく書いた遺言も、どのように実行されるのかご本人にはわかりません。
正しく遺言を実行してもらうために「遺言執行者」を定めておくのが安全です。今回は役割と定め方を中心にお伝えします。


1.遺言執行者の役割

遺言執行者(人)は、故人の最後の意志を法的に実行する責任を担う重要な役割です。この役割には、故人が残した指示に従って資産を管理し、適切に分配することを含みます。しかし、遺言執行者の任務は単に財産の分配以上のものであり、故人の願いを尊重し、何よりも遺族間の平和を維持することが求められます。
執行者には未成年者と破産者以外であれば誰でもなることができます(民法第1009条)ので、家族にお願いすることも可能です。もし弁護士や司法書士あるいは我々行政書士など法律の専門家に依頼すると一定の報酬が必要ですが、重要な役割を果たす場合には検討していただくのもよいでしょう。

2.遺言執行者は必ず選ぶものではない

遺言執行者は故人の遺志の尊重のためですから、選任することは必須ではありません。ただし、以下のケースの場合には選任が義務付けられますので注意しましょう。

①遺言認知(民法第781条2項)
遺言により認知を行うことが出来ますが、相続人間に利害関係が生ずることから遺言執行者の選任が必要とされています。

②推定相続人の遺言による廃除、またはその取消(民法第893条、第894条)相続人による虐待や侮辱がみられる場合、被相続人は遺言にて当該相続人を法定相続人から廃除することができます。(同様に取消も可能です。)その場合も、遺言執行者の選任が義務付けられています。

③一般財団法人の設立

また、義務ではありませんが遺贈を行う場合は、遺言執行者を選任しておくとよいでしょう。遺言執行者が選任されている場合、相続人は相続財産の処分を行うことが出来ません。(民法第1013条1項)また、勝手に処分した行為は無効とされます。そのため、安心して自身の財産の処分を任せることができます。

3.指定の方法

遺言執行者を指定するには次の3つの方法が考えられます。一番安心なのは①ですから、事前に家族間でも話し合っておくとよいでしょう。

①遺言による指定
遺言者が遺言書のなかで遺言執行者を指定する方法です。遺言書に「○○を遺言執行者に指定する」と記載しておくことで、その方が遺言執行者となります。なお、遺言執行者は断ることができますので、突然指名するのではなくあらかじめ家族の中でも話し合っておいて決めるのがよいでしょう。
また、遺言執行者に何かあったときのために、予備的に遺言執行者を定めておくとよいでしょう。例えば、お子さまを執行者にしていたがご病気で、お子さまの方が自分より先に亡くなってしまったというケースでは、執行人が不在となり、改めて家庭裁判所から選任されます。

②第三者による指定
これは、遺言執行者を定めておくのではなく「遺言執行者を定める人」を遺言内に記載しておくことで可能となります。ややこしいですが、数年後に状況が変化していく可能性がある場合には有効となるでしょう。

③家庭裁判所による指定
遺言執行者に関して記載がない場合や、指定された人が断った場合や、遺言執行者に指定されている人が先に死亡してしまった場合などは、家庭裁判所に改めて遺言執行者の選任申立てを行う必要があります。そのために、あらかじめ候補者を決めておきましょう。

4.遺言執行者の仕事と報酬

遺言執行者への就任を承諾したら、直ちに業務を開始しなければなりません。(民法第1007条1項)行うべき業務を以下に一例として記します。
・相続人の調査(戸籍取得、一覧図の作成など)
・相続財産の把握(銀行・証券会社・法務局などで財産調査)
・財産目録の作成
・遺言内容の執行
・完了報告書の作成

これだけの業務をこなす必要がありますので、家族に依頼する場合はくれぐれもよく相談しておくとよいでしょう。生前から取組めることもありますから、事前に取り組んでおくと就任した後で大変な思いをさせなくて済むでしょう。仮にこれらを専門家に依頼するとなると、一定の報酬を支払うことになります。相続財産額に応じて手数料が変化しますが、仮に相続財産額が1億円だとすると、手数料が2~3%あたりのようです。

まとめ

2019年の民法改正により、遺言執行者の権利についても大きく変更がなされました。例えば、遺言者の遺志に反しなければ、遺言執行者は依頼された任務を第三者に再委任することができるようになりました。(民法第1016条1項)また、預貯金の解約・払い戻しについても、遺言執行者が行えるということがはっきりと提示されました。(民法第1014条3項)
遺言執行者に強い権限が認められるようになりましたので、遺言書で適切な遺言執行者を指定しておくことは大切です。相続人との関係性も考慮して選んでおくと、トラブル解消にも大きく役立つでしょう。ただし、いったん引き受けた遺言執行者の職務について、自分には荷が重い、手に余る、とお感じになるようであれば、専門家に相談しましょう。

身近な相談から複雑な手続きまで、お問い合わせはくろさわ行政書士法務事務所まで。無料相談いつでも受け付けております。

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