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愛する人が住み続けられる家~配偶者居住権について~

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
本日は、平成30年の民法改正により新たに規定された配偶者居住権についてお伝えいたします。
配偶者居住権とは、簡単に言うと残された配偶者のために今住んでいる自宅を、大きな負担なくそのまま住めるようにするための権利です。形式やメリット・デメリットについてお伝えしてまいります。


配偶者居住権の定義

民法1028条1項にて次のように規定されています。
「1.被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 一.遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 二.配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。」

ここでポイントとされるのは、遺産分割またや遺贈にて取得させる必要があるということです。単純に相続させる場合と異なり、いずれのケースにおいても、残された配偶者の方は居住権を拒否する選択肢が与えられていることになります。

配偶者居住権設定のメリット

①現在の家に住み続けることができる
一番大きなメリットといえますね。財産処分することもなく、住宅環境を変えずにいられるのは残された家族の負担を軽減することができます。

②財産の取り分は減らない
例えば、相続財産として自宅が3,000万円、預貯金が2,000万円の合計5,000万円あったとします。
配偶者1名、子1名だとすると、それぞれ1/2ずつ、2500万円を相続することになります。
こうなると、配偶者が自宅の所有権を主張する場合は、3,000万円が配偶者のものとなるので預貯金として残された2,000万円には手をつけることができなくなります。預貯金が手に入らなくなると、当面の資金に困ってしまうということもあるでしょう。
そこで、配偶者居住権を設定し、建物の価値を、居住権と所有権に分けることで預貯金も受け取れるようにすることが可能です。

③代償金を支払うリスクが減少する
前述の例でいうと、もし3,000万円の建物を相続で取得することとした場合、法定相続分である2,500万円を超えている部分については代償としてもう一人の相続人(子)へ支払う必要があります。つまり500万円の現金を用意しなければならず、これまた生活へのダメージが考えられます。配偶者居住権を設定することで、代償金を支払わなくて済む可能性があります。

配偶者居住権のデメリット

①居住者は不動産を処分できない
あくまでも居住権なので、財産としての自宅を処分することはできません。売ったり人に貸したりすることも不可能です。また、居住することで生じる必要経費は居住者が負担します。

②固定資産税は所有者が支払う
この場合、居住していない子が税金を支払うという構図になりますので、設定の際にきちんと確認しておかないとトラブルの元となりそうです。

③配偶者の年齢によって配偶者居住権の価値が決まる
配偶者居住権の価値は、権利の存続期間によって決まります。つまり配偶者が若く存続期間(端的に言えば、生命表に基づく平均余命を計算)が長くなる場合は、居住権の価値が高くなるため上記のメリットを十分に受けられないこともあります。

まとめ

配偶者居住権には長期と短期の2つが設定されていて、それぞれ要件が異なります。また、設定するかしないかは決まりがあるわけではないので、選択肢の一つとして考えていただけるとよいかと思います。あくまで簡単にまとめただけで、税制上のメリットがあったり設定によってはいわゆる後継遺言のような形にすることも可能です。詳しくは近くの専門家に相談しましょう。

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