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あなたの遺言、どうやって守りますか?自筆証書遺言保管制度の長所と短所

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
本日は、令和2年に創設された自筆証書遺言保管制度について解説いたします。
当該制度ですが、令和4年にはおよそ16,000件の申請があったそうです。まだまだ浸透しているとは言えない現状ですね。自分で書いた遺言を、わざわざ保管してもらうことの意味がどこにあるのだろうとお考えの方も多いのかもしれません。制度の概要に加えて、メリット・デメリットを中心にお伝えします。


1.制度の概要

民法961条により「十五歳に達したものは、遺言をすることができる」と定められています。よって、保管制度も十五歳以上であれば利用が可能です。
申請先は、遺言者の本籍地または住所地などを管轄する法務局・地方法務局となります。
あらかじめ予約した日時にて遺言者本人が自筆証書遺言を持参し申請します。この際、手数料として収入印紙を3,900円支払うことになりますが、それ以外で経費はかかりません。
簡単に言えば、書いた自筆証書遺言の保管を法務局に依頼するようなイメージでしょうか。

2.制度のメリット・デメリット

・制度概要の比較

遺言の方法として、主に保管制度を利用しない自筆証書遺言と公正証書遺言があります(秘密証書遺言は利用数が少ない)ので、これらを比較対象として簡単に表にまとめてみました。

各制度の概要(参考:法務局)

・3つのポイント

さらに、次の3つのポイントに分けて説明したいと思います。
ポイント①費用
自筆証書遺言は作成するだけであれば無料です。また、公正証書遺言は相続財産価額に応じて手数料が高くなる仕組みとなっています。そのちょうど間にあるようなイメージで、保管を依頼するのに3,900円だけ必要となっています。
ただ、公正証書遺言は遺言者の死亡後50年間は保管してくれますので、仮に必要経費が43,000円(相続財産価額1億円の場合の手数料のみ)だとしても、年換算するとそこまで高くないかもしれないですね。

ポイント②検認手続きの有無
自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いの1つである検認手続きの有無について、保管制度を利用すると不要となります。検認手続きは、申請から受理まで1~2か月かかってしまうことがあり、時間に限りがある相続手続きにおいてネックになることもあるでしょう。

ポイント③通知制度
保管制度を利用すると、相続開始時にあらかじめ設定した通知先である相続人のもとに通知がいきます。自筆証書遺言だと相続手続きを終えた後で遺言が見つかるということもあるかもしれませんが、これであれば確実に遺言の存在がわかるので安心です。

・デメリット

自筆証書遺言と公正証書遺言のいいところどりのような制度ですが、デメリットももちろんあります。よく見極めたうえでご活用されることをお勧めします。

デメリット①必ず本人が手続きに行かなければならない
例えば、足腰を悪くされている高齢者の方や入院されてしまっている場合は、法務局まで直接足を運ぶことが大変でしょう。公証人が出張してくださる場合とは異なります。また、申請時も遺言の中身をすべてスキャンしたり手続きに時間がかかるようです。そのあたりの負担感はあるかもしれません。

デメリット②内容の法的有効性
公正証書遺言であれば、公証人の方に相談やアドバイスを受けることも可能ですが、保管制度はあくまでも自筆証書遺言を保管してもらうことが主ですので内容については言及されません。明らかな形式違反があれば指摘いただけるかもしれませんが、有効性まではわかりません。作成した遺言自体に誤りがあると、あまり意味がないことになってしまいます。

3.まとめ

令和4年度の遺言作成件数に関して、公正証書遺言が約112,000件、自筆証書遺言の検認手続きが約20,000件と、保管制度はこの中では最も利用されていない制度といえそうです。ただ、始まったのが令和2年であるためにまだよく知らなかったり、どういうものか見定めているということもあるでしょう。完璧な制度というのはなかなかありませんから、ご自身の意向に沿うものを選択されることをお勧めいたします。

身近な相談から複雑な手続きまで、お問合せはくろさわ行政書士法務事務所まで。遺言に関する相談は無料でいつでも受け付けております。


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