#珈琲と #シロクマ文芸部
珈琲と...「と」なのである。
小洒落た扉を開き 目指すは奥のすみっコの席。
窓の向こうにはアレ、何とか言う植物が 秋の色に染まり始めていた。
流行りのパンケーキ
もったりとチーズケーキ
小腹が空いたから サンドイッチもいいな
メニューの中の「と...」を探す。
ちらりと見た店内は 疎らに席は埋まり 左向かいの男性と意図せず目が合い視線泳がす。品定めするほど自意識過剰ではないし...
別に「と...」は いらないんじゃない?
そう思いながらも メニューを開いてしまえば探してしまう「と...」
「プレーンパンケーキ...」と「珈琲」
あ、「と...」を探しながら「と...」がメインになった。ひとり苦笑しながらバッグの中からiPhoneを取り出す。そろそろと撫で始めた文字列に吸い込まれそうになった頃
「珈琲でございます」の声に引き戻された。
「珈琲」と「iPhone」
カップに口つけ 「あちっ」とひとりごち
いつもの猫舌ルーティン。
窓の向こうのアノ植物が風に揺れていた。
再び 液晶の中の文字列を撫で始めた。
… … …
いつの間に届いただろう「と...」を横目にゴクリと収める珈琲。iPhoneを手放し フォークとナイフを持ち上げ サクッフワッを味わう至福。バターを塗り塗り 頬張る最中 左向かいの男性と目が合った。
「珈琲」と「プレーンパンケーキ」
最後を嚥下し ひと心地
傾いた陽に 秋の色が進んだような窓の向こう
すっかり冷めた珈琲を飲み干し 手にしたiPhoneが通知に震える。
ひと言 ふた言 文字を交わして 顔を上げた私は多分...ニヤニヤしてた。チャイムを鳴らし 「珈琲をおかわり」プレートを下げられ広くなったテーブルを おしぼりで拭きあげる。
「珈琲でございます」
カップに口つけ「あちっ」とひとりごち。
上げた視線の先にキミの姿があった。左向かいの男性はもう居ない。疎らに空いてた席は 適度に埋まり 私を見つけたキミは慌ただしくも 店の奥のすみっコの席へ向かってくる。
「待たせたね」
「いいえ、私も今着いたのよ」
両手でカップを持ち ニッコリ笑った。
「珈琲」と「キミ」
✣
初見、お題初参加でございます。
よろしくお願い致します。
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