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Photo by
satomigoro
【詩】かつての影
(こわいこわいよるはなみだがとまらない)
ヘリンボーンの床からやおら立ち上がるのはかつてわたしとつながっていた青白い影、絶え間ないつぶやきに耳を傾ける夕暮れ、開け放ったままの窓から鮮やかな朱色が滲んでくる、おまえは夕焼けと混ざり何色になるのだろうか
(わたしをいためつけるたばこのにおい)
17のわたしがおびえていたのは夜ではない、正体をなくしていく、かつてのわたしを構成するたったひとつのもの、夕方を吸い込んでぶくりぶくりと膨れて、なんて不格好で愛らしい過去の失態
(わずらわしいてばなしたいわたしはわたしを)
おまえに名前をつけよう、せっかく生まれたのだから、嘆くからだにそっと指を這わせる、からりとかわいてこれっぽっちもぬれていない、おかしなこともあるもんだねともうどこがかおかもわからないおまえにわらいかけるとわたしは
「電気くらいつけなさい。窓も開いているじゃないか。夜が、入ってくる」
ぱちん、ぴしゃん、かちゃり、夫の手が部屋中に伸びるとラベンダー色の若い影はするするとわたしの足元に帰ってくる、靴下がぐっしょりと濡れている、ひと晩中泣き通したように