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鍼による気胸について

今回は気胸についてです。

まず、仮に自分が鍼治療をしていると仮定し、鍼を刺して医療事故を起こしてしまったと想定してまとめてみたいと思います。なお、モデルケースとなる患者データについては、全日本鍼灸学会雑誌44巻3号より流用させていただきました。


一・患者データ
ニ・鍼治療による左肺気胸
三・症状
四・医師の診断で経過良好
五・注意事項


一.患者データ

60歳女性 主婦 肥満
頚肩腕症候群
鍼23号(0.23mm) 直刺 雀啄
軽度の左肺気胸
入院あり
入院7日間
気胸処置なし(経過観察)

当初、慢性的なコリ感から来院。問診後、初回は手技療法を行う。その時点で、強めの施術を好まれた。また鍼による施術を勧めてみると、次回の来院時にとお約束をいただいた。

二.鍼治療による左肺気胸

鍼による施術の注意事項を説明した上で契約書にご署名をいただき、さっそく鍼治療をすると、鍼への抵抗はなく強刺激も好まれる方であった為、了解を得て雀啄を試みる。その場では一定の改善が見られたと喜んで帰宅される。

帰宅後、しばらくしてから胸部の違和感を感じた為、心配になり他院へ。X線撮影にて、左肺に軽度の気胸有りと診断を受け、経過観察入院。

トリナージ等の処置で脱気は行わず、自然軽快を待つことになり、7日間で退院。

三.症状

退院後、電話にて鍼施術の経過の説明を受ける。当日の症状を伺うと、帰宅してしばらくしてから胸の痛みと咳、呼吸のしづらさを感じたとお話しされたので、前項の過程をたどったとのこと。

四.医師の診断で経過良好

医療事故時の対応(日本産婦人科医会より)


幸い、退院後は経過も良好でほとんど自覚症状はないとのこと。ここまで話を聞き取り、すぐに上司に報告して、上司からも謝罪の電話をする。その場で一定の理解を得られた為、以後は院内にて、重大な医療事故として共有し再発防止に努める。また関係先へ医療事故発生の報告をした。

五.注意事項
医療事故による気胸は、本町北はり灸院さんのHPから、初歩的な解剖学の学習が十分であればほとんどの場合避ける事ができる事故。だとされています。また、

胸膜にぶつかると(鍼の)進行が止まります。胸膜は明らかに周囲の筋肉とは鍼尖に触れる感触が異なってくるので、無理矢理押し込むような事をしない限り、貫いてしまうことはありません。

とあるように、鍼灸師として最低限の知識と、普段からの無理のない鍼治療を心がけていれば、防止は十分可能です。(強刺激を好まれる患者であっても、鍼のリスクを伝えつつ施術者と患者の両者で合意あるレベルで施術するように努める)


参考・引用
※全日本鍼灸学会雑誌44巻3号

※日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/note/1-医療事故発生時の初期対応/

※本町北はり灸院
http://www.kita-sinkyu.com/column/card01.htm

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