ショクパンマンの本音

「白い顔の裏側」


私はショクパンマン。

見た目も性格も「白くてまじめ」。

多くの人からは「優しい人」だと思われている。

女性たちにはやたらとモテるが、実際のところどうだろう?


たぶん、みんなが見ているのは、ただの**「理想的な男の仮面」**だ。

その仮面の裏側にある、本当の私を知る人なんて、誰もいない。



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毎朝、同じようにトラックに乗り、パンを配る。

みんな笑顔で感謝してくれる。

「ショクパンマンさん、ありがとう!」

その言葉を聞くたびに、心が少しだけ疲れていくのを感じる。


感謝されるのは悪いことじゃない。むしろ嬉しいことだ。

でも、それが毎日となると話は別だ。

「感謝されるために生きる」ような人生って、本当に幸せなのだろうか?


誰も私に聞かない。

「ショクパンマンさん、あなたは本当はどう思っているんですか?」と。



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アンパンマンを見ていると、正直に思うことがある。

「あいつは自由だな」と。


彼は誰かが困っていれば、すぐに飛び出していく。

そして顔を渡して、ヒーローとしての称賛を浴びる。

一方、私はどうだ?

パンの配達が私の仕事だ。

黙々とパンを配り、決して「ヒーロー」にはならない。

正義の舞台には立てず、ただ裏方としての役割を果たすだけ。


もちろん、アンパンマンを妬んでいるわけじゃない。

彼のやっていることは素晴らしい。

でも時々、こう思う。

「俺も、もう少し派手な活躍をしてみたい」と。



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バタコさんやドキンちゃんにも言っておきたいことがある。

君たちが私に向ける視線――あれは「憧れ」ではなく「幻想」だ。


ドキンちゃんは私に恋をしているらしいが、正直に言うと、少し重たい。

彼女が求めているのは、私ではなく「完璧な男」という幻だ。

私はそんな完璧じゃない。

むしろ、何かに憧れられるたびに、その重さに押しつぶされそうになる。


そしてバタコさん。

君の笑顔や親切心は素晴らしい。

でもたまに思うんだ。

君も誰かのために「正しさ」を演じすぎて、自分を見失っていないか、と。



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私はパンだ。

白くて、柔らかくて、味気ないショクパンだ。


みんなは言う。

「ショクパンマンさんは清潔で完璧ですね!」

でもその裏側には、「完璧じゃなきゃいけない」というプレッシャーが隠れている。

ちょっとした欠点も見せられない。

誰も私に弱音を吐く隙を与えない。


「みんなのために」生きるのは悪いことじゃない。

でも、「自分のために」生きられないのは、少し寂しい。



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最後に、こう言いたい。


私はショクパンマンだ。

白い顔をしているが、心はそんなに白くない。

迷いもあるし、不満もある。

でも、みんなの笑顔を見ると、それも忘れてまた仕事に戻る。


正義の仲間たちの中で、私は目立たない存在かもしれない。

でも、それが私の役割なら仕方ない。


ただ一つ願うのは、いつか誰かが、

「ショクパンマンさんもたまには休んでくださいね」と声をかけてくれることだ。


その日が来るまでは、私はトラックに乗り続ける。

黙って、静かに、パンを配るために。



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