私を構成する42枚pt.4
前回の更新から数ヶ月経っていました。今回も6枚。シングル多めです。
17.月曜日 - amazarashi(2018)
日本のロックバンドamazarashiが2018年にリリースした配信限定シングル。この楽曲は2017年から2018年にかけてビッグコミックスピリッツで連載していた『月曜日の友達』という漫画とのコラボレーションソングである。
元々、『月曜日の友達』の作者である阿部共実がamazarashiのファンであり、最終巻のプロモーションビデオにamazarashiの過去曲を使用したいと連絡を取った所、阿部共実のファンであった秋田ひろむ(Vo/Gt)が本作品を読み、曲を書き下ろす事が決まった。この後、わずか1週間でデモ・テープが送られてくるというエピソードがある。秋田氏いわく、この作品のファンアートのような気持ちでこの楽曲を制作したそうだ。
正直、この楽曲は『月曜日の友達』を読んでいるか読んでいないかで楽しみ方が全く変わる上に、読んでいた方が絶対に楽しめる楽曲ではないかと思う。私は熱狂的な阿部共実作品のファンだった為、このMVを観た時に大きな衝撃と幸福感を覚えたことを覚えている。漫画のストーリーや風景とリンクする歌詞を聴くたびに、『月曜日の友達』を読みたくなる。
amazarashiの音楽も阿部共実の漫画も、怒りや疎外感、悲しみ、センチメンタルな感情、そして地方の風景が描写されている作品が多い。その感情を詩的に、時にストレートに表現する2つのアーティストのコラボに、私は今も心動かされている。
もしこの楽曲のMVを観て、この漫画に興味を持ったのであれば、是非読んでみて欲しい。可愛らしい絵柄からは想像できないほど、深くて味わい深い作品で、読了後に満足感に満たされる作品だ。そして、読了後にこの楽曲を聴きに戻ってきた時、この曲をより楽しめるようになっているはずだ。
18.Os-宇宙人 - エリオをかまってちゃん(2011)
2011年に放送されたテレビアニメ『電波女と青春男』のOPテーマに使用された楽曲が表題曲となっているシングル。作詞・作曲を担当するのは、ロック・バンド神聖かまってちゃんのの子(Vo/Gt)で、この楽曲の演奏も神聖かまってちゃんが行っている。ボーカルは本作品に登場するヒロインの藤亀エリオ(CV.大亀あすか)が担当しており、これが組み合わさって出来たユニットがエリオをかまってちゃんである。表題曲の「Os-宇宙人」のカップリング曲として、同アーティストの「コタツから眺める世界地図」が収録されている。
神聖かまってちゃんというバンドの存在を知らなくても、この楽曲は知っているという人も多い。そんな本楽曲では、作詞・作曲を担当したの子の学生時代のエピソードや感情をストレートに描いている。夏休みが来る前に高校を中退したことや、同級生からの蔑称として宇宙人呼ばわりされていた過去の体験がそのまま歌詞に表れている。タイトルの「Os」とは、の子の本名である大島亮介の「大島(Oshima)」から来ている。このエピソードは、この楽曲を歌っている藤亀エリオにも共通する部分があり、このキャラクターも高校を中退している。
このシングルがリリースされた時期の神聖かまってちゃんのボーカルは不安定で、凶暴で、心の底から叫ぶような着飾らない歌唱法をしているが、それ故に好き嫌いも分かれやすい。この楽曲でも歌唱した藤亀エリオも不安定なメロディで歌唱しているが、
これは「藤亀エリオは音痴」という設定をしっかり守っているためである。歌唱力を気にせず、ありのままの姿で音楽活動をする神聖かまってちゃんだからこそ出来た楽曲かもしれない。
3:18という短い楽曲に込められた思いは、あまりにも重く、そして前向きである。それまでのかまってちゃんではあまり使われなかった「好き」という言葉が、これでもかというほど連呼されるラストは、狂気すら感じさせられる。タイアップによって生まれた名曲を是非聴いてみて欲しい。
M1 - Os-宇宙人
原曲もセルフカバーもどちらも良い。セルフカバーの際には、ボコーダーで声のピッチを変えながら歌っている。
M2 - コタツから眺める世界地図
Os-宇宙人の出来に満足したレコード会社側から依頼を受けて作られたカップリング曲。ポップな電子音から始まるイントロが可愛らしい。4thアルバム「8月32日へ」でセルフカバーされており、こちらでは鉄琴の音から始まる。こちらも可愛らしい。
19.TAKE OFF AND LANDING - 砂原良徳(1998)
元電気グルーヴのメンバーであり、現在はTESTSETのメンバーとして活動しているテクノミュージシャンの砂原良徳が電気グルーヴ在籍中の1998年にリリースした2ndアルバム。全ての楽曲がシームレスに繋がっている。
アートワークや世界観はTOKYO UNDERGROUND AIRPORT(TUA)という架空の空港をモチーフに作られている。
このアルバムでは初期の砂原良徳の作風である、サウンド・コラージュやミックスを含みながら、ハウスやテクノ、ラウンジといった音楽を展開していく。空港や旅行といったことがテーマになっているだけあり、空港のアナウンスが入った楽曲や無線機のノイズのようなものが入った楽曲などが収録されており、コンセプトアルバムとしてかなり上質な作品である。一瞬ながら小ネタも多く、イースターエッグ的な楽しみも多く含まれている。
このアルバムは1998年リリースされたとは思えないほど先進的で近未来的な音が使用されており、ミックスやマスタリングが素晴らしさが分かる。聴いていて心地の良い、柔らかな電子音がスッと身体に入ってくる。サンプリングされたボイスもやけに発音が良く、ノイズすらも心地よく感じる。
今の時代に聴いても衝撃的で、面白いアルバムだと感じる。エレクトロニカやテクノが好きな方は是非聴いてみてほしい。サンプリングやコラージュの関係上、サブスクで配信されていない楽曲もあるため、通しで聴くには手間がかかる。しかし、ノンストップで繰り広げられる電子音の衝撃は、是非体験してみて欲しい。
特に好きな曲
M1 - Information TUA
最初のアナウンスがすごい良い声をしている。アルバムの初めからカオスを上手い事演出しているのがカッコいい。そして音が凄い良い。電気グルーヴの楽曲『パラシュート』のような雰囲気がある。
M5 - Sun Song'80
爽やかなボーカル曲。どことなく南国の、時の流れが緩やかな場所を想起させられる。最初の波の音から最後のノイズまでずっと気持ちの良い音が流れている。
M8 - Journey Beyond The Stars
ハードで良いグルーヴを感じられる。SEの音が気持ち良い。ボイスサンプリングの使い方やバックスピンの音が癖になる。途中のサンプリングラッシュは聴いていて気持ちが良い。
20.Mars - TOWA TEI(2000)
元Deee-Liteのメンバーであり、現在はDJやプロデューサーとして活動しているテイ・トウワの10thシングル。名義には書いていないが、ボーカルにクラムボンの原田郁子が参加している。
2000年代初頭らしい2STEPサウンドが特徴的。独特のリズムで歌う原田郁子の歌声も素晴らしい。サビから入るストリングスの音や一度聴いたら頭に残るピアノリフなど、クセになる要素が多く入っている。特にラスサビ前のビート連打は衝撃。原田郁子とTOWA TEIが共作した歌詞も非常に可愛らしい。しかし、その可愛さの中にも常人に浮かばないようなワードや表現が入ってくる。恐るべし。
この楽曲はそれまでのシングルカットの楽曲と違い、オリジナルアルバムに収録されていない楽曲である。私は『Towa Tei Best』というベストアルバムで初めてこの曲を初めて聴いたが、そのアルバムの中ではかなり異色な楽曲で、イントロから大きな衝撃を受けた。Mondo Groosoやbird、平井堅やm-floといったアーティストの2STEPも好きだったために、この楽曲の刺さり方は凄まじかった。
長らく配信されていない楽曲だったが、最近になってサブスク解禁された。2STEPブームは過ぎ去り、この独特なリズムを聴ける事が少なくなった今だからこそ聴いてみてほしい1曲だ。
M1 - Mars
謎MV。やっぱ円谷感がある。このMVだと1番からラスサビに飛ぶので、CD音源とは違う、MV Editのような構成になっている。
M2 - HAPPY 2000
2ndアルバム『Sound Museum』に収録されている『HAPPY』という楽曲の2000年版リミックス。テンポがかなり上がっており、原曲とはまた違った楽しみ方ができるリミックス。原曲のラップパートが少し速くなっているのが気持ち良い。
M3 - Mars (SUNSHIP Remix)
イギリスのピアニストであるケリー・エヴァンスの変名義であるSUNSHIPがリミックスした表題曲。原田郁子のボーカルをぶつ切りにしながら、サンプリングのように切り貼りしていく遊び心のあるリミックス。全体的にインスト曲のようなアレンジがなさている。最初の男性ボイスがこれでもかってくらいに引き延ばされているのが面白い。
21.HEART STATION - 宇多田ヒカル(2008)
歌手・シンガーソングライターの宇多田ヒカルが2008年に発表した5thアルバム。収録された楽曲の作詞・作曲・編曲・プログラミングを宇多田本人が行なっており、キーボードの演奏もほぼ全て行っている。
収録楽曲の半分がタイアップで使用されており、多くの人々が耳にしたことのあるような楽曲が収録されている。CM、映画・ドラマの主題歌、みんなのうたなど、幅広く採用されており、このアルバムに収録された楽曲を耳にしたことのある人は多いのではないだろうか。
電子的でポップなサウンド、婉曲的な表現ではないストレートな歌詞、そして唯一無二の歌声の組み合わさった楽曲達は、幼少期の自分でも魅力が分かるくらいには素晴らしい作品だった。時が経ち、多くの音楽を聴いて趣味趣向が大分変わった現在でも、このアルバムに心動かされることがある。寧ろ、今だから気づくことのできる良さも沢山ある。懐かしさと真新しさの両方を感じることが出来る素晴らしいアルバムだ。
特に好きな曲
M2 - HEART STATION
表題曲。イントロの一音目から好きだとわかるのが良い。ゆったりとしたテンポのサウンドと語感の良いサビの歌詞は、一度聴いたら頭から離れなくなる。深夜1時に聴くとなおよし。この曲含めて夜に聴きたい楽曲が多いアルバムな気もする。
M6 - Kiss&Cry
カップヌードルのCMで使用されていた楽曲。ドラムのビートがカッコいい。この楽曲もとにかく語感の良い言葉が並べられていて、とても気持ちよく聴いていられる。幼少期、というか今も『日清カップヌードル』というような固有名詞を違和感なく、しかもクールに歌詞の中に混ぜることが出来るのが凄いと思っている。ポルノグラフィティの『今宵、月が見えずとも』という楽曲の中で、Google検索という言葉が自然に歌詞に入っていた時も同じように驚いた記憶がある。
M12 - 虹色バス
幼少期から特に好きだった曲。アルバムの実質的な〆に、この楽曲を聴かされた時にはもう清々しい気分にならずにはいられない。歌詞もメロディもビートもシンプルで単純なのに、楽しい曲にも悲しい曲にも聴こえてくる。アウトロで歌声に吸い込まれていくような感覚になるのが好き。
22.Rainbow Rainbow - Ryu☆(2011)
DJやKONAMIの音楽ゲーム『BEMANI』シリーズへの楽曲提供を行っている作曲家の中原龍太郎ことRyu☆が2011年に発表した3rdアルバム。BEMANI
シリーズに提供した楽曲のロングバージョンや合作曲などが収録されている。
Ryu☆が作る楽曲はBEMANIユーザーから人気が高いものが多く、初心者から上級者まで幅広く彼の楽曲を好んでいる。音楽としてとても分かりやすく、とっかかりやすいような楽曲がこのアルバムにも多く収録されているため、非BEMANIユーザーや非音楽ゲームユーザーでも楽しめるのではないだろうか。
私が音楽を幅広く聴き始めたのは、BEMANIの影響が大きく、彼の音楽に強く惹かれていた時期があった。音楽の自由さや楽しさを知ることが出来たり、インスト楽曲の楽しみ方を知ることが出来たのも、このアルバムに収録された楽曲があったからである。最近聴いている音楽からは遠い位置にあるジャンルの楽曲が多いが、今聴いてもテンションが上がるようなアルバムだ。音ゲーマーでも非音ゲーマーでも楽しむことが出来る作品だと思うので、是非聴いてみてほしいアルバムだ。
特に好きな曲
M1 - I'm so Happy
jubeatという音楽ゲームに収録された楽曲。Ryu☆の楽曲の中でも特に知名度が高い楽曲。初っ端から最後まで使われているボイスサンプリングが特徴的なハッピーハードコア。強めのビートとハッピーながら少し切なさの残るメロディがとても良い。
M16 - Sakura Reflection
REFLECBEATという音楽ゲームに収録された楽曲。Ryu☆は「Sakura」から始まる楽曲を複数リリースしており、この楽曲は3作目に当たる。繰り返されるフレーズやボイスサンプリング、拍子木の音など、中毒性のある音が沢山鳴っている。また、このSakuraシリーズの2作目『Sakura Sunrise』もこのアルバムに収録されている(M15)。
M18 - VOX UP
beatmania IIDXという音楽ゲームに収録された楽曲。主にゲームミュージックを手掛けているsampling masters MEGAこと細江慎二との合作。なお、この楽曲ではRyu☆は青龍という別名義で曲を書き下ろした。BPMは202と、かなり速いロッテルダムテクノ。上記楽曲でもふんだんに使われていたボイスサンプリングの量がこの曲ではさらに増え、楽曲中にボイスサンプリングが流れていない時間の方が短い。そのスピード感とボイスサンプリングの混沌とした組み合わせが、中毒性のある音楽を作り出しているようにも思える。
大分間が空きましたが、最後まで書いていけるようにしたいですね。今回の6枚は特に思い入れが強い気がします。
ここまで見てくださった方、ありがとうございます。ではまた。
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