2人の吉備津彦③吉備津彦神社(備前) 岡山市北区
「孝霊天皇(7代)」の皇子である兄『大吉備津彦命』と弟『若建吉備津彦命』の伝承について調べています。
『吉備の中山』(岡山市北区)という神名備山に「吉備津神社」と「吉備神社」というゆかりの神社があります。
<吉備津彦神社(備前)について>
前回紹介した 西麓の「吉備津神社」は 「備中」の一宮でした。
今回紹介する東麓の「吉備津彦神社」は 「備前」の一宮になります。
【御祭神・由緒】
岡山市西部、備前国と備中国の境に立つ『吉備の中山(標高175m)』は古来より神体山として信仰されており、その北東麓に東面して鎮座する。
ご祭神は「桃太郎」のモデルとしても有名な大吉備津日子命。大和朝廷の命により吉備の国を平定したといわれ、吉備の国を治めた屋敷跡にご社殿が建てられたのが当神社の始まりとされている。なお社伝では推古天皇の時代に創建されたとしている。
<本殿の御祭神>
大吉備津日子命(おおきびつひこ)
第7代孝霊天皇の第3王子・五十狭芹彦命 四道将軍の一人:西道将軍
<相殿の御祭神>
孝霊天皇(こうれいてんのう)大吉備津日子命の父、第7代天皇
吉備津彦命(きびつひこ) 大吉備津日子命の弟 若建吉備津日子命
孝元天皇(こうげんてんのう) 大吉備津日子命の兄弟、第8代天皇
彦刺肩別命(ひこさしかたわけ) 大吉備津日子命の実兄
大倭迹々日百襲比賣命(おおやまとととひももそひめ) 大吉備津日子命の姉
大倭迹々日稚屋比賣命(おおやまとととひわかやひめ) 大吉備津日子命の妹
開化天皇(かいかてんのう) 孝元天皇の御子、第9代天皇
崇神天皇(すじんてんのう) 開化天皇の御子、第10代天皇
天足彦國押人命(あまたるひこくにおしひと) 第5代孝昭天皇の御子
金山彦大神(かなやまひこのおおかみ)鉱山や金属業の祖神
大山咋大神(おおやまくいのおおかみ)山の神
【朝日の宮】とも称される神社です
夏至(太陽の力が最も強い日)の日出には太陽が正面鳥居の真正面から昇り神殿の御鏡に入ることから「朝日の宮」とも称されてきました。
この事は古代太陽信仰の原点、太陽を神と仰ぎ日本民族と人類の豊穣発展と幸運を祈る神社として吉備津彦神社が創建されたことを象徴しています。
<ここから考察です>
この「東麓・備前」の吉備津彦神社の縁起では「大吉備津彦の屋敷跡」に創建したとされていますが、「西麓・備中」の吉備津神社の縁起でも「大吉備津彦の茅葺宮の跡」に創建したとあります。同様の伝承が残っています。
諸説あるのですが『古事記』では「大吉備津彦(兄)」の子孫が「吉備上道臣」一族となり東の備前に住み、「若建吉備津彦(弟)」の子孫が「吉備下道臣」一族となり西の備中に住んだとされます。そのため「東麓・備前」の吉備津彦神社は「大吉備津彦(兄)」の宮で、「西麓・備中」の「吉備津神社」は「若建吉備津彦(弟)」の宮だったのかもしれません。
他の説としては、「西麓・備中」の「吉備津神社」は 政治の拠点として「茅葺宮」があり、「東・備前」の「吉備津彦神社」は 古代祭 祀(太陽信仰)の拠点として「朝日の宮」があったのかもしれません。
いろいろと想像が膨らみますね。
<たくさんの摂社末社>
【楽御崎神社(らくおんざきじんじゃ)✕2社】
①北側・本殿向かって右手前
御祭神:楽々森彦命(ささもりひこのみこと)
桃太郎の家来の「猿」のモデルともされる。
②南側・本殿向かって左手前
御祭神:楽々与里彦命(ささよりひこのみこと)
※本殿両脇に本殿に向かって配祀されており、吉備津彦命が吉備の国を平定するときに活躍された従者がお祀りされています。
【尺御崎神社(しゃくおんさきじんじゃ)✕2社】
①北側・本殿向かって右奥に鎮座
御祭神:夜目山主命(やめやまぬしのみこと)
②南側・本殿向かって左奥に鎮座
御祭神:夜目麻呂命(やめまろのみこと)
※御垣内の奥の両脇に本殿に向かって配祀されており、楽御崎神社同様、命が吉備の国を平定するときに活躍された従者がお祀りされています。
【温羅神社(うらじんじゃ) 】
祭神:温羅属鬼之和魂
(大吉備津彦命に討たれた温羅の和魂)
※吉備津彦命と戦った温羅は鬼とされていますが、吉備の国に様々な文化をもたらし「吉備の冠者」の名を吉備津彦命に献上したとされる温羅命の和やかな御魂をお祀りしています。
※温羅は百済(くだら)の王子で、吉備へとやってきて一帯を支配した一大勢力の首領であったとの伝承があります。
【岩山神社】
祭神:建日方別命(中山主神とも)
伊邪那岐命・伊邪那美命の子(国産みでの吉備児島)。
【子安神社(こやすじんじゃ)】
御祭神/伊邪那岐命、伊邪那美命、木花佐久夜姫命、玉依姫命
※古来、縁結び、子授け、安産、育児の神様として広く世に知られ全国から熱心なお参りがあります。子安神社の脇に自生する蕨(ワラビ)を夫婦で食べると懐妊するという伝承があります。
【7つの末社】
下宮(しものみや) 祭神:倭比賣命
伊勢宮(いせのみや) 祭神:天照大神
幸神社(こうじんじゃ) 祭神:猿田彦命
鯉喰神社(こいくいじんじゃ)祭神:楽々森彦命荒魂
矢喰神社(やぐいじんじゃ) 祭神:吉備津彦命御矢
坂樹神社(さかきじんじゃ) 祭神:句句廼馳神(くくのちのかみ)
祓神社(はらいじんじゃ) 祭神:祓戸神。
【天満宮】 祭神:菅原神。
菅原道真は配流途中に吉備津彦神社に立ち寄ったと伝える。
【稲荷神社】 祭神:倉稲魂命
【卜方神社(うらかたじんじゃ)】
御祭神 : 輝武命(てるたけ)・火星照命(ひほしてる)
※旧岡山藩主の祖である池田信輝公(輝武命)と池田輝政公(火星照命)の霊神がお祀りされている。
【3つの末社】
十柱神社(とはしらじんじゃ)
御祭神:
吉備海部直祖 、山田日芸丸、 和田叔奈麿
針間字自可直 、夜目山主 、 栗坂富玉臣
忍海直祖 、 片岡健命 、 八枝麿 、 夜目丸
牛馬神社(ぎゅうばじんじゃ)
御祭神: 保食神(うけもちのかみ)
祖霊社(それいしゃ)
御祭神:当神社社家の祖霊
【靏島(鶴島)神社(つるしまじんじゃ)】
御祭神 :底筒男命、中筒男命、表筒男命、神功皇后
※神池に浮かぶ鶴島に鎮座する海上安全の神様。
【亀島神社(かめしまじんじゃ)】
御祭神:市寸島比売命。
※神池に浮かぶ亀島に鎮座する水の女神様です。
【龍神社(りゅうじんじゃ)】
御祭神:八大龍王神
※大吉備津日子命が吉備国の平和と安寧を祈りつづけたとされるご神体山「吉備の中山」、吉備津彦神社境内山頂に鎮座される龍神社・八大龍王神の神々様は、古くから天象気象を司り、国土を守護すると伝えられています。
五穀豊穣や無病息災を願う氏子崇敬者をはじめ、岡山の地域の平和と皆様の祈りを永年見守り続けています。
<この記事のまとめ>
こちらの神社は太陽信仰(古代祭祀)の形跡が残る神社でした。
そして、たくさんの摂社末社がありました。1つ1つを深掘りすると面白そうですがまたの機会にしたいと思います。