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残暑のお年玉
自宅のクローゼット内の、自分の洋服を整理した。引き出しの中にしまってある靴下を全て取り出し、使っていない靴下を3足ほど処分した。そのとき、お年玉袋を4つ見つけた。あぁ、これは。やばいやばい。
一ヶ月ほど前、長男に聞かれた。お母さん、ぼくのお年玉どこにあるの、と。私は答えた。お母さんは持っていないよ。お母さんはもう預からないことに決めたじゃん。あなたが自分で持っているはずだよ。長男は言う。いや、ぼくは持っていないよ。お母さんでしょ。私は言う。違うよ、お母さんじゃないよ。お年玉のお金、あなたもう全部使っちゃったんじゃないの。
私はクローゼットの中で、4つのお年玉袋を手にし、しばし固まっていた。ぼんやりと記憶がよみがえってきた。お正月に頂いたお年玉をどうするのか、長男と話し合ったんだった。もう6年生だし、母である私が預かる必要もなさそうだと、私は思った。しかし長男は、お母さんが持ってて、と言った。そして私は。自分の靴下置き場に、お年玉袋を隠すように、置いたのであった。
あんなに自信たっぷりに、あなたのお年玉に関してお母さんは無関係です、と、私は言い切ってしまった。
私は恐る恐る長男に近づき、4つのお年玉袋を見せた。お母さんの靴下置き場の中でこれを見つけたよ、ごめんね、と私は言った。だから言ったじゃん、と言われたが、特段私が責められることにはならなかった。ほっ。
それからしばらくしたある日、私は玄関の収納扉を開け、ふと上に目をやった。とあるモノを見つけ、また思った。あぁ、これは。やばいやばい。
それは、次男が紛失したと言っていた小銭ケースだった。大切な小銭ケースを誰にも盗られないように、誰にも見つからないようなところに隠すんだ、と次男は言っていた。誰にも見つからないようなところに隠した結果、次男自身も、どこに置いたのか、わからなくなってしまっていた。7歳の記憶力はこんなものなのかな、我が子は大丈夫か、まぁそのうち出てくるか、などと、私は思っていたのだが、それが出てきた。私しか手が届かないところから、出てきた。ということは、置いたのは私。ここだったら誰にも見つからないからね、と次男に伝え、私が小銭ケースを、玄関の収納棚の一番上の棚に置いている映像が、ぼんやりと脳内に出てきた。
私自身は、大人になってからはモノを失くしやすいタイプでもなく、お出かけ前に、あれがない、これがない、と大騒ぎするタイプでもない。いやはや、しかし。40歳だからなのか、スマホ脳やらなんやらの影響なのか、明らかに短期記憶力が、以前に比べ衰えている。
自分のブレインが頼りなくなってきたため、写真を撮ったり、スマホや手帳にメモを取ったりして、記録に残しながら記憶にも残していこうと思う。
長男は、4つのお年玉袋のうち、2つは自分で保管し、あとの2つはお母さんの靴下置き場に置いておきたい、と言った。お母さんがしっかりと預かりますからね、安心してください。お年玉袋=靴下置き場。さすがにこれはもう忘れまい。noteに記したんだから。