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価格

安売りは悪魔の誘惑である。一度安売りでお客様が来ると意識してしまうとそれにあがらう力は無くなってしまう。

ダイエー、イオン、イトーヨーカ堂を担当したボクは全く企業色が違う事に驚いた。
因みに外のチェーンストアや全てのコンビニも担当すると言うハチャメチャぶりだったので売ってるものは一緒なのにこれほどまでに違うもんかとまじまじと味わう事になった。

話し出すと10年ほどかかるので安売りと言えばダイエー。隆盛期から転落するまで見てきたが価格に囚われたら何が起こるのかをほんの少し説明する。

全てのチェーンストアを担当するボクはジャイアンツファンのバイヤーによく聞かれた。『くまごろ君、うちと余所はどう違う?』と。
ほんの少し安いですかね、特売品が。あと、売り場が汚いです。食品を扱っているんだからキレイにしないと。
ボクはお世辞を言うような余裕は無いくらい忙しい。バイヤーはちょっと安いにご満悦だった。
とにかく金だった。これは伝染していくから恐ろしい。本部が金しか考えなくなると末端へと伝播していく。売り場をキレイにしたりはしなくなる。14時に流れて来る前日より売上が下回っているぞの音楽が流れて来たら売り場に飛び出してタイムセールを始めるのが彼らの仕事になっていく。

とにかく末期は汚い店だった。旗艦店の碑文谷店でもそういった有り様だった。

安くなければ売れないから安けりゃ良いんでしょとなっていく。そのうちに安くても売れなくなる。当たり前だ。

価格というのは価値であって価値を下げる事は即効性がある為に悪魔の誘惑と言われる。麻薬みたいなもので一度禁断の味を味わうと離れる事は難しくなっていく。
それは客もそうでその安い価格にしか価値を見出だせなくなってしまう。安いものにしか価値を見出だせなくなるのは病気でこれがデフレと言われるものだ。

牛丼チェーン各社が足並み揃えて100円値引きするそうだ。これを戦略と考える人はマーケティングを勘違いしている。こんなもんは小学生でも考える事が出来る。

やるべき事は沢山あるのにそれを放棄するとこうなる。

我々が扱う和牛には価格決定権というものが無い。これは致命的だ。価格決定権が無いのであればそれに連動して飼料代やその他諸々も%で支払う仕組みが必要だと思う。

我々は値上げを検討しています。赤字では無いが赤字でなければ良いというのは経営ではないし何かあったら潰れてしまう様では本末転倒でお客様にご迷惑をかけてしまう事になる。より良いものを作る為にもそこはご理解頂きたい。値下げして沢山の方に使って頂く類いの商品ではないという事がよく分かりました。

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