生産財マーケティングの基本③ 顧客ニーズについて考える
経済性の追求
生産財で言う顧客ニーズは消費財とは異なります。
可愛いとか好きという感情的な要素は当然ありません。
基本は経済性の追求です。
顧客にとっての経済性の追求の基本は「QCD+S」になります。
Q(Quality)C(Cost)D(Delivery)は、ご存知の通り不良低減やコスト削減、生産性向上や短納期対応などですが、+SのSとは、新製品開発、Safety(安全)の語呂合わせです。
それによって、顧客の新製品の開発が進むとか現場の安全性が向上することもニーズに含まれます。
また、生産財の場合、購買の決定は集団で行われますので「なぜそこから購入するのかを論理的に説明」できなければなりません。
従って、営業マンが顧客との人間関係を構築して販売すると言っても、購入の理由がはっきり提示できないものは売れません。
潜在ニーズと顕在ニーズ
ニーズは表に出ていない潜在ニーズと既に表面化しており優先順位は別として解決すべき課題として認識されている顕在ニーズがあります。
潜在ニーズが顕在化しない要因は次の2点です。
1.問題として認識されていない
問題として認識されないのは、解決手段を知らず今までを当たり前だと思っているからです。例えば、新幹線で家族旅行する人に移動に関して困っていることはありますかと尋ねても特に困りごとないと答えるでしょ。もしドラえもんの「どこでもドア」が開発されていれば、新幹線での移動は煩わしいと問題になるでしょう。
そうしますと、顧客側が満足している現状は実は問題でありこのような解決手段があると提案することが、潜在ニーズを顕在化させる手段となります。
2.優先順位が低い
企業が全ての問題に手を付けることはできないので、当たり前ですが優先順位が高いものから着手されます。
そうなると優先順位が低いものは当然後回しになります。
状況によってニーズは入れ替わる
顧客ニーズは状況が変われば優先順位は変わります。
東日本震災の際には、原発が稼働しないことから省電力が最優先課題となり、LEDが一気に拡大しました。
円安で資材が高騰し利益が圧迫されている企業でしたら、安い代替資材の探索やコストダウンが最優先となります。
一方、市場で致命的なクレームを出した顧客だと、クレームの対応が最優先事項となります。
このように状況が変われば、顧客ニーズの優先順位が変わるだけでなく潜在ニーズも顕在化します。
必要なのは、ニーズの優先順位を変える状況変化、顕在化ニーズを潜在化させる状況変化の情報を素早く掴み、優先順位が高くなったニーズに対して解決策を提案することです。
そうしますと、ある時点で顧客にニーズはないと言ってもそれが状況変化によって変わる可能性もあり、この顧客はニーズがないと決めつけることはできません。
2つの方向性
顧客ニーズという観点から見ると、生産財メーカーにとって必要なことは次の2点だといえます。
1.生産財メーカーが解決策を既に持っており、顧客が問題に気がついていない場合は問題を認識させる提案を行うこと。
2.ニーズの優先順位が変動する又は顕在ニーズが潜在化する状況は何かを明確にしてその状況下になった際に素早く提案を行うこと。