生産財営業のDX化
対組織営業の勝ち方
「対組織営業の勝ち方」で顧客ニーズの有無と営業の勝ち方及び具体的な活動について記載しました。
その中で、新規顧客や既存の仕入先を変更する可能性が小さい場合には提案を行わなければ仕入先変更の可能性はないとも記載しました。
そもそも問題がなければ顧客は仕入先を変える気はないので、仕入先を変更しても良いと思える経済的なメリットが有る提案を行うことが必要になるわけです。
よく言われている営業のDX化への疑問
営業のDX化といえばSFAやCRMを思い浮かべます。
「ネタの進捗状況や顧客への訪問状況を見える化する」「自社サイトで情報発信する(リード獲得)」「獲得したリードに対してメールを発信する(ナーチャリング)」「顧客分析をする」 等があげられますが、生産財(対組織)営業ではものすごく違和感を感じています。
まず「見える化」ですが、「見える化」は悪いことではありませんが、あくまで「現状の見える化」でありその対策はマネージャー個人の対応に任されます。
例えば、顧客に訪問していないという実態は把握できますが、なぜ訪問しないのかは結局部下と面談しないとわかりません。
訪問するネタがないということであれば、そのネタを作るということから始めなければなりません。
出来の悪いマネージャーだと、「とにかく訪問しろ」で終わるかもしれません。
「自社サイトで情報発信する(リード獲得)」「獲得したリードに対してメールを発信する(ナーチャリング)」ですが、顧客が多数存在しているというBtoCに近い生産財で新規顧客獲得という側面ならまだ理解できます。
例えば、巨大企業であるGEが病院向けの医療機器をPRするのにメールを使用するというのならイメージは湧きます。
とにかく広くPRして顧客の反応を待つというやり方です。
しかし、生産財(対組織)の場合 個人に販売する消費財と異なり顧客は限定されていますし、顧客に対して提案できるネタがあればメールではなく直接提案したほうが効果的です。また、今取引している顧客の深耕は一般的に言われているDX化では出てこないものです。
本当の営業のDX化とは
本当の意味での営業のDX化とは、このような「業界」のこのような「顧客」がこのような「状況」であるという顧客情報を入力すれば、提案又はアプローチのヒントが明示されるものだと思っています。
営業強化を個人に任せるのではなく、組織全体でシステム化することです。
AI化といっても構いませんが、何も情報が投入されなければ単なる箱に過ぎません。
重要なのは、どのような情報を収集しどう活用するかですがこの点はどの営業支援ツールでも明示されていません。
今一度生産財(対組織)営業の強化を整理する
1.基礎の基礎部分
セールストーク等のテクニカルなことではなく、約束を守る・嘘を言わない・クレームの際はまず駆けつける等「人としてのあり方」を教育することが必要です
相手を騙して販売しても、継続取引となるビジネスでは短期的な付き合いで終わります。
2.行動管理面
(1) 既存顧客
単純ですが、訪問活動を増やせば引き合いは増加します。
問題なのは、会ってもらえないということですので会うネタを組織として作り出して、営業マンに渡すことが必要です。
ネタの中身は以前にも記載した「新商品」「業界動向」「メーカー情報」「競合情報」等になります。
「社内業務が多すぎて外に出られない」とか「時間がない」という話もよく聞きます。
この場合は部門間調整も含めた業務改善を行うことになりますが、業務改善しても行動量は増えないというのが実感です。
実際は、行くネタが無い・顧客の担当者が苦手というのが本音だと思います。
(2) 新規顧客
新規顧客は何か特別な提案が直ぐに行えるのであれば別ですが、そうでなければ時間と労力がかかります。
そうすると、なにかきっかけができるまでは少ない労力で継続的に接点を持つことが必要となります。
そのためには、接点としてメールなどによる情報提供の場を作ることが必要です。
その上で、提案又はきっかけが発生したらアプローチするという流れになります。
3.アプローチ段階
ここからが営業のDX化のところです。
基本は、顧客ニーズのデータベース(以下DB)と提案のデータベースを作り、マッチングさせることにあります。
顧客ニーズのデータベースは次のような情報で構成されます。
「A:どの業界」の「B:どの顧客」の「C:このような背景」で「D:このようなニーズ」が「E:このような理由で発生する」
例えば、「建材業」の「A社」で「人手不足」という背景で「自動塗装装置」開発というニーズが人手不足解消のために発生している という具合です。
「D:このようなニーズ」が顕在化しているのならニーズ把握は簡単ですが、長年解決されずに残っている「これに困っている」という顧客ニーズはそもそも解決策が無いという難しいものが多いようです。
それよりもここで行いたいことは、「A:どの業界」「B:どの顧客」「C:このような背景」になれば、「D:このようなニーズ」が発生するであろうという仮説を作り顧客にいち早くアプローチすることです。
問題は、営業マンが「A:どの業界」の「B:どの顧客」の「C:このような背景」で「D:このようなニーズ」が「E:このような理由で発生する」の情報をきちんと掴んでいないことです。
「A:どの業界」の「B:どの顧客」から「こんな引き合いがある」事はわかっています。
しかし、「こんな引き合いがある」その背景までは掴んでいないことが往々にしてあります。
この背景がわからないと仮説構築はできません。
次回以降、この詳細について記載していこうと思います。