見出し画像

メーカーは提案営業は行えるのか?

これまで組織向け営業の革新についてNoteで記載しています
組織向け営業とは、例えば部品メーカーがカーメーカーに部品を販売するように、会社や行政等の組織に製品や商品を販売する営業を指します。
自動車を個人に販売するのであれば個人向け営業ですが、会社などの組織に販売するのであれば組織向け営業ということになります。

組織向け営業の特徴

組織向け営業の特徴については細かくは触れませんが、次の様な特徴があります。
1.顧客ニーズは経済性の追究
顧客にとって必要なのは経済性の追究であり、経済性とは顧客にとってQCD+Sの側面でメリットがあることです。
(Q:品質 C:コスト D:納期 S:新製品開発や安全性)
QCDはわかりやすいと思いますが、+Sとはその製品やサービスを購入することによって顧客の新製品開発が進むと言う意味での新製品開発と、労働災害等が減少する安全性(safety)を意味しています。
2.顕在ニーズと潜在ニーズ
この顧客ニーズは永遠に同じとは限りません。
顧客ニーズは、解決すべき課題として明確になっている顕在ニーズと、まだ表に出てない潜在ニーズに分けることができます。
ある時点である購入製品について、コスト低減が最優先課題としてあげられていても、販売が好調で納期が問題になるなら、購買部品の調達が最優先課題としてあげられます。
つまり状況が変われば潜在ニーズも顕在化しうるのです。
ある時点で顧客のニーズはこれだと言っても、状況によって変わる可能性が高いのです。
3.売る側が受け身
組織向け営業といっても、工作機械のように製品やサービスを自社で企画している会社もあれば、ゼネコンや部品加工等のように顧客側が購入する製品やサービスの仕様を決定し、その要求を満たす製品やサービスを製作する会社もあります。
一般的に、顧客側が仕様を決定する会社は、What(何を作るか)が弱くHow(どのようにして作るか)を考えることが得意です。
また、製品を販売するという意識が弱く、基本売る側が受け身で営業は顧客からの引合から始まることが多いと言えます。

解決策に対する無関心

さて、組織で顧客ニーズについては上記のような特徴がありますが、組織向け営業では個人向け営業と異なり人的営業 特に顧客ニーズを捉えてどう提案していくのかという提案営業が重要になります。

個人的には、提案営業は「顧客のニーズと自社が提供する強み・解決策とのマッチング作業」と定義しています。
従って、組織営業では「顧客のニーズをどう捉えるのか」と「自社が提供する強み・解決策をどう作り出すのか」の二つが大きなテーマになります
その中でも、顧客ニーズの捉え方については色々な本でも記載されており、関心が高い分野だと言えます。
しかし、一方提供する解決策の作り方については余り関心がないようで、解決策をどう作り出すか、集めるのかという記載は殆ど見たことがありません。

しかし、機械部品系商社で提案営業力の強化のお手伝いをした際に、一番困ったのは提案できる解決策をどうやって作るかです。
顕在化している顧客ニーズを集めることは、比較的容易で、お客様に困りごとはないでしょうかと聞くと、技術的な内容だけでなく価格や納期などさまざまな悩みを収集することができました。
ところが、お客様が長年悩んでいる問題には、そう簡単に解決策があるはずもなく、どうやって解決策を作りだすのかが、最大の課題になりました。
実際、顧客からは「いろいろな会社が提案営業を強化するので悩み事を教えてほしいと聞きにくるが、回答を持ってきた会社は1社もない。」と言われています。
解決策を作るために当時行っていたことや考えていたことは、別にまとめていますが、一番の疑問はなぜこの解決策について何故提供側の関心が薄いのだろうということです。

あくまで解決策は自社が製造した製品

結論を言えば、メーカーと商社等の流通は提案営業の考え方が異なるということです。
メーカーは、自社が製造している製品を販売する事が自社の利益になるわけですから、あくまで解決策は自社が製造した製品となります。
お客様のお悩みを解決できる製品は、自社にはありませんが他社から仕入れますという事はあり得ません。
つまり、お客様のニーズを把握したとしても、あくまで提供すべきは自社の製品であり、自社の製品があてはまらないのであれば、ネタ案件から外れるのです。
メーカーにとっての提案営業とは、「自社の製品が売れるような顧客ニーズを見つける
活動」と言えるでしょう。
自社が製造した製品という解決策があるわけですから、他の解決策をわざわざ考える必要はありません。

本来は商社が提案営業を行える

一方、商社等の流通は顧客ニーズを満たす商品を探索し販売することが自社の利益になります。
メーカーの販売特約店という位置付けで活動する商社もありますが、とにかく販売しないと自社の利益にならないわけですから、必要なら他社の商品も扱います。
商社等の流通にとっての提案営業とは、まさしく「顧客のニーズと自社が提供する解決策とのマッチング作業」と言えるでしょう。

形態別の力点

以上の違いからどこに力点を置くべきかですが、メーカーは自社製品の販売がメインですので、工作機械や建設機械などの企画型メーカーは、当たり前ですがいかに顧客ニーズに対応した製品開発を行うかが最優先課題となります。
いたって、当たり前ですね。

一方、自社で製品を作っていない部品製造等の受注型メーカーは、売り込む製品がありませんので、自社の強みを明確にして、その強みを発揮できる顧客を見つけることが必要となります。
強みは、どの顧客と付き合うかによって自然に備わるものと、戦略によって決定されるという2種類がありますが、多くの企業はこれまでの取引によって自然と構築されていきます。
いずれにしても、顧客の変化やニーズを素早く把握して自社の製品・サービスを売り込むことが提案営業となります。

一方、商社などの流通は、顧客ニーズに対応する解決策の探索がメインとなります。
まさしく、提案営業を行うわけですから、解決策の探索や構築に力点を置くべきです。
しかし、ここに重点をおいて活動している流通業は少ないでしょう。
その理由は、メーカーよりも専門性が低いということと、解決策の探索や作成を会社として取り組もうという思考が弱いからです。

不況期になると提案営業とかコンサルティング営業とか言葉が使われますが、自社にとっての提案営業とは何かをしっかりと定義することが必要です。




いいなと思ったら応援しよう!