第49話 ネネに忘れられていた道化師
死神はネネを引き連れて、原初神である月のルーナと道化師のオレンジの前へと歩み寄ります。
左腕を胸にあてて会釈をしながら、改めて挨拶をしました。
「ご無沙汰しておりました。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません」
さてネネはと言いますと、つい先程しろくまのヌイグルミを上げたばっかりの2神に対して、なぜか人見知り(神見知り)を発動しています。
死神の後ろに隠れて、顔半分だけを覗かせながら、疑心暗鬼のジト目でルーナとオレンジを見ていました。
「ネネさん、こちらが月のルーナさんで、こちらが道化師のオレンジさんですよ」
しかしまだネネは、死神の後ろに隠れたままでした。
道化師のオレンジにとっては、わけがわかりません。
ネネとオレンジは、つい先日一緒に行動していたのですから。
確かにあの時、お友達になったはずでした。
何か変な空気が漂っていたのを感じた月のルーナが、先に死神へ話しかけました。
「ご無沙汰も何も、あの時どうして急に消えたんだよ」
「サンタ・クロース殿から緊急で護衛依頼が入り、ちょっと天上界まで行っておりました」
「天上界に行ってたのか! てか、護衛って誰の?」
「ここにいるネコさん・・・じゃなくてネネさんです」
「と言うことは、天上界って今ヤバイのか」
「そうですね。しかしその辺は、ルーナさんの方がよくご存じでは」
「文句のひとつでも言ってやりたいとこだけど、なら仕方ないかな」
200年前の終末戦争の時、全世界に溢れた悪霊を祓う為に、死神・月のルーナ・道化師のオレンジは3神で力を合わせながら全国を回っていました。
しかし途中で死神が天を見上げた後、何も言わずに急に姿を消したのです。
「ご理解いただけて恐縮です。サンタ殿達が切迫した状況だったとは言え、皆様に声をかけなかったのは明らかに私の失態。申し訳ございません」
「いいよ、いいよ。もう終わったことだし、そんなに気にすんなよ」
200年前の終末戦争の時、2つの勢力が別々にサンタ・ブラックと戦っていたのです。
サンタ・ブラックと直接対峙したのが、サンタ・ファミリアの神達です。
それとは別に、全国に溢れ始めた大量の悪霊を祓うために奮闘していたのが原初神達と死神でした。
サンタ・クロースは現在の人間界よりも、天上界の方がまだマシだと考えて、ネネ達を疎開させることに決めたのです。
しかしサンタ・ブラックを追っている彼らは手が足りなかった為、旧知の仲である死神を頼ることにしたということでした。
「ところでネネさんはすごく成長したとは思いますが、まだまだ攻撃が軽いようですよ」
「え~、そんなこと言われても、どうしたらいいのさ師匠」
「そうですね、体の軸がブレまくりなのが原因です。以前にも教えましたが、もっと体幹を鍛えていかないといけませんね」
「うへぇ」
月のルーナは死神から「ネネさんは弟子です」と聞かされて驚きました。
彼は今まで師弟関係など結んだことはありませんでしたし、弟子を取るつもりも無いと公言していたからです。
それは言い換えれば「見込みのある神も女神もいない」ということです。
でもその死神が弟子を取ったということは、サンタ・ネネは・・・
とか考えながら隣にいる道化師のオレンジに話しかけようとしたら、彼女は半べそをかいているところでした。
どうやらオレンジはネネと友達だと自慢していたのに、当の本人はというと全く覚えていない様子なうえに警戒までしてくる始末。
「お前、もしかして忘れられてんじゃないのか」
「ううぅぅぅ どうしようお姉ちゃん、私もう生きていけない」
「大げさだなぁ。ちゃんとネネちゃんに話しかけてみろって」
「嫌だ。ルーナお姉ちゃんが話しかけてよ」
「嘘だろ。まったく、ほんと手のかかる妹だな」
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
「体幹」
顔・首・腕・足以外の部分で、体の中心部を指す言葉です
地面に生えている木が幹によって枝を支えているように、人体も体幹によって姿勢が保たれています
姿勢が悪いとパンチやキックに力がのらない為、威力が弱くて軽いものになってしまいます
死神は、体幹トレーニングを積んで、もっと胴体部分の筋肉を鍛えなさいと言っています
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?