第40話 幹部 悪夢配達人ゴートマンの話
月のルーナは、気になっていたことを詳しく聞いてみることにしました。
そもそも彼女達「原初神」とは、人類の誕生と共に生まれた古代の神々で、全員が年齢約25万歳です。
天上界に住む神々とは比較にならない程に長生きで、しかも莫大なエネルギー量を持っている原初神のオレンジを、いともたやすく捕まえてしまうなんて通常あり得ないことでした。
「なぁ、オレンジ。何でお前ほどの者が、たやすく捕まったりしたんだ?」
「油断してたこともあるけど、あれは反則だよ。初見殺しってやつかな」
「何だそれ」
「120年ぐらい前のハロウィンの夜に、いつも通り異界から侵入しようとしてくる者どもを追い払ってたんだけどね。いきなりあいつが現れた」
「あいつ?」
「見せた方が早いな」
道化師のオレンジは絵本を取り出しページをめくると、今度はヤギに似た真っ黒な怪人が描かれていました。
「こいつはね、悪夢配達人のゴートマンって呼ばれてる。サンタ・ブラックに仕える幹部のひとりだよ」
「うわっ!こいつも絵本に閉じ込めてんのか?」
「あぁ、これは出会った時に撮影した写真」
「脅かすなよ。オレンジは、こいつに捕まってしまったわけか」
「そだね。ゴートマンのヤバイところは、触った相手を眠りにつかせて悪夢を見させることなんだよ。いわゆる精神攻撃って感じかな」
「それでもお前なら、抵抗できるだろ」
「う~ん、こいつ分裂するからやっかいなのよ。15体に分かれて連続で触られちゃってさ、さすがに意識が朦朧としてきちゃった」
「しつこく触ってくるって、ド変態の痴漢みたいなやつだな。もしかしてこいつって、ナイトメアって呼ばれてたりしてないか?」
「あぁ、人間達からは、そう呼ばれることもあったみたいだね」
人間界では、ナイトメアとは「黒い馬の姿をした悪魔」だと伝えられていますが、実際には「黒ヤギ」でした。
「ルーナ姉ちゃんも、メア~メア~って変な鳴き声が聞こえてきたら気を付けてね。こいつ闇に紛れて、目の前に現れる時に鳴くから」
「なんだよ、メアって悪魔の意味じゃなくて、鳴き声のことだったのかよ」
「あはは。それと、分裂体の全てを同時に破壊しないと、こいつ死なないからね」
「うわ~、超めんどくせーーやつだな」
道化師のオレンジは、異世界から人間界へ侵入してくる者を追い払う役目を持っていました。
特に10月31日は、世界を隔てている「次元の壁」が最も薄くなる日であり、人間界に侵入を試みる悪意ある異界の者たちが増えるそうです。
人間達はこの日の夜のことを「ハロウィン」と呼んでいて、怪物の仮装をする祭りごとを行っています。
これはもともと人間界に侵入してくる異界の者たちに仲間だと思わせることで、難を逃れようとする意味を持っています。
「しかし異界の者を追い払う役目のワイルドハントを率いているオレンジが、異界の者に捕まるなんて面白いな」
「ちょっと!面白くないわよ。おかげで散々な目に合ってんだから」
「でも、そのおかげでサンタ・ネネに会えたわけだろ」
「そう言われれば、そうか。う~ん、なんだか複雑な心境になってきた」
「オレンジさん!」
「何よ、急に真剣な顔になって」
「トリック・オア・トリート」
「いや、お菓子は持ってないです」
「ちぇっ」
月のルーナは、道化師のオレンジにハロウィンでの合言葉「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ」と言ってみましたが、そんなに都合よくお菓子はもらえませんでした。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタ・ブラックに仕える幹部は、道化師のオレンジの他にもいます
すでに複数の幹部が人間界に潜入していて、悪事を働いているそうです
今回オレンジは浜辺の森で呪いのキノコ大作戦を仕掛けていた時に、偶然にも空に次元を破る大穴が開き、中からサンタ・ネネと赤いバイクが落ちてくるのを見かけることになります
これがサンタ・ネネとサンダー・ボルト、そして道化師のオレンジの最初の出会いになります
ちなみに「ワイルドハント」とは、オレンジが率いる異界からの侵入者を阻む狩人の集団です
彼女が使役するジャック・オー・ランタンも、その一員です
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます