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第29話 ネネ 砂浜で休憩 その1


青く澄んだ海と水平線

ネネは今、またビルの瓦礫がれきが突き刺さりまくっている海岸の様子を見に来ていました。
サンタ・ツリーを植えたことで瓦礫がれきも消えていないかと、ちょっぴり期待してみたのですが、さすがにそんな都合の良い事は起きていませんでした。

「うーん、海ってどこまで続いてるんだろ。世界の果てまでかなぁ」

ふとネネの脳裏のうりに「エビフライ」のことが、浮かびました。
確か海老は、海で獲れる海産物かいさんぶつだったはずです。

その昔、爺ちゃんと婆ちゃんに連れられて、人間界の洋食店で食事したことがあります。
サクサクの衣でまとわれたプリプリの身に、たっぷりのタルタルソース。
あの味と食感は衝撃的で、今でも忘れることができません。
しかし残念ながら天上界てんじょうかいには海が無いため、当然エビもいませんでした。

「エビフライって、すごく美味しかったよなぁ。また食べれるかな」

そんな幼少時代の思い出にひたっていると、ネネのお腹の虫が鳴りました。
この数日の間、つまみ食いはしているものの、まだちゃんとした食事は取れていません。

「とりあえず何でもいいから食べとかないと、このままだと確実に死ぬ」

神々も肉体を持っているので、食事はします。
しかしネネの場合、極端に燃費が悪いので、常に大量に食べておかないと体力が維持できないという問題を抱えていました。

彼女はサンタ袋に手を突っ込んで、中からハンバーガーを取り出すと、大きな口を開けて思いっきりかぶりつきました。
贅沢ぜいたくにも、パテを2枚重ねて作られた特製ハンバーガーです。

ダブルパテの贅沢チーズバーガー

「うっま!」

サンタ袋は非常に便利に出来ていて、時間停止の機能が付いていました。
袋の中に入れておいた作り立てのハンバーガーも、そのままの状態です。

「ボルトは時間停止の能力は、レアな能力だって言ってたけど、サンタ袋にその機能あるよね。いったいどうなってんだろ」

ネネは1個目のハンバーガーを食べ終わると、指についたソースをめなめしてから、また次のハンバーガーを取り出します。
結局5個をペロリとたいらげて、ついでに取り出したフライドポテトを口に頬張ほおばりながら、甘いアイスティーをゴクゴク飲み始めていました。

「ぷっは~、満腹じゃないけど、これぐらいにしておこっと」

彼女は、信じられないぐらいの大食漢たいしょくかんです。
その食べる量を初めて見た者は、まず間違いなくドン引きします。
天上界てんじょうかいで色々な料理を手に入れて、まるでリスのようにめ込んでいたネネですが、やはり数には限りがあるわけです。

「う~む、人間界のお店めぐりもしないと。お金はパパちゃんからもらったものがあるけど・・・とりあえず大丈夫なのかな?」

実は何かあった時の為にと、ネネは大量の貨幣コインをもらっていました。
銀色のお財布も無限収納式になっているらしく、とんでもない量がジャラジャラ出てきます。
これでどれぐらいの物が買えるのかは、全くわかりません。

ネネのお財布 金貨・銀貨・銅貨



砂浜に座って水平線をながめていると、少し疑問がいてきました。
天上界てんじょうかいを出発した時は、確かに季節は「冬」だったはずです。

しかし、人間界の季節はもしかして「夏」なのではないのだろうかと。
天上界てんじょうかいと人間界の時間の流れが、違うから?
いきなり放り込まれたあの暗闇くらやみの世界の時間が、ゆがんでいたから?

けっきょくのところ考えてても答えなんて見つからないので、とりあえずネネはサンタ服を脱いで確認してみることにします。

なぜならサンタの服は温度調整機能が付いていて、暑さ寒さはあまり感じないように出来ているからです。
ちなみにネネが雪だるまにされた時、風邪を引きそうになっていたのは、サンタの服でもお手上げの「何でもこお絶対零度帯ぜったいれいどたい」だったからです。

ネネは、左手に付けているサンタ・リングを触りました。
瞬時に、イメージ通りの夏仕様のシャツに変わったのですが・・・
なぜかネネの顔は、不機嫌でした。

めっちゃ暑いんですけど

っつ!」

ネネはあわててサンタリングを操作して、再びお着換えします。
なぜなら薄着にしたつもりのTシャツとショートパンツでも、耐えられそうにない暑さだったからです。

次は、さらに薄着のビキニタイプの水着です。
しかし・・・
水着になってもまだ暑かったので、やはり季節は夏でした。

ネネ初めての海水浴


ドバっと汗がき出してきたので、急いで海水にかってみたものの、ほんのちょっぴり体が冷えた程度でした。
焼け石に水とは、まさにこのこと。

しかしネネにとっては初めての海ということもあって、しおの香りや、寄せてはひいていく波の動きが面白くて、ワクワクが止まりません。

しばらくの間、波打なみうぎわで、はしゃぎまくるネネなのでした。

「これが爺ちゃんが言ってた海水浴ってやつなんだな、きっと」

サンタとは本来「寒い冬の世界」を好む神様です。
ネネは「暑い夏の世界」とは相性が悪いはずなのですが、なぜかすごく気に入ったみたいです。


つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

ネネとサンダー・ボルトが放り込まれた暗闇くらやみの世界の時間は、すごく歪んでいました。
12月の真冬に天上界てんじょうかいを出ましたが、暗闇くらやみの世界で時計の針が「半年以上先」まで進められてしまっていたのです
つまりネネ達は人間界に来てから「2日程度」しか経っていませんでしたが、実際には「210日」以上が経過していたことになります
人間界は現在、真夏の7月です

ネネのお財布には、父クリスが稼いだ給料のほとんどが入れられています
現在の貨幣価値で総額「10億円」ほどにもなるので、よっぽど妙な使い方をしない限り無くなることはありません
200年前の貨幣コインですが、現在も共通貨幣として流通しているものと同じなので問題なく使えます

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます

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