第50話 ネネやっと道化師を思い出す
死神の後ろに隠れながら、原初神のルーナとオレンジをまじまじと見つめてくるサンタ・ネネ。
ルーナの後ろに隠れながら、ネネを見つめる道化師のオレンジ。
しかも強い力でグイグイと、オレンジはルーナを押してきます。
「おい、オレンジ押すなって」
踏ん張っても、止まれません。
ついに月のルーナは、死神に助けを求めます。
「ちょっと死神!涼しい顔して見てないで、この2人を何とかしてくれよ」
「そう言われましても、ネネさんは小さい頃からずっとこんな感じですし」
あっさりと死神に見捨てられてしまったルーナは、さらに前へと前へと押されていきます。
「あぁーー!もういい!わかった」
ルーナは大声でそう叫ぶと、ついにオレンジの顔を両手で掴んで、ネネの顔の前に持って行きました。
「この娘は私の妹で、道化師のオレンジって言うんだけど、覚えてない?」
「う~~ん」
「こいつがさ、君と友達になったって喜んでたんだけど」
「う う~ん」
あいかわらず死神の後ろに隠れながら、ネネは首をかしげるばかりでした。
ルーナはオレンジに、かぼちゃの精霊「ジャック・オー・ランタン」をこの場に出せと言い始めます。
「なんで?」
「いいから、すぐ出せ」
わけがわからないままオレンジは、言われたままにかぼちゃの精霊を呼び出しました。
ネネは、波打ち際に現れたかぼちゃと、半べそ状態のオレンジの顔を交互にまじまじと見始めます。
「あそこの森で派手なピエロの化粧と服を着た奴と一緒に、キノコ退治やっただろ。そのピエロが、このオレンジだ」
月のルーナは、ここぞとばかりに追加の説明を入れたのですが、これでネネが思い出せないのなら、もうお手上げです。
すると今まで疑心暗鬼な目をしていたネネでしたが、何かに気付いたようで、大きく目と口を開けて驚いた表情になりました。
実はオレンジの「化粧していた顔」と「化粧を落とした顔」は、全くの別人と言っていいぐらい差があったのです。
これが、ネネがオレンジを思い出せなかった大きな原因でした。
わざわざカボチャの精霊を出せと言ったのは、オレンジが見せた時にネネがすごく欲しがってた話を聞いていたからです。
そしてルーナの思惑通りネネが思い出せたところまではよかったのですが、その反応は予想のはるか斜め上を行くものでした。
ネネは死神の後ろから出てきて、泣きながら大声で叫びました。
「会いたかったよぉぉぉぉ」
オレンジも同じように、泣きながら大声で叫びます。
「忘れられたかと思って怖かったよぉぉぉ」
2神とも固く抱き合って、ワンワン泣き始めます。
「何でしょうか、この状況」
「わけがわからん」
「いや~ 驚きました。お友達だったんですね、ネネさんとオレンジさん」
「しかしホント手間かかるな、こいつら」
彼女らは一向に泣きやまず、仕方が無いのでしばらく放置します。
ただ待ってるだけでは暇なので、ルーナと死神は立ち話を始めたのですが、面白い話が聞けました。
それは、サンタ・ネネに関する話でした。
「ネネちゃんには、相棒に喋る赤いバイクがいるって聞いてたんだけど」
「よくご存じで。亡国アトランテック製の軍用バイクらしいのですが、そう言えばサンダー・ボルトさんの姿が見えませんね」
「へぇ、そんな名前なのか」
「ボルトさんは特別製らしくて、彼は自我と心を持っていますよ」
「心を持ってるバイクなんて、すごい相棒なんだな」
「う~ん、相棒と言うより、私にはネネさんの兄のように見えますね」
「兄がバイクで、妹が女神って、そんな兄妹ありえるの?」
「ふむ、これはネネさんが、言ってたことの受け売りなのですが」
「何て言ってたんだ?」
「家族って、何だと思ってる?血のつながり?半分だけ正解。それだけじゃないよ。心の繋がりがあるだけでも、それはもう家族なんだよ師匠・・・と言われました」
「深いな」
このセリフですが、幼少の頃にネネが言ってたというのですから驚きです。
きっと噓偽りのない本心から出た言葉なんでしょう。
「大人になった彼女はこれから多くの出会いを通じて、きっと心の家族が増えていくんでしょうね」
「いや、でも、何かまだ子供みたいに見えるけどな」
「あっはっは しかし、その子供っぽさが彼女の魅力ではないでしょうか」
「あ~、なるほど、同感するかも」
月のルーナは、ぼんやりとネネとオレンジを見ていましたが、まだ抱き合って泣いていました。
特に面白いのは、妹のオレンジでした。
今までこんなに感情をむき出しにすることなんて、なかったのです。
思い起こせば兄の奈落も、今までは無感情で無口だったのですが、いきなり感情を見せ始めていたような。
これはサンタ・ネネの影響なのでしょうか?
ルーナは妹オレンジが言っていた「ネネは闇を切り裂く明けの明星」であり「その輝きに導かれて星々が集まって来る」という話は、あながち間違いでは無いような気がしてきました。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタ・ネネは絶対的な経験不足から、彼女が持っている能力の大半をまだ使えていません
正確に言えば「使えない」のではなく、自分自身にどんな能力があるかが「わかっていない」のです
その能力に目覚めるためには、色々な経験を積むしかありません
ネネの場合は姿は大人に見えますが、まだ心は幼い頃のイタズラっ子のままでした
それは心の成長が追い付いていないからだと結論付けてしまうのは、いささか早計です
なぜならネネの本質は、そもそも「イタズラの女神」だからです
彼女からイタズラを取ったら、ネネはネネでなくなってしまいます
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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