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第41話 終末戦争 200年前の記憶 1

ここで、この物語「赤と黒のサンタ」が始まるきっかけになった終末戦争ラグナロクについて語っておきます。

それは今から約200年前に起こったまわしき記憶です。

この戦争によって人間界では無差別に都市や建造物が破壊され、人類の約8割が死亡することになります。

主犯はサンタ・クネヒトで、10月31日の夜に突然豹変ひょうへんしました。
瞳の色が真っ赤に染まり、苦しみから逃れようとしているのか、周辺の建築物を破壊し始めます。

大叔父 サンタ・ブラック(クネヒト)

彼はサンタ・クロースの弟で、ネネにとっては大叔父おおおじにあたります。
優しい心を持っていたサンタ・クネヒトのことをネネは大変したっていたので、暴れまわる姿を見てしまい大きなショックを受けることになります。

すでにこの時、アトランテックの軍用バイク「サンダー・ボルト」は、ネネ達のそばにいました。
ネネの母サンタ・ルチアは、まだ幼かったネネとナナの姉妹をサンダー・ボルトに乗せて、人間界のサンタ・ツリーのある場所まで緊急避難します。

人間界のサンタ・ツリー

そこは小高い丘のようになっていて、周辺の状況が良く見えました。
遠くにある街や村から次々と炎と煙が上がっていく光景は、まさに地獄絵図じごくえずだったそうです。

すでに全てのサンタには緊急招集エマージェンシーコールがかけられていて、全世界から集まりつつあります。

気が付くとネネの隣に、祖父サンタ・クロース、祖母サンタ・マリア、父サンタ・クリスが立っていました。

   祖母サンタ・マリア           祖父サンタ・クロース

空を見上げると9頭のサンタのトナカイ達が、こちらに向かって飛んできているところです。

そんな時・・・それはまさに不意打ふいうちでした。
いきなり目の前にサンタ・クネヒトが現れたのです。

サンタ・ツリーによって聖域化せいいきかされ、結界が張られているにも関わらず、やすやすと突破したようでした。
彼はあきらかに錯乱さくらんしているようで、わけのわからないことを叫びながら襲い掛かってきます。

サンタ・クロースはクネヒトの両手をつかみ、力比べが始まりました。

ネネの妹であるサンタ・ナナは、まだ赤ちゃんです。
大声で、ギャン泣きし始めます。

その様子を見た父サンタ・クリスは覚悟を決めた表情に変わり、母ルチアとネネとナナの姉妹をサンダー・ボルトのシートに乗せました。
目の前に、天上界てんじょうかいへ続く異世界の扉が開きます。

「お前たち、後で必ずむかえに行く。今だけは、天上界てんじょうかいに逃げてくれ」

それがネネが見た父サンタ・クリスの最後の笑顔でした。

ネネの父 サンタ・クリス

サンダー・ボルトが天上界てんじょうかいへ通じている扉の中に突入した時、その衝撃でネネは気絶してしまいます。

そして、2年が経過しました。
まだサンタ・クネヒトとサンタたちの攻防戦こうぼうせんは、続けられています。

最近では、サンタ・クネヒトは自らを「サンタ・ブラック」と名乗り始めています。

サンタ・クロースとクネヒトは、2神1組にしんひとくみの兄弟で活動していました。
もともと人間達からは、サンタ・クロースは「赤のサンタ」、クネヒトは「黒のサンタ」という通り名が付けられていたのです。
赤のサンタの役割は、良い子には、ご褒美ほうびとしてプレゼントを贈ること。
黒のサンタの役割は、悪い子には、お仕置きとして石炭を贈ることでした。

これは決して意地悪いじわるでやっていることではありません。
サンタによる子供達への情操教育じょうそうきょういく一環いっかんです。
自分で考える力や他者を思いやる心などが育つように願いを込めて、わざと行っていました。
よい子になろうと思う気持ちが芽生めばえれば、悪い大人にはなりません。

もちろん黒いサンタは、子供達から恐れられます。
しかしクネヒトは、あえて汚名おめいを受けることを自ら買って出ていたのです。
それはサンタが持つ「慈愛じあいの心」がゆえでした。

そんな優しさを持ったサンタ・クネヒトが、なぜこうなってしまったのか?

何がどうなっているのかは不明ですが、サンタ・ブラック(クネヒト)は驚異的な力を得ていました。
身体からは黒い瘴気しょうきがたちのぼっていて、サンタ達のあらゆる攻撃を受け流してしまいます。
全国各地で繰り広げられる戦いの影響で街は破壊され、巻き添えになった人間達が次々に死んでいきます。

破壊の限りを尽くすサンタ・ブラック

ネネの父サンタ・クリスは、最後のけに出ました。
このままでは、世界は滅びてしまいます。

クリスは人間界のサンタ・ツリーの次元転移の力を借りて、サンタ・ブラックを異次元の狭間はざまに閉じ込めてしまおうと考えたのです。

彼は人間界では、超科学文明をほこっていたアトランテック国の軍事技術研究所の主任をつとめていました。
そのテーマのひとつに「異次元転移装置の開発」が含まれていたのですが、そちらはまだ未完成で使い物にはなりません。

サンタ・ツリーを使うという思惑おもわくは成功し、サンタ・ブラックの上空に次元の穴が開いたのですが、ここで思わぬ事態が発生します。
サンタ・ブラックが、8本あるサンタ・ツリーのうちの1本を、その腕力で根ごと引き抜いてしまったのです。

次元の穴を維持していたエネルギーが暴走状態におちいり、地上の建築物を次々に穴の中にみ込んで行きます。

大暴走する次元の穴



つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

ネネの相棒バディー「サンダー・ボルト」の開発者は、父サンタ・クリスです
ボルトは、もともとアトランテック軍で使用されている自立思考型の軍用バイクをベースにしているものの、後に特別仕様として改造された機体です
彼の人工知能は経験を通じて学習を積み重ねていくことで、独自の個性を獲得できるようになっています

ただし主だった学習サンプルが「天上界てんじょうかいのヘンテコな神々」と「おかしな行動ばかりしまくるサンタ・ネネ」だったため、想定外の進化を遂げるようになっていきます
でもそれは、また別のお話で

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます

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